第15話 よーくかんがえよー
すんごく更新遅れましたね。
「ベスト4やベスト8のこと考えるのって大事だけど、3年生たちはゴールをまず考えたほうがいいよな。」美津田のニヤニヤしながらの発言に、選手達は困惑した。
「・・・ゴールってどういうことですか?」
「サッカーを夏で終わるか。冬で終わるか。どっちかってことよ。」
木村は半分わかってて美津田に質問した。
進路はもう決めなければいけない時期に来ていた。
国巻高校は、県内でも真ん中の偏差値であり、地元では本校以上の偏差値が一種のステータスとされている。
木村は地元の公立大学を目指しており、勉強を本格的に取り組むべき時期は迫っていた。
「オレは冬までいきますよ。」久保は顔を上げて言う。
「オレもだな。」竹下が続いた。
木村は黙り込めない雰囲気を察知し、「一応冬まで考えてます。」と口にした。
すぐに大下は「オレも冬まで。」と言う。
もちろん中林もゴールを冬とし、全員一致で冬の国立予選まで目指すということになった。
「なら、まずは夏の目標ってことね。そしたら、4と8のどっちでいくかね?」
選手達は議論の結果、ベスト8入りを目標が多数ということで、夏の大会は【ベスト8進出】となった。
「じゃあ、次は冬ね。これ、今決める?保留にする?」
「保留?」
「そ。正直夏のベスト8入り目標に決めたけど、どう転ぶかわかんないっしょ。だから今後の成績次第で決めていこうってのはどう?」
「・・・先延ばしにするって言うんなら、今の話し合いもあまり意味無いんじゃないですか?」木村が噛み付くと、美津田は
「本当に意味無かった?」とだけ木村の目を見つめて言った。
それから2日後、マネージャーの若宮は美津田を探して校内中の自販機コーナーをウロウロしていると、案の定美津田はレモリヤを飲んでいた。
「監督!探しましたよ!」
「おぉ。調査は順調か?」
「いや、順調じゃないです。」
「ん?そんな難しいことだったか。」
「いえいえ、もう終わったんですよ。生徒会とか職員室の先生達に聞いたらすぐ分かりました。」
「おぁ!意外と頑張り屋さんじゃないか。」
「・・・いがいと?」
若宮の頬が、あからさまに引き攣った。
「・・・まぁ、いいから話してみろ。」美津田は目を合わせずに言う。
「・・・はい。まず退部届けを出してなかった2年生は合計3人です。1組の東野君、続いて2組の橋君、それと・・・。」
「それと?」
「それと・・・こ・・・こ・・・コトリアソビ君?」
「は?」
「・・・ことりあそび以外にこの字って・・・どう読むんです?」
若宮のメモ帳には、確かに『小鳥遊』と記されていた。
「これな、【たかなし】って読むんだよ。」
「え!?」
「そんなに驚くこと?」
「違うんです!!私、この人に昨日話しかけた時、コトリアソビ君って言っちゃったんですよ!」
「ありゃま。まぁその話はまた今度聞くから、3年生は幽霊部員いなかった?」
「いました一人。」
「だれ?」
「えぇっと・・・望月って人です。」
「おぉ!!そうか!」
美津田にしては珍しく、わかり易い喜び方をしたので、若宮は不思議で堪らなかった。




