もびりえ ふゅねれーる その64 ―説教ξ昔話、再び―
□ □ □
むかしむかし、ある処にライトノベルがありました。
当時、大人気でした。
長い赤髪の少女魔導師と、長い金髪の騎士が冒険する話でした。
"それ" を分類すると、いま、
<なろう学派>
のジャーゴン(専門用語)で云う
<オレTueee>系作品でした。
["e" が三回か四回かを指示する厳密なルールは無いのでしょう…]
即ち、主人公の少女は、最強の魔法を以って、怪物を
「ばった」
「ばった」
と倒していたのです。
"それ" は
――作品分析して内容を簡単にまとめると、
シリアスなメインのライン(主人公がラスボスを倒す)を、コメディ・テイストで味付けた作品
と云えました。
[そして
――しばしば、
<簡単にまとめたモノは、内容を何も表していないモノ>
なのですよね……]
そんなある日、
処に、
ヒトがいました。
"あるヒト" にとって、その大人気ライトノベルは、
<大した作品>
ではありませんでした。
"そのヒト" が教育機関の中、生きる上で、
――今でいう<ライトノベル>というものは、
知り合いと話を合わせる上で必要な
<教養>
だったのです。
だからこそ、単に、知っていたのです。
しかし、"そのヒト" が大人になるにつれて
――小説の技法などを知っていくにつれて、
その<大した事のない>と考えていた作品には、
<様々な技巧が使われていた>事が、わかりました。
たとえば、主人公の少女が使う魔法からそれを見る事が出来ます。
昨今はライトノベルも何か、
魔法を唱える時、前置きの魔法 [術式というのでしょう………] を省略するほど科学的に進んでいる様ですが、
当時は、ひとつの魔法を唱えるのでも、
魔法の名前を言う前に
<長い文句>が必要だった様子です。
そして、その<長い文句>に、作者の技術が隠されていたのです。
その大人気ライトノベルで、少女が最強魔法を唱えるときの術式は、ニッポンの古来からの詩的韻律
#七五調#
が使用されていました
――つまり、七文字、五文字、というリズムで術式を作っていたのです。
[「何故、#七五調# だったの?」という野暮は勘弁してください……]
「竜の山にて (七文字)
生える草 (五文字)
笑う様にて (七文字)
燃え盛る (五文字)
他へ派生す (七文字)
その熱気 (五文字)
天高く行け (七文字)
その煙 (五文字)
ファイアービーム!!!」
[※これは、思いついて作ったモノで、その大人気ライトノベルの術式<そのもの>ではありません。
その大人気作品に登場する魔法の術式は、上のモノよりもっと
<魔法らしいモノ>です
―― #完成度# が全然違うのです。
こうやって作家の
<実力>
は、バレるのですよね…]
その大人気作品では
――七五調だけでなく、
魔法の術式に
「我」(わたし)
や
「汝」(あなた)
を混ぜる事で、
普段、多くのヒトが使っている言葉(日常言語)から離れた響きの語を使って
<魔法らしく聞こえる>様に、工夫が施されていました。
[どうも、「あたし」より「我」、「お前」より「汝」を選ぶと、#高等魔法# らしく聞こえる様です
――知りませんけど。
例①:「ボクはキミを呼んじゃうもんね。ヒューバートドラゴン!!!」
例②:「我は汝を召喚す――ヒューバートドラゴン!!!」]
ところで、
世の中には、不思議な事があるものです。
"ライトノベル好き" は、「我」や「汝」という言葉が使用された
複雑な比喩を交えた
#高等魔法# を余裕で<暗唱>してみせるのですよね……
――「シェイクスピアは難しい!!!」
――等と主張する癖に。
実際、「"我" や "汝" という言葉が難しい!!!」「比喩とか象徴とか、わかんない」と言うヒトがいるからこそ、
シェイクスピアを
「わかりやすく」して
金を稼ぐヒトが現れるのです。
「難しい!!!」
から、わかりやすく直して、
<みんなに共感されて>
――そして、
<尊敬される>
のです。
以前も書きましたが、不思議でたまらないのです
――同じ様な事をしながら、ライトノベルは楽勝で、シェイクスピアは難しいと云うヒトがいる事が。
閑話休題。
まとめると、
魔法を唱える時、
普通のヒトが普通に、日常で使う言葉ではなく
魔法に相応しい、
①何か #重い# 印象を与える
②何か #偉そうな# 響きがする
言葉を選ぶ、
即ち、
<難しい言葉を使う>
――それだけでなく、
<七五調のリズムを使う>
事で、
<大したことの無い>作品
では、
魔法というモノが組み立てられていた
という事がわかったわけです
――単に「陳腐な話」では無かったのです………。
そこには、作者の実力があったのです。
■ ■ ■
。
"オプス238" のコルス部分では、#アスクレピアデス格# が使用されていました。
キャラクターが話す言葉を #ヘクサメーター(六歩格)# で書いて
それと対比させる形で
#アスクレピアデス格# を使っていたのです。
[――これは、前に書いた事の繰り返しです]
それは
――いまとなっては名前さえわからない
"作者"
そのヒトの
<工夫>
であり、
<意志のあらわれ>
でした
――"それ" を "蜘蛛宇宙人" は
――翻訳でも
――<尊重>しようとしていたのです。
"蜘蛛宇宙人" が、#アスクレピアデス格# で翻訳した部分を抜粋してみます。
「じーごー くーのはてー まで
おーいー つーめらるー ると
ごーくー にーとらわー れし
きょーうー あーくなるー いぬ
くーびー きーのねを― たつ」※注
こうやって、"蜘蛛宇宙人" 訳の "オプス238" が完成するのです。
それは、回覧されます
――同級生に
――"アミクス" に
――"ヒポディダスカルス" に。
そして、ある構想が生まれ、実行へと着手されるのです
――続く。
※注
「地獄の果てまで
追いつめらるると
獄に囚われし
凶悪なる犬
頸木の根を断つ」




