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わたし プロローグ



 わたしが屍体に興味を抱いたのは震災後、放置された家畜と呼ばれる生き物達の成れの果てを見た時だった。


 当初は殺害というのはあくまでも過程に過ぎず、それ自体には興味が持てなかった。

 罪を犯してまで自分の欲求を満たす事が好きではなかったから。

 あの女と同じ事をするのは気が引けるしね。


 わたしが心惹かれた最初の屍体は、震災後の牧場を訪れた人のブログに載せられていた。

 ほんとに安い好奇心だった。

 それまではまともな死体を見たことがなかったわたし。

 隣のクラスに転校してきた男子を品定めするくらいの安っぽい好奇心。


 ブログの閲覧注意という好意をあっさり流し読みし、友達からのメッセージを開く様にクリックしていた。


 ダウンロード時間は1秒にも満たなかったが、わたしの眼が画像の全てを処理するのに何分かかったのか。

 多分、いまだに全ては処理できていない。


 豚の頭蓋骨の眼球が納まっていた所からは蛆が溢れかえり、血に汚れた皮と腐った肉と白く穢れのない骨とのコントラスト。

 役目を終えた肉体を余すことのないように群がる無数の蠅。

 我先にと身体を伸ばす蛆達。


 いままでのわたしの生活では観られない光景がそこにあった。


 ブログの文章を読み進めていけば、まだ息のある家畜は近くの遺体から流れる血を湧き水を浴びるかのように飲んでいたとか。

 火葬の日本では到底真似できない生の連鎖が確かに行われていた。


 そのブログを母親に「ご飯よ」と呼ばれるまでずっと読み漁っていた。

 奇しくもその日の夕飯は豚カツ。

 生肉と揚げ物という違いはあるものの、蠅達との親近感を感じいつもより美味しく食べれた。


 しかし、周りの友人達に同意を求める事は最初から諦めていた。

 屍体の写真に惹かれる異常性は認識できていたし、安易に拡めるのは画像の屍体達に申し訳なかった気がしたしね。


 ネットで似たような意見の持ち主を探したが、短絡的な意見ばかりが目立ち原発の影響もあるのか例のブログ自体も閉鎖されたあたりに日本の闇を感じる。


 日本人が拉致され惨殺された動画や、外国の津波での溺死体も見てみたがあの動物達の神秘性にはほど遠いものだった。


 やはり、自分で屍体を産み出すしかないのか。

 そんな結論に達した中学2年の春だった。






挿絵(By みてみん)

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