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ゾーンの向こう側  作者: ライターXT
集合編
4/207

第3話   サプライズはプライスレス

GKの坂井裕也は、「ウド」というあだ名を影で付けられている。

容姿までではないが、某芸人に体型や雰囲気が似ているからだ。反射神経の鈍さもそれに拍車をかけている。

他にいないから正ゴールキーパーというのも自覚していた。

それでも、コンプレックスが脳裏を渦巻くことは無く、試合でベストを尽くせればという「たられば」のイメージが授業そっちのけで廻っていた。


「なにニヤニヤしてんだ?お前。」

同じクラスの松田に声をかけられ、我に返る。

「精々、足引っ張んなよ!」

彼からの嫌味は、今に始まったことではない。



放課後、女子マネージャーとなった若宮志保の紹介を受けて、彼も他のメンバー同様にニヤケが止まらない。

隣のクラスで可愛いと評判だった若宮が、急に近い存在になったのだから無理も無い。

彼ら2年生は、そこまでテンションの上がっていない3年生たちが不思議でならなかったが、彼らがその真相を知るのはまだまだ後の話であった。



さらに、美津田が「1年生の紹介するぞ」

と聞いて、2年生たちは沸いた。キャプテン(3年生)たちも、新入部員の話は先ほど聞いたばかりであった。



「鈴木泰河といいます!ポジションはCBです!大野中からきました!よろしくお願いします!!」


170センチ中盤くらいか、その体格は悪くはないが、大野中のサッカー部は弱小で有名なので学校名を聞いてメンバー達は期待外れの顔を隠せなかった。


「あと一人いるから。」

無機質なトーンで美津田がそういうと、160センチ無い小柄な少年が話し出した。


「高井俊一って言います!ポジションは右サイド全般です!市井第二中から来ました!よろしくお願いします!」


メンバーが騒然とした。市井第二中といえば、県内有数のサッカー強豪校である。


先輩達のリアクションをみて、高井は申し訳なさそうに言葉を足した。


「あの・・・、3年間補欠だったので、そんな立派なモンじゃないんで・・・、期待させたらすいません。」



「確かに、市井第二で高橋って名前は良く聞くけど、高井って名前は聞いたこと無かったな。」嫌味っ気無く放った久保の言葉は、ストレートに高井の心に突き刺さった。


「ですよね~。俺、トラップ下手なんすよね。何とかしたいんすけど・・・。足引っ張らないように頑張るんで、よろしくお願いします!」



「お前らは足引っ張らんぞ。」



「え?」


美津田の言葉に高井を含めて全員が食いついた。


「鈴木、ボールできるだけ遠くに蹴ってみろ。」



「・・・!? はい!!」


鈴木が助走を長めにして勢い良くボールを蹴り出す。


「おぉ!」

左足で放たれたロングボールは、スピードも飛距離も先輩達の予想より高いクオリティだった。数名から声が漏れたのも納得出来る。



「次、高井。」


「はい!」


「その場所から、あのボールのとこまで全力で走ってみろ。」


「よっしゃ!わかりました!」


高井は急な要望にもなんの躊躇も無く、むしろ生き生きとして軽くアキレス腱を伸ばしながら、50メートルくらい先にあるボールを見つめた。

ダッシュするために身構えた瞬間、高井の雰囲気が一変する。何故か坂井は高揚感を感じた。


「ゴォ!」


短い掛け声と同時に走り出した高井は、左右交互に素早く足を回転させ、瞬く間にボールにたどり着いた。


「・・・6秒きった!?」木村が珍しく感情を露にしてそう言った。

「かっこいい!」若宮の黄色い声に、メンバー達は少し嫉妬心すら感じている。



「さて、こいつらが足引っ張ると思う奴、手ぇあげろ。」


無表情で訊ねた美津田からの言葉に誰も挙手しなかったのは、決して急な質問だったからが理由では無い。


「高井。」


「はい!」


「二度と『足引っ張ったら』っていうなよ。誰もそう思って無ぇんだから。」


「はい!!!わかりました!!!」


「よし、練習始めるか。」


少し高井は肩を震わせていた。


「いい監督っすね!」


「どうかな?」高井の言葉にすぐ木村が食いついた。



木村の言葉に納得するまでに余り時間はかからなかった。

実際高井も鈴木も、それから数時間後のボールの無いミニゲームに面食らったからである。


「君、速いね。」ミニゲーム終了後、坂田が尊敬の念を込める勢いで高井に言った。


「いや、先輩の方が羨ましいっすよ。おれ、サッカーだと速いとか色々言われるけど、普段はただのチビだし・・・。」

その返事に「普段よりもサッカーで誉められたい!」という言葉を坂田は必死にこらえた。





「あ、1週間後に練習試合するからな。」


美津田の唐突な発言にも段々慣れてきたようで、メンバーはあまり驚かなかった。


「どこ高っすか?」


中林が聞くと、美津田はニヤケながら言った。


「高じゃねぇよ。大だよ。」


「え!?」


やっぱり慣れ切れないあまりの唐突さに、メンバー達は結局面食らうのであった。


文章グダグダ申し訳ないっす。

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