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序 終止符の後
世に現われた魔王が、人間に終止符を打った。
その圧倒的な力の前に、誰も太刀打ちできず、人間が呆気にとられるうちに、あっという間に世界は覆されようとしていた。天が人間に齎したとされる劫の栄光など、そんなものは存在せずと魔王はなにもかもを灰燼へ帰す。零すら満たない虚へと。その暴虐は、誰も防げず、誰も敵わなかった。
魔王を打ち倒すはずの勇者は、未だ、その現われの兆しすら見せない。
「主よ。見給え、その慈母のごとき瞳で見ていたまえ。終わりはついぞやってきた。件の彼が、伽藍の傀儡が、終焉をその背中に乗せて、我らの前にやってきたのだ」
来るべくして訪れた終焉に歓ぶ至神は、諸手を挙げて狂喜した。
魔王は暴れ、狂うた瞳で衝動のままに暴れつづけ、やがて世界は静寂に包まれた。まるで風に見放され、寂寞と凪いだ海のように。
そうして。
人間がその数を文明すら保てぬほどに減らすことを驕慢にも世界が滅んだと表現するのならば────確かにこのとき、世界は滅んだのである。




