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ゾーンの向こう側  作者: ライターXT
集合編
1/207

第1話   始まりは最悪に・・・

初投稿です。矛盾点等はスルーでどうぞ。特にサッカー経験者の方。

雰囲気は最悪だった。無理も無い。

5年前、創部した年に大会ベスト8まで進んだ市立国巻高校サッカー部は、地元紙に『奇跡のイレブン』と言われ、県外からも評価されるほどだった。

それが昨年の大会は、全大会予選1回戦負け。

大嶺に呼ばれた時には少し予感していた。

「俺では駄目だった。お前に任せたい。」

少し困惑もしたが、胸の高鳴りはその幾倍もあった。

お互い『奇跡のイレブン』のメンバーでありながら、当時の存在感は全く違っていた。

大嶺はチームの点取り屋。いわゆる大黒柱であり、私はセンターバックの片方で、大した特徴も見せ場も無く、ただのイレブンメンバーであり続けた。

大嶺は最後にこう言った

「お前は口には出さないが、ビジョンがあった。それは感じていたよ。頼んだぞ、新監督!」

逃げ出すように監督を辞める男が、何故か自信有りげな顔でそう言ったのは、不思議な感じがしてならなかったのをよく覚えている。



狭くて汚いロッカールームがとても懐かしかった。

「今日から新しく監督になる美津田だ。よろしく。」

「よろしくおねがいします!」

返事はいいが、目に覇気が無い。

昨年秋大会の惨敗後、退部者が大勢出た。

新3年生は5名。新2年生は8名。1年生が入らなければ、たったの13名しかいない。

危機的状況を、この選手たちは肌で感じているのだ。

だから雰囲気が最悪なのは、無理も無い。


「自己紹介とかは後でいいから、この練習メニュー通りにとりあえずやろうか。」

選手の内面は、プレーである程度見える。

私個人がこの閉塞感から出たい気持ちもあったし。選手たちはいささか驚いていたが、すぐに練習を始めた。


最後のミニゲームを始める前に、私はこっそりボール全てを倉庫に隠す。


休憩で談笑している選手達に「みんな、集まれ!」といってポジションごとに配置させた。

全員が困惑している。サッカーは11人でやるスポーツだというのに、13人が配置されているからだ。

しかも、ボールが無い。


「監督?ミニゲームですよね?」

「他に表現の仕方が分からなかったからな。」


そう応えてさらに選手たちは困惑していた。


「とりあえず、キックオフしろ。」



・・・・・・・・・・・・・・・・。

全員が固まっていた。


「ボールは?」


「あると思え。」


「え?」


「いいから、あると思って始めろ。」



・・・・・・・・・・・


フォワードの久保が、キックオフの真似をした。



「さあ、正面に敵がいると思って攻めてみろ。」



困惑しながらも、トップ下の須賀が、右サイドの竹下にパスをする。


「取られたな」


・・・・・・・・・・・・・・・・。


私の言葉にまた選手たちが黙った。



「今の振り足じゃ、簡単にインターセプトされる。さぁ、どう取り返す?」


・・・・・・・・・・・・・・・・・。

もはやお馴染みの沈黙だ。



「須賀君、どう思う?」


「え?」


「君は、どうしたら取り返せると思う?」


「・・・俺が一番近いから、取りに行く?」

質問に疑問系で返された。


「では松田君、君はこの時どうしたらいいと思う?」


「・・・え?」



「よし、全員集まって座るか。」



とぼとぼと全員が集まってきた。



「いいか、俺は監督1年目だ。自慢とかじゃなく、開き直りでもなく、素直に言おう。お前たちを最強にする力は、俺には無い。」


「・・・!?」



「ただ、お前たちに与えたいものがある!それは、メンタリティとクオリティだ!メンタリティはある程度与えることが出来るが、クオリティは、自分で見つけ出すのが一番の近道だ。ソクラテスって知ってるか?」


「???」


「すんごい昔の哲学者だ。彼はあらゆる問題を討論して答えを探そうとした。問答法という。」


「・・・。」


「サッカーに正解は無い。ただ、解答例はある。大体の監督は、それを選手に植え付ける。だが、俺はそのやり方はしない。なんでかわかるか?」


「・・・いいえ。」

自然と答えが返ってくるようになった。



「楽しくなかったんだ。」


「・・・・・・・・・・!?」

と思ったらまた黙った。



「話に聞いてるやつもいるだろうが、俺は奇跡のイレブンのメンバーだった。そりゃ勝ったときは爽快だったよ!テンションも上がるさ。」

「でもな、楽しくは無かった。言われたことをやっただけだから。」

「・・・・・・・。」



「俺はお前らのサッカーを見たい。こんなの、俺のしたいサッカーじゃないって思うサッカーをさせたくない。だから、ボールを持つ以前に、お前らの考えるサッカーを俺や仲間に伝えろ。ボールはその後でいい。」


数人だが、やっと目の色が変わってきた。初日にしては、上々だ。



「さて、松田君?君はさっきの場面で、どうしたらいいと思う?」


「えぇっと、須賀のカバーに・・・」


それから15分間、問答は続いた。これも上出来だ。



「今日はこのくらいにしようか。あ、そうだ。キャプテンって、まだ決まってなかったんだって?」


「そうです!」久保と中林が声を揃えて言った。



「では、発表する。久保、大下、中林、竹下、木村。お前ら3年生5人、みんなキャプテン!」


「えぇぇ!!!!!」

全員が元気な声を聞かせてくれた。


私が独裁者になるか、名監督になるか、まだ分からない。どちらになるつもりもない。

ただ、ただただ、明日から彼らと歩む道が、楽しみでならなかった。

いかがでしょうか?初投稿具合が丸出しで申し訳ありませんが、この調子で執筆継続させてください。よろしくお願いします。

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