リッテル遺跡
飛びます。
ザインを出発して4時間ほどでリッテル遺跡まで到着した。
「これがリッテル遺跡か……」
「いがいとちいさいね、あるじさま」
「そうだな」
リッテル遺跡は500メートルほどの岩で組まれた遺跡だった。
「地図地図っと」
立体地図を出して確認する。
「アスール、どうやらこれは地表に出てる一部であって、地下はこれの何倍もあるっぽい」
「へぇ~そうなんだ」
「こういうところには最深部にお宝があるという決まりだ」
「ほんとに!?」
「ああ、きっとある。とりあえず行こうぜ」
「うん!」
リッテル遺跡の中に入る。
遺跡の中は壁自体が光り、松明がなくても大丈夫なようだ。
「ここを右……真っ直ぐ行って突き当たりを左に……」
地図と睨めっこしながら進む。
「このままなんもなければ今日中に最深部まで行けそうだな」
「ほんと!?」
「ああ。なんにもなければだが……あれは?」
通路の中央に50センチぐらいの透明な丸いゼリーがあった。
「なんだ?」
とりあえず近づくと……
プルンッ
「動いた!?」
そのまま固まっていると、ゼリーが結構な勢いで突進してきた。
避ける。
「もしや!?魔物図鑑を……」
四次元袋から魔物図鑑を取り出す。
「え~っと……やっぱりスライムだ!初めて見た!!」
どうやらあのゼリーはスライムのようだ。
「なになに……ランクはD。体当たりをして相手を気絶させ、体内に取り込み消化して食べる……怖!」
「いがいとえげつないね」
「なお、倒すさいには斬撃や打撃は効かないので、炎魔法か氷魔法で倒すこと……ためしてみよう」
再び体当たりをしてきたスライムをイルミナスで一刀両断する。
ポヨン
ポヨン
「分裂した!?」
びっくり生物だな。
「じゃあ『ファイヤーボール』」
スライムAにファイヤーボールを放つ。
ジュウゥゥ……
めっちゃ蒸発してる
「その次は『アイシクルアロー』」
スライムBに氷の矢を放つ。
カキンッ
凍った。
触ってみると粉々に砕けた。
「氷のほうが相性がよさそうだ。じゃあ……あれも一気に片付けるか」
「そうだね」
どこから湧いてきたのか、俺の周囲を100匹近いスライムが囲んでいた。
「『アイシクルアロー』!!」
無数の氷の矢を放つ。
「……こんなもんか」
あたりには大量の丸い氷がごろごろしていた。
「先に進もうかアスール」
「うん!」
その場をあとにする。
ずんずん進んでいくと、スライムが山のように襲い掛かってくる。
「もう面倒くさい!『エアロイクイップメント』!」
風を纏って近づいてくるやつを片っ端から吹き飛ばす。
「べんりだね、それ」
「自分で創作しておきながらこの汎用性には驚く」
「じゃあ、おくにいこう」
「おう!」
そのままスライムだらけの遺跡を奥に進む。
少し広い空間に出た。
「今度は色つきのがいるぞ」
「ほんとだね」
赤と緑のスライムが1匹づついる。
大きさは1.5メートルほどで、体の中に同じ色のひし形の結晶がある。
「あれは……」
魔物図鑑を出そうとする。
ボッ!
ヒュンッ!
色つきスライムがファイヤーボールとエアカッターを放ってきた。
「うわ……なんだ!?」
慌てて避ける。
「あいつら魔術使えんのか!?ちくしょう『アイシクルランス』!!」
氷の槍を2本放ち、スライムを凍らせた。
「……びっくりした」
「すこしつよかったね」
「ああ」
魔物図鑑を調べる。
「マジックスライム。ランクC。体色に合わせた下級魔術を使うので注意」
もうちょっと早く注意してほしかったです。
「体内の結晶は魔導器の核になる……拾っていくか」
スライム氷を砕き、結晶を取り出す。
赤と緑の美しい結晶が1つづつ手に入った。
「へぇ~綺麗だな。ミシャとエリスへのお土産にしよう」
「ふたりともよろこぶよ!」
「そうだな。よし、この調子でどんどん行こう!」
「おー!」
さらに進む。
もうほとんど最深部まで来ただろうか、途中にかなりの数のスライムに遭遇したが、軽くあしらって進んできた。
先ほどまでの空間よりさらに広い場所に出た。
「なんか今までの場所と違うな」
「そうだね」
今までの壁は石造りだったが、ここは白い金属のようなものでできている。
特に扉もなく、ここが最深部のようだ。
空間の中央には壁と同じ素材の5メートル大で表面に幾何学模様の入った四角いブロックがある。
「あれがお宝か?」
「どうだろう?」
とりあえず近づいてみる。
ピーッ!
なんかブロックから音がした。
ガコン
ガチャ
「おう!?」
シュン
チャコン
「うわぁ……」
ブロックが展開して変形していく。
思わずアスールと2人で呆然と眺める。
ヒュンヒュン
バシ
ガシャン!
「「すげぇ~!」」
完全に変形し終わり、ブロックは10メートルほどの白いロボットになった。
「ロボットだ……」
「かっこいい!」
「いいのか、こんなのあって?」
「いいんだよ!かっこいいから!!」
「……そうか」
ロボットを見あげる。
ロボットの顔がこちらを向き、目とカメラアイが合う。
「こ、こんにちは!」
さわやかに手をあげて挨拶してみる。
ブゥン……
ロボットのカメラアイと全身の幾何学模様に赤い光が灯った。
「……やばくない?」
「……かも」
バシュンッ
ロボットの左腕からチェーンソウのようなものが展開した。
チュイィィィィンッ!
刃が回転し始めた。
「「……」」
瞬間、ロボットが襲いかかってきた。
「うわ!危ねっ!?」
慌てて避ける。
「問答無用かよ……それとも挨拶が気にいらなかったのか?」
「そんなこといってるばあい!?」
「すいません……」
真面目にロボットと対峙する。
「とりあえず『ファイヤーボール』!!」
左手からファイヤーボールを放つ。
パキィン!
「なにそれ!?」
ロボットに直撃する前に不可視の障壁に阻まれる。
「マジかよ……わっ」
ロボットがチェーンソウで切りかかってくる。
「よっと!意外と速い!」
避けて一度距離をとる。
「マナグラス、装着!」
マナグラスを装着してロボットを見る。
「やっぱり……マナで動いてるっぽいな。さっきのも魔術で作った盾か」
ロボットがマナを吸収しているのがわかる。
「古代遺跡の超兵器ってわけね……『エアカッター』!『アイシクルランス』!」
続けざまに魔法を放つが、やはり障壁に阻まれる。
「魔法は効かないと……」
「どうするの?」
「接近戦しかないでしょ?」
イルミナスを抜く。
そのまま接近し、足を斬る。
キィンッ
「かたっ!?」
攻撃自体はできたが、装甲が堅く、軽くキズがついただけ。
硬直している隙を狙ってチェ-ンソウが振り下ろされる。
回避してまた距離をとる。
「困ったね」
「こまったね」
「どうしようか?」
「どうするの?」
「う~ん。ああいう相手はお決まりでは弱点があるはずだ」
「じゃくてん?」
「たとえば重要な機関が外に出てるとか、関節は弱いとか」
「じゃあ、それをみつけたりためしてみたら?」
「そうしようか」
イルミナスを構えなおす。
「とりあえず……」
ロボットの周りを高速で移動し、弱点らしきものを探す。
「……ない」
なかった。
「関節は……足首、膝、足の付け根、腰、肩、肘、手首、首かな?」
関節は黒い布のようなもので覆われていて、いかにも!って感じだ。
「では……!」
相手の認識が追いつかない速度で背後に回り、右膝の関節にイルミナスを突き刺す。
ガシュッ!
「刺さった!おりゃ!!」
そのままイルミナスを動かし、内部を破壊する。
「よっと」
距離をとる。
ロボットはこちらを振り返ろうし、バランスを崩し右膝をついた。
「いける!」
突撃する。
チェーンソウをくぐり抜け、左足を駆け上がり、首元へ。
「その首貰いうける!ふん!!」
首を真横に一刀両断。
ガラン……ゴロゴロ……
ロボットの首が落ち、転がっていく。
「機能停止確認。倒したな」
「あるじさまかっこいい!」
「さんきゅーアスール」
動かなくなったロボットの肩から降りる。
ガコン
「おや?」
奥のほうから音がする。
近づいてみると壁の一部が開き、スイッチのようなものが現れていた。
「……怪しい」
「でも、それおさなきゃなんにもならないよ?」
「そうだな……」
スイッチに手を置く。
「ポチっとな」
押した。
ゴゴゴゴゴゴ……
目の前の壁が鳴動し始めた。
「やっぱり遺跡の自爆スイッチか!?」
「ちがうでしょ……ひらいてるよ?」
「本当だ……」
目の前の壁が2つに分かれ、開いていく。
完全に開き終わり、今までいたのと同じサイズの空間が現れた。
「「おぉ~……」」
その空間の中には、1隻の船のようなものが鎮座していた。
「あのロボットはこれを護ってたのか……」
50メートルほどあるその船は、両側に羽のようなものが突き出している。
素材は先ほどのロボットと同じようで、船体に幾何学模様が走っている。
「宇宙船みたいだな」
「あるじさま、なんかかいてあるよ」
船体になにか書いてある。
「どれどれ……読めん」
読めなかった。少なくても日本語でも現在のエルガイアの言葉でもないようだ。
「こういうときは……助けて!チートの神様!!」
そう言うとアスールが光りだした。
「よし。読める。ありがとう!チートの神様!!」
感謝は忘れない。
「よんでよんで!」
アスールがせかす。
「オッケイ。え~と『ガーディアンを倒した勇気と力ある者に、この船を託す。所有したくば、この印に触れよ』だってさ。これ、くれるみたい」
「やったね!」
「うん。これに触ればいいのかな?」
薄青く光る部分に触れる。
バシュウゥ……
船体の横にあるハッチが開いた。
「なかにはいろう!」
「おう」
中に入ると、本当に宇宙船のようだ。
壁の案内が点滅する。
「ブリッジ……そこに行けばいいのか?」
通路を進み、ブリッジに出た。
「操縦席か……」
未来型のイスが5つほど鎮座し、コンソールのようなものが沢山ある。
コンソールの1つが青く点滅する。
その部分に触れると、半透明なディスプレイが浮かびあがり、文章が現れた。
「なになに……マスター登録を行います。登録をする場合は点滅している部分に手を置いてください。ね」
一番前にある座席の肘掛についている丸い水晶のようなものが2つ点滅している。
「よいしょっと」
座席に座り、水晶に手を置く。
「うわ……!?」
突如頭の中に大量の情報が流れ込んできた。
「そういうことか!!」
どうやらこの船のデータや操縦方法のようだ。
「終わった……」
なんか脳みそをシェイクされたみたいだ。
すると、船全体が青く輝きだし、正面や側面の壁が透明になって外の様子を映しだした。
「「おお~」」
アスールと2人で感動する。
輝きが収まり、目の前に半透明なディスプレイが再び現れた。
〔マスター登録が完了しました。ただいまより、この『強襲型魔導飛翔艦 ドレッドノート』のコントロールはマスターに移譲されました〕
「ふむ。なるほど」
「どういうこと?」
「この船……ドレッドノートって言うらしいんだけど、これは俺のものになったから、俺の自由に動かしていいよってことらしい」
「へぇ~」
「操作は……音声入力ね。じゃあドレッドノートの現在の状態はどうなっている?」
ディスプレイに文字が浮かびあがる。
〔通常航行及び魔術障壁の展開は可能。武装の使用は不可能〕
「武装は使えないのか……あとはオールグリーンだな」
「どうするの?」
「とりあえず飛ばしてみるか?」
「うん!」
「ドレッドノート格納ハッチオープン」
ドレッドノートを収めている部屋の天井が開いていく。
「成功だな」
「すごい!」
完全に天井が開き、空が見える。
「そんじゃまぁ行きますか?」
「うん!!」
「ドレッドノート!発進!!」
船体の幾何学模様が青く光り、ドレッドノートが上昇を始めた。
「すごいすごい!!」
アスールはもの凄いはしゃいでいる。
「高度5000メートルまで上昇ののち、その場で停止」
ドレッドノートの上昇速度がぐんぐん上がる。
「高度5000メートルっと。どうだアスール?」
「すごいたかいよ!あるじさま!!」
「だな。微速前進」
ゆっくりとドレッドノートが進みだす。
「速度上昇」
加速する。
150キロ
300キロ
600キロ
1200キロ
周囲景色が矢のように流れていく。
「これで限界かな?停止」
徐々に減速していく。
「はやかったね!」
「ああ。さすがに生身では出したくない速度だな。いいもん拾った」
「もってかえる?」
「当然!」
「じゃあみんなおどろくよ!」
「だろうな……そろそろ夕飯だし、帰るか?」
「うん!」
「では……進路ザイン。速度500。航行開始!」
「ごー!だね!!」
船があると冒険に出たくなるな。
そろそろ冒険を再開しようかと考えています。