二度目の旅立ち
これから少しお話が移り始めます。
新生ドレッドノートの進空式も終わり、ザイン城の前庭にドレッドノートを停泊させた。
「さて、宿に戻るか」
「うん」
「ドレッドノートで遠征する予定はないのか?」
エリスがうずうずした様子で訊ねてきた。
「今のところはないかな」
「そうか……」
しょんぼりした。
「まあこの先ずっとないってわけじゃないからな。ちゃんと飛ばすぜ?」
エリスの肩をポンポン叩く。
「……そうだな。楽しみにしているぞ!」
気を持ち直したようだ。
「じゃあ帰る……」
「マコト殿~!!」
ガンツが手を振りながらこちらに駆け寄ってくる。
あの人はだんだん威厳がなくなってきたな。
「どうしました?」
「はぁ…はぁ……大切な……話が……ある」
息を切らせながら途切れ途切れに話すガンツ。
「俺にですか?」
「そう……だ……2人で話したい」
また『エリス様になじられ隊』の話だろうか?
「とりあえず……城で話そう」
「わかりました。ミシャ、エリス、公爵様が俺と個人的な話があるそうだから、先に帰っててくれないか?」
「わかった」
「では先に戻っている」
ミシャとエリスはその場をあとにした。
「じゃあ行きましょうか?」
「うむ」
ガンツのあとに続きいつもの応接室へ向かった。
「まずはこの親書を読んで欲しい」
ガンツに白い1枚の紙を貰った。
「なになに……貴殿の活躍を耳にし、是非とも会ってみたいと考えている。ついては王都にて面会したく思う。これはなんですか?」
「マコト殿の熱烈なファンからの手紙だ。差出人は裏面に書いてあるので、確認してくれ」
ガンツが疲れたような口調で俺に話しかける。
「差出人……マリベル=レ=ブラン=ド=シルフィア16世。誰ですか?」
「第16代目シルフィア国王だ」
「国王……ですか?」
「そうだ。そなたの熱烈なファンにして、この国のトップだ」
「つまり、これは国王様からの招待状ってことですか?」
「そうだ」
わお。
「拒否権は?」
「なくはないが、デメリットが多いぞ?」
「う~ん。それにしてもなんで今頃?」
「今までも何度か陛下からそなたに対しての質問やファンレターが届いていてな」
「はぁ」
「今回のそれが送られてきた要因は2つ。ドレッドノートとイゼリア嬢だな」
「どういうことでしょう?」
「今までも陛下はそなたにだいぶ興味があったが、ドレッドノートの件とイゼリア嬢から直接そなたのことを聞いたことで興味を抑えられなくなったのだろう」
なるほどね~。ドレッドノートは珍しいし、イゼリアも近衛騎士団の副団長だから、国王と直接話す機会があるってことだもんな。
「事情はわかりました。ですが、本当に行ってもいいんでしょうか?」
「うむ。特に悪い扱いは受けんだろうし、なにより陛下のコネができると言うのは、なかなか美味しいぞ?」
ガンツが政治家特有のあくどい笑顔をする。
「う~ん……しかたないかな。行きましょう」
「そうか、行ってくれるか。陛下はぜひドレッドノートで来てほしいとのことだ」
「ミシャとエリスはどうしましょうか?」
「今回に限っては、ザインに残したほうがいいだろう」
「……わかりました」
2人は留守番か。
「いつごろ王都に着く予定で出発する?」
「王都までの距離は?」
「ザインから西に1500キロといったところかな」
ドレッドノートなら最短で1時間半ぐらいか。
「準備もありますので、3日後の正午に到着ということにします」
「うむ。ではその旨を陛下にお伝えしよう」
「はい。それじゃあ俺は失礼します」
そう言ってソファを立とうとする。
「……少し小耳に挟んだことがあってな」
ガンツがぼそっと言う。
「なんでしょうか?」
「最近王都に隣国のサラエドから使者が来て、それ以来上層部の動きが慌しくなっているらしい。今回の謁見の件にも関係があるかもしれないので、少し気をつけてくれ」
「……注意しておきます」
「うむ。では無事に帰ってきてくれ。マコト殿」
「はい。失礼します」
なんとなくキナ臭い感じを覚えつつ、ザイン城を出た。
「ただいま」
「お帰り。なんかあったの?」
ミシャが心配そうな顔で俺を見る。
「少しドレッドノトートで出かける予定ができた。そのあいだミシャたちに留守番を頼みたい」
「どういうことだ?」
エリスは少し怒ったような困惑したような顔をしている。
「……シルフィア国王に謁見することになった」
「「!?」」
2人の目が驚愕で見開かれる。
「3日後の朝にザインを出る」
「それってどういうこと?」
「俺にもわからんが、無下に断ることはできなさそうだ」
「すぐに帰ってくるのか?」
「それもわからん」
「「……」」
落ち込んでいるようだ。
「安心しろ、帰ってこないわけじゃない。用事が済んだらすぐに戻ってくるさ」
「……絶対にだよ?」
「ああ」
「今度は前以上の土産を期待している」
「りょーかい」
なんとかわかってもらえたかな?
「とりあえず、これから買出しにいくんだが付き合ってくれないか?」
「うん」
「いいぞ」
「頼むな。じゃあ行こう」
出発の日。食料品や日用品はあらかた積みこんだ。
ザイン城前庭。ドレッドノートの前にガンツ、ミシャ、エリスの3人と俺は立っていた。
「マコト殿陛下によろしく伝えてくれ」
「わかりました」
「気をつけてな」
「はい」
ガンツと挨拶を交わす。
「マコト……」
「……」
ミシャとエリスが俺を心配そうに見つめる。
「そんな顔すんな。なにも今生の別れってわけじゃない」
ミシャとエリスの頭をワシャワシャと撫でてやる。
「いいか。俺が帰る場所はおまえらのところだ。だから、俺が留守のあいだしっかり守るんだぞ?」
「うん!」
「わかった!」
「いい子だ」
最後に思いっきり2人を抱きしめる。
「……それじゃあ行ってくる」
「気をつけてねマコト!」
「絶対帰ってくるんだぞ!」
「ああ!!」
手を振ってドレッドノートに乗り込む。
ブリッジで最終確認を行う。
「機器、機体状況オールグリーン。いけるな」
「こんかいは、すこしたいへんなことになりそうだね」
「ああ。でも行くっきゃない。だろアスール?」
「うん!」
「よし。進路、王都シルファリオ。速度、300。高度、3000。ドレッドノート発進!」
「ごー!だね!!」
ちゃっちゃと終わらせて帰るぞ。
次回、再会と初対面。




