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第十二話 十三綴

「これまで何体、殺されましたか?」


 着物の女は依然笑みを浮かべながら言う。


「……」

「言葉を失ってしまったのですね、お気の毒に」

 

 会話の間も、森との切れ目からは数多の白い大口の化物が雪崩れ込む。

 着物女に警戒しつつ、グンカは白の異形を次々に斬り捨てた。


「なんて、残酷な」


 血雨を浴びつつ、その言葉とは裏腹に着物女は笑い続ける。


「────ひと、殺し」

 

 その言葉は、グンカにとって逆鱗だった。


「────!」


 草原を疾風と駆け、瞬く間に着物女の眼前に達し、その刃を振り下ろす。


「あ」


 いともたやすく、着物女は頭から真っ二つになった。

 血や諸々を噴出し、縦に割れる女はそして、瞬時に腐れ落ちた。着物女の周囲に浮かんでいた呪符もまた、ぽとりと地に落ちた。その死を確認すると、グンカは再度、白い異形達を斬り始めた。なんの感慨も湧かなかった。

 

 ちりぃん……と。

 阿鼻叫喚の最中、恐ろしいほどその鈴の音は明瞭に聞こえた。


「どうして、そのように怒るのですか?」


 声。背後より。


「私はただ、事実を述べただけなのに」


 振り返りもせず、グンカは刃を薙いだ。

 なにかを斬る感触。そうして噴き出る、血液の雨。


「おぉぁああん」


 四方より大口の化け物が突撃してくる。

 刃を構えて、一回転を行うと、化物たちは他愛なく分断された。


「もう、何体目でしょう。殺したのは」


 目の前に、また、着物女。

 すかさず駆け寄り、斬って捨てた。

 幻影を斬る感触ではない。確かに肉を斬っている。

 この女は確かに斬られ、そのたびに息絶えている。

 そうして、そのたびに蘇っている。化物が、化物らしく復活の所業を行っている。

 この着物女は、再起の化け物────古くは十三綴と数えられた原初の異形。


「斬られて死んで、お可哀そうに……」


 背後で言うと、


「奮起くださいませ。戦闘向きでは決してない、私の為に」


 ちりぃん。

 また、鈴の音が。

 瞬時に、女を中点として不可視の波が広がり、草原を埋め尽くすほどの白の異形が現出していた。月光の下、草原は真白で覆われた。


「生ある限り、目的は達せます。再起する限り、コトは果たせます」


 否、


「私がここに在る限り、死は無力となりまして……さあ、徒労の殺戮を続けてくださいませ。ひと殺しの、コシュ様」


 蘇ったのだ。

 蘇らせたのだ。

 この着物女が、その異能により。

 百を超える白の化け物は皆、草原の真ん中に建つ小屋を目指している。

 そこにいるイラを喰い散らかすために──させない、させるものか。開かれたシャッターの奥にはなにがあった? 思い出せ、思い出せ、思い出せ、そこで俺はなにを見た──赤黒い、黄色い、白い、肉、脂肪、骨の見える腕、齧られた頭部、恐怖に歪む貌、悲鳴、断末魔、咀嚼音、嗤う女、涙を涸らし空虚に陥った少女、白の異形、大口、蠢く肉塊、鎧、羽根、天使、天使、天使、天使、天使、天使ガ人ヲ喰ッテいた────!

 目を見開き、グンカは殺す為に地を蹴った。

 蹴って、蹴って、瞬く間に白の群れの最中に跳び込み、殺す為に刃を振るった。殺す為に大太刀を閃かせた────「ふふふふふふ」哄笑。轟音。圧。寸毫の刻に、総ての白が一斉に弾けた。

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