レオンさん、仲間に出会い、うれしいな×5
一体どうやったらスライマーを倒すことが出来るのだろう。
レオンは荒されている畑を尻目に少し考え事をするためにその辺を散歩した。
その間畑は荒され放題だが、まあ、あそこまで荒されているなら今更どれだけ荒されようが五十歩百歩である。
(第一、何でこんな町外れなところで畑を耕してるんだ?)
そんな事を考えているうちに、ずいぶん遠くまで来てしまったようだ。
辺りは草原で殆ど木も生えていない、いわゆるフィールドの真ん中に来てしまったようだ。
(あ、どうしよう)
まだこのあたりの地理に詳しくないレオンは遅かれ早かれぶち当たる壁にぶつかっていた。
(まあ、この場合もと来た道を戻ればいいだけの話なんだが)
生前から道に迷いやすいレオンは、この時の対処法をすでに知っていた。
レオンは早速後ろを振り向き、元来た道を戻ろうとした。
「あ」
後ろにいたのはキングスライマー。この近辺の主だった。
速さ、力、レベル、それは畑近くにいたスライマーをはるかに凌駕していた。
(よし逃げよう)
雑魚と言われるスライマーでさえ倒せなかったのだから、その親玉のキングスライマーなど勝てるはずもなかった。
レオンは最初から全速力で足を動かし、この場を全力で去ろうとした。
しかし、十歩ほど走っただけで腹が痛くなってしまった。
(何だ、この痛みは)
別にわき腹が痛くなったわけではない。例えるなら、寝る時に腹を出しっぱなしにして朝腸の調子が悪くなったような、
(あ、くそ! あの女神!)
下痢である。
走らなけれがいけないのに、走れが走るほど腸が揺れ、更に鈍痛のような痛みが倍増した。
次第に歩くことさえままらなくなった。
あ、ここで死ぬのか。今度はあの女神になんて言ってやろう。
ボヨヨヨヨヨ~ん
かわいいからムカつくキングスライマーのジャンプ音が聞こえた。
この音が俺の鎮魂歌か。なけるぜ。
そんな時だった。
レオンの目線から通り過ぎるように颯爽と助太刀。
純白のスーツに純白のマントを羽織り、キングスライマーの体当たり攻撃を蹴りで跳ね返した。
そしてそのまま肩に背負っている両手剣を抜刀し、一閃。
あっという間に倒してしまった。
「大丈夫かい、セニョール」
助けてくれたことはうれしいのだが、そのしゃべり方なんかムカつく。
とにかく俺は感謝の意を表するために立ち上がろうとした。
しかし腹痛で腹を抑えながら何とか立ち上がった。
「もしかしておなかが痛いのかい、セニョール」
キングスライマーから助けてくれた人は、腰についているポーチから金色の液体が入った小瓶を取り出してくれた。
「はい、どうぞ」
俺はありがたく受け取り、がっつく様に飲み干した。
するとたちまち腹の痛みが消えた。
「あ、ありがとうございます」
腹の痛みを抑えてくれた一体この薬は何だろう。
「それは、万能薬だよ」
レオンが心の中で思っていた疑問に質問する前から答えてくれた。
「自己紹介がまだだったね。僕はイスル。イスル・ロナワードだ」
イスルは手を差し伸べ握手を求めてきた。
「俺はレオン。田中レオンだ。さっきはどうもありがとう」
イスルに習って俺も自己紹介をして、差し出された手に身体で応えた。
「早速だけど君はまだ駆け出しみたいだね。ちょっとステータスを見せてくれない?」
無粋な質問だったが答えてあげることにした。
「残念ながら無い」
「無い? きみそんな革ジャンで修羅場潜り抜けてますよ風な格好をしているのに無いの?」
「無い」
本当に無いのだから仕方ない。
するとイスルはおもむろにポーチから何やらメモ帳のようなものを開いた。
すると中から光が飛び出し、空中に文字が浮かび上がった。
『名前イスル・ロナワード 職種剣士 レベル27 体力256 筋力31 魔力23 素早さ54 耐久力20 魔法耐久力21 精神力43 特性メロメロ』
メモ帳の内容を見せた後、イスルはポーチにしまった。
いいな~、俺もああいうの欲しい。
「一応仲間の信頼を示すためにステータスを見せ合うことになってるのさ。戦略を立てる上でも重要だからね。だから君のステータスも見せてくれよ」
ごめんイスル君。ほんとに持ってないんだ。
あと、人の話はちゃんと聞こう。
俺は包み隠さず今まで起こった出来事を伝えた。
「なるほど、ということは君は今どんな攻撃を食らっても一発で死んでしまうわけか」
レオンはうなずいた。
するとイスルが手をレオンのおでこ目がけて、
パチン!
デコピン。
「あふぅ~ん」
『You are dead』
死んだ。