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弟子の弟子は……弟子?

ちょい短めです。

ワノクニ亭一室にて。


「へぇ~そんなことあったんだ……」


「ああ、有名になるのも考えものだな」


依頼から帰ってきたミシャと夕飯を食べながらさっきあったことを話す。


「あたしになんの用だったんだろ?」


「さぁな。まぁいずれ会うことになるんじゃないか?」


「そうだね」


あの好戦的な性格はともかく、美人だったなぁ……


「マコト?なんでそんな遠い目をしてるの?」


「なんでもないぞ」


「ふぅん……まあいいや」






夕食を終えて、お茶で憩いのひと時。


1階の女将さんからミシャにお呼びがかかった。


「ミシャちゃ~ん!お客さんさんが来てるわよ~!!」


「お客さん?」


「ファンクラブの連中かなんかか?」


「それはないと思うけど……とりあえず行ってくるね」


「おう」


そのままミシャは下に降りて行った。


「誰だろうな?」


「ひるまのおんなのひとだったりして」


「まさか……」


階段を駆け上がってくる音がした。


部屋に凄い勢いでミシャが戻ってきた。


「ど、どうしようマコト!?」


ミシャは部屋に入るなり、慌てた様子で俺に言った。


「状況がわからん。落ち着けミシャ」


「えっと……うまく説明できない!とりあえずマコトも下に来て!」


そのままミシャに腕を引かれて1階まで降りた。


すると玄関に一人の女性が立っていた。


「あれ、昼間の……」


向こうも俺に気がついたようだ。


「おまえは……昼間のいけ好かない男!」


いけ好かないって……


「なんでおまえがここに?」


「それは私のセリフだ!なぜおまえが紅い疾風殿と一緒にいる!?」


「そりゃ……おまえ、俺がこいつの師匠だからだよ」


ミシャの頭に手を置きながら答える。


「ということは……おまえが竜殺しの英雄!?まさかこんな男がそうだなんて……」


こんな男って……


「マコト。知り合いだったの?」


ミシャが怪訝な顔で尋ねてきた。


「さっき言ってた、昼間いきなり俺に殴りかかってきたやつだ」


「ああ……」


「で、ミシャ。こいつはいったいなんの用事で来たんだ?」


「弟子になりに来たんだって」


「弟子ね。わざわざ遠くから弟子になりに来るなんて俺も有名になったもんだな……」


「誰が貴様になんぞに弟子入りするか!私は紅い疾風殿の弟子になりに来たんだ!!」


おや?マジですか?


「だからマコトに相談しようと思ったんだけど……」


「う~ん。とりあえずこんなとこで立ち話もなんだし、部屋に戻って話をしよう。おい、おまえもついて来い」


「おまえに言われなくても行く!」


嫌われたかな?


そのまま2人を連れて部屋に戻った。






「それで、なんであたしに弟子入りなんてことになったの?」


ミシャは俺の隣に座り、ちゃぶ台を挟んで座るエルフの女に事情を聞いていた。


「3週間ほど前に、とある村の近くでキラーアントの巣を駆除したのを覚えていますか?」


「うん」


「私はその村で猟師をしていました。キラーアントは私自身の手で駆除しようと思っていました。でも、できませんでした。村の男連中にも負けることもありませんでしたし、調子に乗っていたんですね」


「ふぅ~ん」


「私でも無理だとわかると村長は冒険者ギルドに依頼を出し、それで村に派遣されたの貴女です」


「なるほど、それで?」


「赤髪の獣人の少女が派遣されてきた、と聞いたときは、最初はなんの冗談かと思いました。どうせ駆除できないだろうと思ってひそかにキラーアントの巣に向かう貴女のあとを尾行しました」


「そんなことしてたんだ……」


「はい。お恥ずかしいかぎりです。そこで見たんです。貴女の戦う姿を。キラーアントを打ち倒していく姿はまさに紅い風のようでした。手下の大半を殺されて怒り狂う女王アリとキラーアントたちを炎の竜巻で焼き払う光景は今でも脳裏を離れません!」


「なんか恥ずかしいな」


「正直見惚れました。依頼を終えて村を去っていく貴女の後姿を見て、私は自分の矮小さと見解の狭さを痛感しました」


「なにもそこまで言わなくても……」


「いえ、それほどまでに衝撃的だったのですよ。それからしばらくして『紅い疾風』のうわさが私の村に届き、確信しました。あのときの少女だと。その瞬間に私は貴女の弟子になることを決めました」


「いや、あたしは年下だし……あたしが師匠だなんて……」


「年齢や性別など些細なことです。見た目で判断することの愚かしさを、私はあなたの戦う姿をこの目で見て確信しました」


「そんな……でも」


「貴女のお名前は、確かミシャさんでよろしかったですよね?」


「そう。あたしはミシャ。ミシャ=ムトウ」


「私はエリス=サリンバンと申します。ミシャ=ムトウ殿……」


エリスは一度立ち上がると片膝をつき、両拳を床につけて頭を垂れた。


「どうか私を弟子に……!!」


「えっ、ど、どうしようマコト!?」


ミシャは慌てふためいて俺を見る。


「ミシャ。今おまえは俺の弟子としてじゃなくて、一人の冒険者として評価してもらってるんだ。その期待にそうかどうかは自分で決めることだよ」


ミシャは少し考え始めた、その様子をエリスを顔をあげて不安そうに見ている。


「……マコト、あたしの好きにしていいの?」


「ああ。好きにしていいよ」


「じゃあ……えっと、エリスさん?」


ミシャはエリスのほうを見た。


「は、はい!」


「うまく教えられるかわからないけど、こんな師匠でよかったらこれからもよろしく」


エリスは目を見開いた。


「ほ、本当ですか!?こちらこそ不肖の弟子をよろしくお願いします!!」


どうやら丸く収まったようだ。


「さて、話は終わったみたいだな。これから頑張れよミシャ、エリス」


「うん。マコト!」


「おまえに言われるまでもない!」


……


「……なんでそんなに突っかかってくるか知らんけど、おまえはミシャの弟子になったんだから、師匠の師匠は敬うべきだと思うぞ?」


「私はあくまでミシャさんの弟子になったのであって、おまえを師匠にした覚えはないし、敬う理由もない!」


「そいつは少し暴論じゃないか?」


「なんだ?文句でもあるのか?」


両者のあいだにいつのまにか火花が幻視できるようになった。


そのまま両者は睨みあうがそれをミシャは苦笑しながら見ていた。


すると、アスールが念話を飛ばしてきた。


(ねぇ、みしゃちゃん!みしゃちゃん!)


(ん?なにアスール?)


(ほんとに、あのおんなのひとでしにしてよかったの?)


(あぁ……そのこと。なんかね、あの人見てるとちょっと前の自分見てるみたいで放っておけなかったの)


(そうなんだ……でもあのひとびじんだよ?あるじさまとられちゃうよ?)


(エリスさん見ててもそうなるは思えないけどな。それに……)


(それに?)


(あたし気づいたの。マコトはあたしにとっての家族。お兄ちゃんとかお父さんみたいな感じなんだって)


(でも……)


(いいの……それに、このままあたしが大人になったって、マコトはあたしのこと一人の女として見てくれないし。これ以上は辛いだけ)


(みしゃちゃん……)


(別に落ち込んでないわよ?だってあたしは『紅い疾風』。『竜殺しの英雄』の一番弟子。それは永遠に変わらないもの。それで十分)


(みしゃちゃんはつよいね)


(当たり前よ!なんてったって、あたしはマコトの弟子なんだから!!それに男なんて星の数ほどいるんだから!!!)


(うん!そのとおり!!あんなどんかんおとこより、いいおとこはいくらでもいるよ!!!)


(そうだね)


なんとなく苦笑いしながら、マコトよりいい男捕まえるのはAランクに昇格するより大変なんだろうなぁ……と思うミシャだった。


だが、現実は失恋した少女を休ませてくれないようだ。


「美人だからっていい気になりやがって!」


「人を見た目で判断するなど、底が見えるぞ?竜殺し?」


「てめぇ……言うじゃねえか!昼間俺に軽くあしらわれたくせに!!」


「ほう……まさかあれが私の全力だと思っているのか?愚かだな?」


「上等だッ!表でろ!!」


「望むところだ!昼間の雪辱を晴らす!!」


そのまま2人は同時に立ち上がって部屋の戸のほうへ。


(……とめたほうがいいんじゃない?)


(そう……ね)


あたしも立ち上がって2人のあとを追いかける。


(ごー!だね!!)








なんか……これからは師匠と弟子に板ばさみになりそうな予感がする……

うわぁ……

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