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里帰り

今年初めてGと遭遇しました。



ザインに帰ってきた翌日に報告のためザイン城に向かった。


「だいぶ気に入られたようだな!」


「そうですね」


ガンツにマリーの依頼に関する報告をすると、だいぶ笑われた。


「……しかし、国王排斥派がそこまで動いているとはな」


「今回の首謀者も財務大臣でしたしね」


「ふむ。しばらくしたらシルファリオに行ってみるかな」


ガンツは深刻そうな顔をして考えごとをしている。


「マリー……陛下とは仲がよろしいんですか?手紙でも連絡をとりあっているみたいですし」


「私自身、前国王とも懇意にしていてな。陛下のことは赤ん坊のころから知っている。まあ姪のようなものだな」


「なるほど」


「ゆえに今回のことは気が重いのだよ。マコト殿、今後も陛下の力になってくれるか?」


ガンツが真摯な瞳で俺を見つめる。


「当然です。俺もあまり子供が悲しむのは見たくないですからね」


「助かる」


真面目な話が終わったので、道中のマリーの様子などを交え、ガンツと談笑した。


「……っと、俺はそろそろ出ないといけないので、失礼します」


「なにか用事があるのかね?」


「ええ。アドルフさんに店に来るように呼ばれているので」


「そうか」


「それではまた今度」


「ああ、また来てくれ」


ザイン城を出て外周街のアドルフさんの店まで出向いた。


「アドルフさ~ん!来ましたよ~!!」


店に入って奥に向かって叫ぶ。


「おお、来たか」


店の奥からアドルフさんがゆっくり出てきた。


「用事ってなんですか?」


「うむ。ウィングドラゴンの素材を少し貰いたいのだが」


「ウィングドラゴンの素材、ですか?」


「この手紙を読んでくれんか」


アドルフさんから手紙を受け取る。


「……なるほど。あの人らしいですね」


読み終えて手紙をアドルフさんに返す。


「じゃろう?」


「それだったら素材は俺が直接ドレッドノートで届けますよ」


「そうか。ではギルドから素材をドレッドノートの前まで運んでおくように手配しておく」


「おねがいします。それと、ウィングドラゴンの牙でこのぐらいのナイフを作ってほしいんですが」


「ふむ、職人に頼んでおこう。そのぐらいならおそらく今日中にはできるじゃろう」


「わかりました。では出発は明日にします」


「うむ。よろしく頼む」


「じゃあ俺はミシャたちに連絡してきます」


「ミシャちゃんによろしくのう!」


「……はい」


相変わらずこの人は……いや、なにも言うまい。


若干呆れながらアドルフさんの店を出る。







「帰ったぞ」


ワノクニ亭の自室まで戻り中のミシャに声をかける。


「お帰り~。どこ行ってたの?」


「ザイン城とアドルフさんの店」


寝転がっているミシャの隣に腰を下ろす。


「そういえばおじいちゃんに呼び出されてたね。なんか依頼?」


「依頼ってほどでもないんだけど、明日届け物をしてくる」


「届け物?」


「まあちょっとした里帰りってやつかな……」


「?」


不思議そうに俺の顔を見上げるミシャの頭を撫でる。


「ミシャも一緒に行くか?」


「う~ん……特に予定もないし、一緒に行くよ」


「オッケイ。エリスは今日明日は依頼で出かけてるんだよな?」


「うん」


「じゃあ明日は2人でお出かけだな」


「うん!」


「よしよし。じゃあこれからちょっと暇だから少し買い物でも行こう」


「わかった」


ミシャと2人でマジックアイテムショップをひやかしたりしながら町をぶらついた。







ザイン城の前庭でウィングドラゴンの素材をドレッドノートに積み込み、アドルフさんから頼んでいたものを受け取る。


「ほれ。これでいいじゃろ」


「……はい。完璧です」


ウィングドラゴンの牙でできたナイフを確認して頷く。


「ではしっかり届けてくれ」


「はい」


「ミシャちゃんも気をつけるんじゃよ!」


「うん。ありがとおじいちゃん」


「うむうむ」


ニコニコしている2人はなんとなく微笑ましいが、とりあえず出発しなきゃな。


「それじゃあ行ってきますアドルフさん。ミシャ行くよ」


「うん」


「あやつによろしくの」


「はい」


アドルフさんに別れを告げてドレッドノートに乗り込む。


「進路ジーマリ。高度1000。速度500。ドレッドノート発進」


デッキでドレッドノートに発進命令を出す。


「自動操縦に切り替え」


自動操縦に切り替えて席を立つ。


「じーまりむらにいくのはひさしぶりだね、あるじさま!」


「そうだな。みんな元気にしてるかな?」


「きっとげんきだよ!」


「そうだな」


アスールと話しながらブリーフィングルームに向かう。


「あ、お茶淹れといたよマコト」


「サンキュー」


ソファに座りお茶を受け取る。


「ふぅ……和むわ……」


お茶はやっぱりいいな。


「それで、どこに向かってるの?」


「ジーマリ村だよ」


「ジーマリ村?」


「ほら、記憶のない俺を拾ってくれた人のいる村だよ。前に話したことあるだろ?」


「ああ確かに」


「今日はその村の知り合いに1人に届け物をするんだよ」


「あるじさまのまじゅつのししょーだよ!」


「へぇ~」


ミシャは関心しているようだ。


「あと1時間ぐらいで着くからそれまでのんびりしてようぜ」


「「は~い」」


ジーマリ村に着くまで、ゆるい感じですごした。







ジーマリ村に到着し、魔術の練習用の草原にドレッドノートを泊める。


泊める途中で近くの建物から人が飛び出して来たが、ドレッドノートを一目見て倒れた。


またあの人は気絶したのか。


ため息をつきながらドレッドノートを降りて倒れた人の元へ駆け寄る。


「脈は……あるな。ギジェットさん!ギジェットさ~ん!!」


ギジェットさんの肩をゆする。


「うぅ……おや?」


「気がつきましたか?」


「マコト……殿?いやお久しいですな!というかアレはなんですか!?いったいどういった原理で……」


俺を確認した瞬間、矢継ぎ早に質問を投げかける。


「落ち着いてください。あとでちゃんと案内するので、とりあえず落ち着いてください」


「はっ!申し訳ない。珍しいものを見るとついつい興味が湧いてしまうもので……そちらの子は?」


ギジェットさんはやっと俺のうしろにいるミシャに気がついたようだ。


「俺の弟子のミシャです」


「……初めまして。ミシャ=ムトウです」


「これはこれは。可愛らしいお弟子さんですな!私はこの村で魔術の研究をしております、ギジェットと申します」


ギジェットさんが差し出した手をおずおずとミシャがとり、握手をする。


「頼まれていたウィングドラゴンの素材ですが、どこに運べばいいですか?」


「おおそうでしたな。とりあえず私に家に運んでくれますか」


「はい。そういえば、グレオはどこにいるかわかりますか?」


「今の時間なら森に狩りにでているはずですぞ」


「わかりました。じゃあ運び終わったら会いに行きますよ」


「きっと喜びますぞ」


「俺も楽しみです」


会話を終えてドレッドノートに素材を取りに行く。


「……凄い人だね。マコトの師匠」


ミシャが何度はギジェットさんをチラ見しながら言う。


「だろ?俺も初めて会ったときは逃げようとした」


「確かにあたしもマコトの知り合いじゃなかったら逃げてた」


「でもいい人だぞ。いろいろ問題は多いけど」


相変わらずサルはクルミ叩きつけてるしな……


「さっき言ってたグレオって人は?」


「俺の恩人だよ。運び終わったら会いにいくぞ」


「うん」


ギジェットさんの家に運び終えて、なつかしの森に向かった。








森に入って少しのところでグレオの気配を感知した。


「この感じは……獲物をしとめる直前みたいだな」


グレオは気配消しているみたいだし、すぐ近くに鹿の気配も感じる。


「ミシャ、気配を消して俺のあとをついてこい」


「うん」


気配を消してグレオの近くに行く。


ちょうど鹿に矢を放つ場面だった。


ヒュン


風を切る音がして鹿の胸に矢が突き刺さった。


痙攣したように何度か体を震わせて倒れる。


「お見事」


獲物に近づいていくグレオに声をかけた。


「おめぇ……マコトか!?」


グレオが俺のほうを振り向いて驚く。


「久しぶりグレオ!」


笑みを浮かべながらグレオの元に駆け寄る。


「よく来たなマコト!元気そうじゃねぇか!!」


グレオは俺の肩をバンバン叩きながら満面の笑みを浮かべる。


「うわさはいろいろ聞いてるぜ竜殺し英雄様!」


「やめてくれよグレオ!そう呼ばれるのあんまり好きじゃないんだ」


「はっはっは!謙遜すんなマコト」


「ひさしぶりぐれおさん!」


「アスールも元気そうだな!」


「うん!!」


久しぶりの再会に3人で騒ぎ合う。


「おいマコト。そこの娘っ子は誰だ?」


グレオがミシャに気がついたようだ。


「ああ。俺の弟子でミシャって言うんだ」


「どうも、ミシャです」


ミシャがペコリと頭を下げる。


「おめぇ遂に弟子までとるようになったのか!」


「まあいろいろあってね」


「そうか……こんなところで立話もあれだ、俺の家に行くぞ」


「りょうかい。ミシャ行こうか」


「うん」


3人でグレオの家まで向かった。








「いやぁ~1年も離れてたわけじゃないのに、なんだか懐かしいな」


「なんも変わってないだろ?」


「うん」


以前と変わらないグレオの家の中を見渡して感慨深い気持ちになる。


「とりあえず座れや」


「わかった。あ、そうだ……はいこれ」


グレオにお土産を渡した。


「なんだこれは……ナイフか?」


「そう。ジーマリを出るときにグレオにナイフ貰ったろ?それのお返しってことで」


「へえ……なんでこのナイフは刃が黒いんだ?」


グレオはナイフを鞘から抜いて首をかしげた。


「ウィングドラゴンの牙で作ってあるからな」


「そうか。ウィングドラゴンの……ウィングドラゴンの牙!?」


グレオはもの凄い勢いで俺を見る。


「そうだよ」


「おいおめぇ!こんなもの貰えねぇよ!!」


グレオが慌ててナイフを鞘にしまう。


「いや、貰ってくれよ」


「でもよ……」


「ギジェットさんにも研究用にウィングドラゴンの素材を渡したし、グレオにはそんなもので返せないぐらいの恩があるんだ。受け取ってくれ」


「……わかった」


グレオがやれやれといった感じでナイフをテーブルの上に置いた。


「丈夫さと切れ味は保証するよ」


「だろうな。明日にでも試してみる」


「それじゃあ明日は久しぶりに一緒に狩りに行こうぜ」


「いいぞ」


「腕が鳴るな……」


「狩りすぎんなよ?」


「わかってるって」


グレオと冗談を交えながら話をしていると、隣に座ったミシャが不思議そうに俺たちを見ている。


「どうしたミシャ?」


「なんかマコトいつもより楽しそうだね」


「そうか?」


「うん。なんていうか無防備」


「そうだな……グレオの前じゃ気を張らなくていいしな」


「いいこと言ってくれるじゃねぇか」


「恩人だしな」


「よせやい。それを言うならおめぇも俺の命の恩人だろ?」


グレオが照れる。


「ねえグレオさん、マコトと会ったときってどんな感じだったの?」


ミシャが興味深々といった様子でグレオに質問する。


「そうだな……最初は凄ぇ怪しいやつだったな」


「なんだそれ?」


「本当だろ?」


「それでどうして恩人なったの?」


「それはだな……」


グレオと俺の出会いなどをミシャに聞かせてやりながら、その日は夜までずっと3人で話しこんだ。


翌日は3人で森に狩りに出かけた。


ミシャの動きや気配の消しかたを見て、グレオが関心していた。


「さすがはマコトの弟子だな」


「だろ?自慢の弟子だ」


「へへへ……」


弟子自慢をしながら正午には狩りを終えた。


午後はグレオとギジェットさんを連れてドレッドノートの中を案内した。


「ほう、これは……いや実に精密にできている。こちらも素晴らしい!」


ギジェットさんはブリッジでいろいろ触ってはしゃいでいる。


「ウィングドラゴンのことやこの船ととか、おめぇはやっぱり凄ぇやつだな」


グレオは感心を通りこして呆れているようだ。


「いろいろやってたらこんな感じなってた」


「なにかデッカイことやるとは思ってたけどな」


確かに、気づけばこの世界でいろんなものを得た。


あっちの世界じゃただの大学生だったんだけどな……


「マコト殿!このドレッドノートを今から飛ばすことはできますかな!?」


考えごとはギジェットさんの大声で中断された。


「できますよ。飛ばしますか?」


「ぜひお願いしたい!」


「わかりました」


ドレッドノートを発進させると、ギジェットさんはまた気絶した。


おい。飛ばした意味ないだろ……








「いやぁ~素晴らしい体験をしましたな!」


「おう。空を飛ぶなんて普通はできねぇからな!」


ドレッドノートを草原に泊め、2人を降ろした。


「楽しんでもらってよかった」


「もう帰るのか?」


「うん。そうするつもり」


「そうか。またいつでも来いよ!」


「うん」


「それではお達者で。アドルフ先生によろしくとお伝えください」


「わかりました。ギジェットさんもお元気で」


「はい。ではまた」


ドレッドノートに乗り込む。


「じゃあ行くよ」


「おう行ってこい」


「お気をつけて」


2人に手を振ってドレッドノートのハッチを閉めた。


「それじゃあ帰るぞミシャ」


ドレッドノートの中で待っていたミシャに声をかける。


「うん。2人ともいい人だったね」


「だろ」


「またこようね、あるじさま!」


「ああ」


操縦席に座り、ドレッドノートの発進させる。


「ザインまで一直線だ」


「ごー!だね!!」










なんか元気出たな。久しぶりに依頼でも受けるか!

お仕事しましょう。

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