黄昏と暗号 その2
別のある日のこと、また"ベラ"は友人と共に、"Z"から送られてきたメールに対する駄目だしをしていました。
「またあいつ("Z"のこと)、 文の最後に小さい『よ』を使ってるよ――ウザい。ウザすぎる」
友人は、同意して、笑います。
授業の区切りを示すチャイムの木霊する部屋には、"摂"氏と"ベラ"と、その友人しかいませんでした。
少しして――くだらない何かの話が続いて――メールの着信音がします。
寡黙な"摂"氏は、その時、読書に集中していませんでした。
「ほら、また来た」
――携帯操作。
「なんて言ってんの?――あいつ」
「『いいよ』――だってぇ。また最後の『よ』が小文字になってる――それに『い』も、カタカナで小文字――めっちゃウザいわ。なんなん、あいつぅ?」
その時、ふ、と思いついたのか、
とつぜん"摂"氏は立ち上がりました。
教室に配備された椅子が、床とすれて、大きな音を立てます。
"ベラ"と友人も、会話を止めました。
「ちょっと"ベラ"さん」
正面を向いている"摂"氏が、顔の向きを変えます。
そして、目で"ベラ"をとらえました。
――無機質で、ヒトを恐れさせる目。
「ちょっと "ベラ"さん」
"ベラ"は竦みあがっている――のでしょう。
「すみませんが、そのメール、見せていただけますか?」と"摂"氏。
"ベラ"は硬直していた――のでしょう。
無言でした。
すると、"摂"氏は教室を素早く横切り、まっすぐ"ベラ"と友人が向かい合っている席まで、近づきました。
「すみませんが、いま話していたそのメール、見せていただけますか? 必要なのです」




