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スライマー、殲滅できて、うれしいな×7

 依頼人の畑に着いた。

 スライマー達はへなへなになった作物をまだ恨みがあるかの如く踏みまくっていた。

 言っちゃ悪いが、中年太りしたおっさんたちが飛び跳ねしている光景程、滑稽で醜いものはない。

 そんな殺伐とした光景とは裏腹に空には夕日がさしていた。

「もうそろそろで夜か」

 綺麗な夕日にレオンは情緒を感じながら、昔のことを思い出した。

 思えばスライムには洗濯のりが使われていて、そののり、沸点が低いんだ。

 小学校のお楽しみ会で作ったのを忘れていた。

 まあスライマーもスライムみたいなもんだし、大丈夫だろう。

「おい、スライマー!」

 十体のスライマーが一斉にレオン目がけてガンを飛ばし、

 

 ふよんふよん


 ぺちゃぺちゃ


 だるんだるん


 一斉に襲い掛かってきた。

(来た!)

 レオンはあらかじめ撒いていた工業用アルコールへ向かって、擦ったマッチを投げ入れた!

 スライムとレオンの距離、七メートル。

 マッチが着地するまで、あと1秒


 ボゥワ!


 マッチの火がレオンの三メートル先にある工業用アルコールをまき散らした所に引火し、あっと言う間に十メートルの火柱が立った。


 だるるるるるるるるるるるるるるるるるん!!


 ぼよよよよよよよよよよよよよよよよーん!!


 ふにににににににににににににににににー!!


 やった……やった……やった!!

「はあっはははははははは!!」

 勝てないと思っていたスライマーに勝った!!

 周りを見たら作物にも被害が及んでいるが、そんなことはどうでもいい!! 自分のの命とプライドの方が大事である。

 スライマーはドロドロになりながら燃え上がり、断末魔は可愛く、それでいて狂ったような声を上げていたから少し怖い。

 だが、俺はやって見せた!! どんな攻撃も無に帰すスライマー相手に最弱であるこの俺が倒して見せた!!

(この炎を俺の聖戦への系譜としよう! この調子で教団も潰すぞ!)

 レオンは炎に向かって叫び、これからの戦いへの決起を高めていた。


 そんなくだらないことをやっていると、自分の足元まで炎が迫ってきた。

 あ、これヤバイんじゃね。

 レオンは逃げた。

 しかし、またあの持病が襲ってきた。

(こんな時に下痢!!)

 それでも必死に逃げようとしたが、時すでに遅し。

 レオンのズボンに引火した。

「あ、あ、ああああああああああああああああああ!!」

 炎の熱で足がいうことを聞かなくなり、そのまま地にひれ伏してしまった。

 畑もスライムもレオンも全て燃えてしまった。




 午後7時頃。

「母ちゃんもハルも元気にしてるかな~」

 一人のいかにも野蛮そうな蛮族が帰ってきた。

「え、えええええええええええええええええええええええええええええ!! 何で母ちゃんの畑が!!」

 消し炭になっていた。

 その畑の真ん中でうつ伏せに倒れている影を見つけた。

「え、あれは何だ?」

 モンスターかもしれないので蛮族は恐る恐る近づく。しかしよく見ると人だ!

「お兄ちゃん! これはどういうこと!」

 蛮族は自分をお兄ちゃんと言った背後にいる娘の方にビクつかせながら振り向く。

「俺にもわからない!! とにかくこいつを何とかしないと!!」

 蛮族と娘は倒れている人物に向かって走った。

「あ、この人私が依頼したクエストを受けに来た人だ!」

「なんだと! おいあんた何があったんだ! おい!」

 う~ん、何だ? 誰だ俺の眠りを邪魔する奴は。

 レオンは渋々瞼を開けた。

 目に映ったのは不細工な顔に不細工な斧を持った不細工な男と、依頼人の娘さんだった。

(あ、豚に真珠)

 そのあとレオンは立ち上がり、服についている炭をパンパンと掃った。

「あ、あんた大丈夫か?」

 不思議とどこも無傷だった。

「ま、まあ」

 レオンはたどたどしい態度で返事をした。

「一体ここで何があった?」

 答えに困るような質問をされ、レオンはうなだれてしまった。

 正直に話したら風貌からして殴られ(死)、かといって事が事だから下手なウソを吐いたら怪しまれて真実を吐かせるまで殴られそう(死)だしどうしよう。

「スライマーを倒すために燃やした」

 レオンは開き直って正直に答えた。

 人間、正直に生きて損をすることはない。俺の生前の記憶がそう言っている。

「燃やした? 最弱モンスターをこんな被害が及ぶほどの魔法で?」

 俺にとっては最強モンスターだった。あと、魔法じゃなくて化学の力だ。

「ふざけんなよ。お前母ちゃんがどんな思いでこの畑を耕してきたか分かるか?」

 人の心、この世界にはそんなものがあるのか。

 蛮族はレオンの胸倉を思いっきり掴み、六十キロあるレオンの体を片手で簡単に浮かせた。

「お兄ちゃん止めなよ! 私たちがこんなところで畑を耕しているのも、お兄ちゃんが酒場でよって大暴れしたからなんだよ!」

 だからこんな辺鄙な場所で農業やってるのか。

 そんな妹の忠告に兄の蛮族は全く聞く耳を持たない。

 この世界には話を聞かない奴が多すぎやしないか?

「母ちゃんはなあ、バカやった俺のためにこんなところで畑を耕して、時々モンスターが現れるから『うざいから減滅しに行ってくる』と言って帰ってきたら腰痛もちになって寝込んでしまったんだぞ!」

 なら母ちゃん元気になるまで待ってろよ。だからあんなにスライマー恨みを持って踏みつぶしていたのか。

「一言言わしてもらうと、依頼書には『畑が荒らされていうのでスライマーを倒してほしい』と書いてあった。しかし畑を守ってほしいとはどこにも書いていなかった」

 レオンは淡々と弁論を述べた。

「荒されているからスライマーを倒してほしいということは、スライマーを畑から守ってほしいという意味なんじゃないのか!?」

 簡単に論破された。激情しているこいつに何言っても火に油、もとい火に工場用アルコールだ。

 レオンはまた胸倉を掴まれたままうなだれてしまった。

「母ちゃんの畑をこんなにして、ゆるせんぞおおおお!!!」


 ボカッ!!


『you are dead』


 最近死ぬの多いな。

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