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英雄の帰還

やっと主人公らしくなってきたでしょうか?

《ウィングドラゴン回収隊 隊長 マシュー=エリンズの証言》


「あのときのことか?ああ、今でも忘れないよ。ウィングドラゴン討伐の一報が入って、俺たち回収隊はエルディア渓谷に向かった。渓谷に到着した俺たちが最初に見たのは地に臥せるウィングドラゴン。翼を含めて100メートルはあったな。そして近くに男が一人立っていた。彼があのウィングドラゴンを倒したんだ。たった一人でだぞ?そう、彼は英雄だった……葉っぱ一枚の英雄さ」






エルディア渓谷で回収隊と合流し、ザインに戻った。ちゃんと服は回収隊の人に持ってきてもらってたからな?勘違いすんなよ?


ザインの北門には大勢の人たちが集まってきた。大きな荷台に乗せられたウィングドラゴンを一目見ようと門の外まで出てきたようだ。


門に近づくと、俺に歩み寄ってくる集団がいた。


ミシャを筆頭に、女将さん、イリヤ、ゼクト、アドルフさん……あと高そうな服を着たおっさんが一人。


ミシャが駆け寄ってきて、俺の胸に飛び込んできた。


「マコト!無事でよかった!!」


半泣きのミシャを抱きかかえ、頭を撫でてやる。ちょっと髪が伸びたな。


「だから大丈夫って言っただろ?まあ……心配させて悪かったなミシャ」


「ううん、大丈夫。……ほんとにウィングドラゴンに勝ったんだ……」


ミシャが荷台のほうを見ながらつぶやく。


「なんだ、信じてなかったのか?」


「そんなことない!ただ……実物を見たらとても人一人に倒せそうなものじゃないなって思って」


「でも実際に俺一人で倒した。どうだ、ミシャの師匠は凄いだろ?」


「うん!ほんとに凄い師匠だ!!」


ミシャがキラキラとした笑顔をしている。この顔を見ると、本当に帰ってきたんだなぁ……と思える。


「マコトさん!あんた本当に凄いんだね。私びっくりしちゃったよ!」


ウィングドラゴンを見ながら女将さんが目を剥いている。


「いやそんなことないよ。それより、俺がいないあいだミシャの面倒見てくれてありがとう女将さん」


「そんなことかい。ミシャちゃんは私にとって娘当然。面倒を見るのは当たり前だろ?それにミシャちゃん、このあいだBランクになったんだよ」


「本当かミシャ?」


「うん……ほら!」


ミシャが着物の懐から銀色のギルドカードを取り出した。


「おう。よくやったな、偉いぞミシャ」


頭をワシャワシャ撫でる。


「へへ……マコトが約束守ってくれたんだもん。あたしだってがんばるよ?」


ミシャも喜んでいるし、こちらを見ている女将さんも嬉しそうだ。


「マコトさん!ウィングドラゴンの討伐、おめでとうございます!!」


イリヤが満面の笑顔で話しかけてきた。うむ、相変わらず美人だ。


「ウィングドラゴン討伐の報告が入ってから、すぐに発行しました。お受け取りください!」


イリヤから金色のギルドカードを受け取った。


「これで俺も晴れてAランクか」


「ええ、フェアレイド唯一のAランクです。こんな凄い人と出会えるなんて私夢にも思いませんでした。あ、でもこれからは気軽に声をかけたら怒られちゃいそうですね……」


イリヤがしょんぼりしている。


「そんなこと言わないでくれイリヤ。ウィングドラゴン倒したからって俺自身がなにか変わったわけじゃない。それに、みんなにそんな対応されたら俺が困る」


「本当……ですか?」


「ああ」


「よかった!マコトさん。これからもよろしくお願いします!」


イリヤ嬉しそうに微笑む。まるで花が咲いたようだ……いい!


「マコト様。少しよろしいでしょうか?」


そこに、ゼクトがすっとイリヤの前に出てきた。ッチ!やっぱりこのおっさん少し嫌いだ。


「……なんだ?」


「まずは、ウィングドラゴン討伐おめでとうございます」


「ありがとう」


「少しご相談なんですが、あのウィングドラゴンどうなさるおつもりで?」


「俺とミシャの防具やなんかを作るのに使う」


「あまった部分は?」


「まだ決めてない」


「でしたら、冒険者ギルド・ザイン支部で預からせていただけませんか?」


「預かってどうする?」


「あれだけ大きなもので、価値も計り知れないということですので、個人で売買するのは至難だと思われます。そこで当ギルドでお預かりして売買の仲介をしたいと考えているのですが?」


「そっちのメリットは?」


「素材が売れた場合、仲介料として売り上げの5%をいただければ、と考えております」


相変わらず抜け目がねえな。


「……たしかに俺が持ってても手にあまるものだ。そっちの提案に乗ろう」


「ありがとうございます。ではその方向で話を進めさせていただきます」


「ああ」


「では、失礼します」


ゼクトはそのままウィングドラゴンのほうへ歩いていった。


「仕事の話は終わったようじゃの」


アドルフさんが唐突に話しかけてきた。手になにか長い包みを持っている。


「またゼクトに仕事を押し付けましたね?」


「はて、なんのことかの?そんなことより、よくぞウィングドラゴンを倒した。いやはや、長生きはしてみるもんじゃ。まさかこの目で討伐されたドラゴンを見られるとは……」


アドルフは遠い目をしながらウィングドラゴンを見ている。


「例の装備の話ですが……」


「ああ、そうじゃったな。ノムライジから大陸一と言われるドワーフの鍛冶屋を呼んでおる。やつもこんな機会は二度と無いと言って張り切っておる。今日からでも作成を始めるそうじゃ」


「そうですか、ありがとうございます」


ああ……これで戦闘後に全裸になるなんて恥ずかしい思いはしなくて済む。


「それと、お主にこれをやる」


アドルフさんから長い包みを受け取る。


「これは?」


「無事に帰ってきたら贈り物をやると言ったろ?それがそうじゃ。とりあえず包みから出してみるがいい」


包みを開けると中に入っていたのは剣だった。


金細工を施した黒い鞘に収められた刃渡り1.5メートルほどの剣。


「抜いてみろ」


アドルフさんに言われて剣を抜き放つ。


鏡のように磨かれた刀身。中央の溝に何か文字が書かれており、刀身自体が青く発光している。


「……すごい」


「その剣の名前は《イルミナス》かつてドラゴンの首を一太刀で切り落としたと伝えられる伝説の剣じゃ」


「こんなもの……いただいていいんですか?」


「今のお主にはそれを持つ資格がある。いや。お主以外が持つ資格はないと言ったほうがいいかの?」


ニヤリと笑うアドルフさん。


「……わかりました。ありがたく頂戴します」


イルミナスを鞘に収め、アドルフさんに一礼する。


「うむ。様になっておるの。今のお主を知ったらギジェトは喜ぶだろう」


「そうですね」


ギジェットさんのキラキラした顔が容易の想像できた。


「それではワシは鍛冶師と今後の作業の相談に向かう。落ち着いたらまたワシの店に来てくれ」


「わかりました」


そう言ってアドルフさんは去って言った。


あと残ってるは……


高そうな服を着たおっさんがこちらに歩いてくる。


俺の目の前に来るとニカっと笑い、俺の手を取って両手で握り締めた。


「この町を代表して英雄殿の偉業に賛辞を贈ろう!」


「あ、ありがとうございます」


「礼はいらん。そなたはそれだけのことを成し遂げたのだ!」


「はぁ。ところで、どちら様ですか?」


「うぬ、まだ名乗っていなかったな。私はこの町の領主をしているガンツ=ヴァン=シュタインと申す」


領主……シュタイン……このおっさんがこの町のトップか。


「それで、領主様が俺になんの用でしょうか?」


「率直に言おう。そなたを召抱えたい。給金はそなたの言い値を払う」


隣でイリヤが驚いた顔をしている。凄いことなんだろうな。


でも俺は……


「残念ながら、お断りします」


ガンツは驚いているようだ。


「なぜだ?これは大変な名誉だぞ?」


「俺は冒険者です」


「わかっておる」


「そしてこれからも冒険者であり続けます。なので誰かに仕えることはしません。たとえこの国の王であっても」


真剣な顔でガンツを見る。


「……なるほど、意思は堅いようだな」


「はい」


「それではしかたがないな。私は大人しく身を引こう……」


そう言ってザインに戻ろうとしているガンツを呼び止めた。


「待ってください」


「なんだ?」


「先ほども言いましたが俺は冒険者です。ですから何か困ったことがあれば、ギルドに依頼を出してください。その依頼を俺は全力でやります」


ガンツは一瞬ポカンとしたが、すぐに大口を開けて笑いだした。


「ワハハハハッ!そうか、そうだな。お主は冒険者なのだから、頼みごとは依頼すればいいか!確かにそれが道理だな!!」


一通り笑ったあと、ガンツは俺のほうに向き直った。


「そなた、名は?」


「武藤 真です。領主様」


「そうか。私はそなたが気に入った!マコト殿にこれを渡しておこう」


ガンツから獅子のモニュメントが象られて鉄製の札を受け取った。


「これは?」


「それは私が特別の発行している通行手形で、それを見せれば内周外だろうが中央街だろうが私の城だとしても入れる。好きなときに遊びにくるがいい」


「わかりました」


「それと、シルフィア王にそなたの仕官は無理だと打診しておこう。それで勧誘は来なくなるはずだ」


「ありがとうございます」


「うむ。では私も帰るとしよう」


ガンツはそのまま立ち去った。


「マコトさん!領主様にビシっと言い切って格好よかったです!」


一部始終を見ていたイリヤが羨望の眼差しで見つめてくる。


「いや……俺は言いたいこと言っただけだから……」


「それでも、凄い格好よかったですよ!!」


イリヤの視線に照れながら頬をかく。


「むぅ~……マコト帰るよ!!」


「あ、おい!ミシャ、引っ張るな!!」


ミシャが俺の腕を引っ張って強引に門のほうまで連れて行こうとする。


「おいミシャ!聞いてるのか!?手をは……どうした?」


突然ミシャが立ち止まった。


ミシャの視線の先を追うと……


門の前に集まった人たちが一斉にこっちを見ている。


「……なんなんだ?」


そのまま立ち尽くしていると、集まった人たちの中から、一人の男のが駆け寄ってきた。


「ねぇおにいちゃん」


「……なんだ?」


「おにいちゃんがあのドラゴンやっつけたの?」


「そうだよ」


「やっぱりそうなんだ!おかあさ~ん!!このおにいちゃんがドラゴンをやっつけたんだって!!!」


男の子が詰め掛けた集団に向かって大きな声で叫ぶと、


ワァァァアッ!!


一斉に人々が駆け寄ってくる。なんかヤバイ!!


「ミシャ帰るぞ!」


「え?どうやって!?」


「こうやってだよ!『エアロイクイップメント』!」


ミシャをお姫様抱っこして、そのまま駆け寄る人々の上空を飛び越える。


「わ、飛んでる!あたし飛んでる!?」


(そういえば、まだミシャにまだ空の飛び方教えてなかったな)


(あいかわらずごういんだね)


(緊急事態だ。しかたないだろ?)


(まあね)


(それじゃあこのままワノクニ亭まで飛ぶぞ!)


(ごー!だね!!)












早く風呂に入りたいぜ。


わぁ……疲れました。

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