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武道大会 予選

イメージはマスク・オブ・ゾロです。

ダルハイムに着いた翌日、俺たちはダルハイムコロッセオで開会式を見ていた。


「凄い人数ですね」


巨大な円形闘技場は参加者であふれていた。それをガンツの横で見下ろす。


「シルフィア全土から集まってきている。1万人はいるだろう」


「そんなに……」


「それほどまでに大きなイベントなんだ、この武道大会は。観客も含め、今この町には10万人ほどの人が集まっている」


凄いな。


「最初は大人数のバトルロイヤル形式で試合が行われる。その戦いに勝った1名が本戦のトーナメントに出場する。出場枠は32名だ」


1万人から一気に32人か。こりゃ厳しいな。


「開会式が終わったようだな。これから第1戦目が始まるぞ」


会場から選手が続々と退場し、闘技場には300人ほど残った。


「これより、予選バトルロイヤル第1戦を開始します……始め!!」


審判が試合の開始を宣言した瞬間、戦いが始まった。


矢が飛び交い、剣戟の音が聞こえ、稀に魔法も飛び出す。


「まるで、戦争だな……」


「マコト殿、そなたは第2戦だっただろう?」


「はい」


「それではこれを着て準備をしてくれ」


ガンツは黒い袋を俺に手渡した。


「これは?」


「衣装だよ。さあ着替えてくれ」


ガンツがニヤリと笑った。


なんだ?背筋に寒気が……


「どうした?早く着替えてきたまえ」


「……はい」






「……お待たせしました」


着替えて貴賓席まで戻ってきた。


「おお!似合っておるぞマコト殿!!」


「え、マコトなの!?」


「どうしたんだ、その格好はいったい!?」


ガンツ、ミシャ、エリスは俺の格好を見て表情を変えた。


「本当にこの格好で試合に出るんですか?」


「当然だ!」


ガンツに言いきられた。


俺の格好はブーツ、ズボン、シャツは前のままだが、


裏地が赤い黒のマントを詰襟の代わりに羽織り、


つばが広くて白い羽が一枚ついた黒いテンガロンハットを頭に被り、


顔には上半分が隠れる黒い仮面をつけていた。


どこの怪盗だよ……


「なんでこの格好なんでしょうか?」


「マコト殿は有名すぎるのでな、素性を隠して登録してある。その名も『謎の黒騎士』としてな!!」


なんという……


「その格好だったらいくら目立っても大丈夫だ!というか、派手に闘って目立ってくれたまえ!!」


ガンツの目がキラキラしている。


「……わかりました。派手にやります。それでは、そろそろ会場に向かいます」


「ああ。楽しみにしているぞ!!」


ガンツは上機嫌だ。


「その……大丈夫、マコト?」


ミシャが心配そうに耳元にささやいてきた。


「大丈夫……というか、こうなったらやるしかないだろ?」


「そうだね……ここで応援してるから!」


「ありがと……」


今度はエリスが俺の肩に手を置いた。


「……頑張れ。マコト」


哀れみの目で見られた。なんかいろんな意味がある頑張れだな。


「……ありがとうエリス。行ってくる」


エリスの手をどかして階段を降りようとする……


だから、そんな哀れみの目で俺を見つめ続けるな。


会場に行く途中でも道行く人々に変な目で見られた。


闘技場内に入ると、もうほかの選手たちがすでにいる。


しかもこっち見て笑ってやがる。


「……速攻で決めてやる」


ほかの選手が壁際に控えているのに対し、俺は闘技場の中央に位置どる。


「それでは第2戦を開始します……始め!!」


開始と同時にイルミナスを鞘から抜き、腰だめに構える。


「伸びろ、イルミナス!」


そのままイルミナスを闘技場の壁ぎりぎりまで伸ばす。


「ふんっ!!」


ビュゥン……


そのまま振りぬいて横に1回転させた。


「……戻れ」


イルミナスを元のサイズに戻し、鞘に収める。


辺りを見回すと、闘技場の選手は俺以外全員倒れていた。


「こんなもんか……ん?」


静まりかえる会場。


「しまった、やりすぎたかな……とりあえず帰ろ」


踵を返して闘技場をあとにする。


遅れて爆発するような歓声がうしろから聞こえた。








衣装を脱いで貴賓席に戻った。


「戻りました」


「おお!よくやったマコト殿!!」


ガンツが席から立ち上がり俺の手を握りしめた。


「いや、あれほど衝撃的な勝ち方は初めて見たぞ!まさか剣を伸ばして一網打尽とは!!」


「少しあっさり勝ちすぎましたかね。しかも、もう2度と同じ手は通じないでしょうし」


「そうかもしれんが、あの勝ち方のおかげで、みな君に注目しただろう!推薦者として私も鼻が高いぞ!!これからも勝てるか!?」


「ありがとうございます。このまま一気に優勝まで駆け上がるつもりなので、ご安心を」


「うむ。期待している!」


「それでは警護に戻ります」


「ああ、よろしく頼む」


そのままガンツのうしろに控えるミシャとエリスのあいだに立った。


「おつかれ、マコト!」


ミシャが笑顔で労ってくる。


「ありがとう、ミシャ」


ミシャの頭をポンポンしてやる。


「おまえ、怒っていただろう?」


エリスが俺の顔を覗き込んでくる。


「わかるのか?」


「いくら指示があったとしても、普段のおまえならもうちょっと穏便にすませる」


「まぁ、そうだな」


エリスが俺の顔を覗きこみながら悪戯っぽく笑う。


「おまえも案外子供っぽいな、マコト?」


「なんだ、この前の意趣返しか?」


エリスは闘技場のほうへ顔を向ける。


「いや、私と同じなんだな……と思ってな」


少し嬉しそうだ。


「……そうかもな」


そうつぶやいて、俺も闘技場に顔を向けた。


ミシャがその様子を横目で見ていたのは気づかなかった。


そのまま今日は予選の半分の16戦が行われた。見たところ、そこまで注目するような選手はいなかった。


試合の観覧を終えたガンツを闘技場入り口の馬車まで警護する。


そのあとは警護のため、ガンツの馬車に乗りこんで宿まで行く。


宿に着き、ガンツを部屋まで送り届ける。


「それでは明日も頼んだぞ」


「はい」


「ではな」


ガンツは自室に入っていった。


俺たち3人も部屋に戻る。







「ふぅ……酷い目にあった。あんなの着るなんて聞いてないぞ俺は」


リビングのソファに腰を下ろしてため息をつく。


「まあまあ、これもお仕事でしょ?」


ミシャが背後から俺の肩に手をかける。


ビクンッ!


びっくりして思わず身をすくめてしまった。


「……なに?」


ミシャが怪訝な目で俺を見る。


「いや、また首絞められるんじゃないかと思って……」


それを聞いてミシャがニヤリと笑う。


「なんだ、またして欲しいの……スキンシップ?」


「いやいや、滅相もない」


全力で否定した。


「なんだ、つまんないの」


そう言ってミシャは寝室のほうへ消えていった。


「ミシャ……恐ろしい子……」


「自分の弟子に向かって、なに言ってるんだおまえは」


独り言を聞いていたエリスに頭を叩かれた。


「痛っ、頭を叩くなよ。冗談だ……いや、冗談でもないか」


「どういうことだ?」


「エリスが弟子になってから、ミシャが妙に荒々しくなったというか……なんというか」


「私のせいだと言いたいのか?」


エリスが睨みつけてきたので、無言で目を逸らす。


「なんとか言え!というか否定しろ!!」


エリスにヘッドロックをかけられた。


痛い。だが柔らかいし、いい匂いがする。


俺の中で葛藤が生まれた。


「痛い!やめろ!いや……やめるな!!」


「どっちだ!?」


さらに力を強めようとしていたので、俺はスルリと抜け出した。


「あぁ~楽しかった」


そのままソファに倒れこむ。


「おまえ!からかったな!?」


背後でエリスが叫んでいる。


「ま~そんなに怒りなさんな。シワ増えるぞ?」


「こんの……ふんっ!」


「おうっ!?」


エリスに背中を踏みつけられた。


一応靴は脱いでくれたようだ。


しかし、これは……


「意外と気持ちいい……」


「なに言ってるんだ。おまえは?」


「エリス、もうちょい上」


「え?」


「もうちょい上を踏め!」


「あ、ああ……こうか?」


「おう。いいね。あと、もうちょっと強めに頼む」


「う、うん。わかった」


「うむ。うまいぞエリス。さすがだ」


「そ、そうか?」


「もう完全に俺の背中乗ってくれ、おまえ軽いしな」


「わかった」


そのままエリスはもう片方のブーツも脱いで、俺の背中の上に立った。


「おう。想像以上に……いい」


「ここなんてどうだ?」


エリスが自ら踏み始めた。


「いいぞ。エリス!」


「こっちは!?」


「グッドッ!!」


「じゃあ次はここだ!!」


「エクセレーントッ!!!」


「その次は……『なにやってるのかな?』」


エリスと2人でバッと声のするほうに振り返る。


ミシャが幽鬼のように立っていた。


「……なにしてるの、って聞いてるの」


「「これは……そのっ!」」


「2人とも、正座」


「「……はい」」


床に正座させられた。


「で?なんでマコトはエリスさんに踏まれて喜んでたの?」


「いや、気持ちよかったもんで……」


「いつから変態になったの?」


「違うんだ!あれはマッサージなんだ!!」


「ふぅん……でもあたしはエリスさんが率先してそういうことするとは思えないんだけど?」


首を傾げつつ、微笑みながら訊ねてくるミシャ。


でも目が笑ってない。


「それは……その……」


「なに?」


「俺がエリスをおだてて誘導しました……」


「そっかぁ……頼んでくれれば私がやったのに」


「本当……に?」


「ほら、こうやって、ね!」


そのまま引きずり倒されてブーツで思いっきり踏まれる。


「痛いたいたいたいたいっ!!」


俺を踏みつけつつ、ミシャはエリスのほうを向く。


「エリスさん?」


「は、はい!」


「あんまりマコトに騙されちゃだめだよ?」


「は、はい!肝に命じておきます!!」


「これからは気をつけてね」


笑顔で告げるミシャ。


「ミシャさん……恐ろしい人……」


エリスは目の前で繰り広げられる惨劇を呆然と見ながらつぶやいた。







「ごめんごめん。ちょっとやりすぎちゃった……」


俺の寝室で、ミシャに踏まれて痣になったところにシップを張ってもらう。


「すげー痛かった」


「まぁ今回はマコトも自業自得だよ?あんまりエリスさんをからかわないのっと!」


「痛っ!」


ミシャは最後の1枚を貼ったあとに、その上から軽く叩いた。


「いやぁ~、なんかあいつ見てると、ついついからかいたくなるんだよなぁ……」


ミシャはなんとなく寂しそうな目で俺を見た。


「……最近エリスさんと仲いいね、マコト」


「そうかもな」


「…………」


「…………」


「まぁ……エリスさんだったらいいか」


「なにが?」


「いいの気にしないで!あたし、先に食堂行ってるね!!」


「おう」


そのままミシャは俺の寝室から出ていった。


「……はぁ~。ままならないもんだなアスール」


「じごうじとく」


「そうだな……」


「あるじさまは、えりすさんのことすきなの?」


「わからん。可愛いとも思うし、守ってやりたいのも確かだけど……それはミシャも同じだ」


「めんどくさいね」


「ああ、面倒くさい」


「でも……」


「ん?」


「あるじさまならなんとかするでしょ?」


「……そうだな。今までもなんとかしてきたしな」


「そのちょうしだよ!」


「ありがとう。アスール」


「うん。とりあえずごはんたべよう!」


「よし、じゃあ食堂まで……」


「ごー!だね!!」










そのうちなんとかしなきゃな。

最近展開が早すぎですかね。

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