表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/42

愛弟子

チート神様!ありがとう!!



ミシャを拾った翌日、ミシャを連れて朝一番で冒険者ギルドに行った。


「ここが冒険者ギルド……中に入るのは初めてだ」


ミシャはギルドの中でキョロキョロしている。


「ミシャあんまり変なとこ行くな。受付いくぞ」


「う、うん!」


そのまま受付に行ってイリヤに挨拶をする。


「おはよう、イリヤ」


「おはようございます。マコトさん。今日はどのようなご用事ですか?」


ミシャのほうに視線を向けて言った。


「この子を冒険者ギルドに登録したいんだが……」


「この子をですか……?」


イリヤはミシャを見ながら目を剥いている。


「本人の希望でな。面倒は俺がちゃんと見る。ダメか?」


「い、いえ。こんな可愛らしい女の子がギルド登録するのは始めてで。でもマコトさんがついているなら大丈夫そうですね……あなた、お名前は?」


イリヤが腰を屈め、ミシャと同じ視線になって話しかける。


「み、ミシャです!」


ミシャも少し緊張しながら答えた。


「そう、ミシャちゃんって言うの。私は冒険者ギルド、ザイン支部受付のイリヤと申します。よろしくお願いしますね、可愛い冒険者さん?」


ミシャに手を差し出して握手する。


「はい!」


(うむ。美女と美少女が戯れている姿は絵になるな)


(そうだね~)


「それでは、さっそく登録の準備をしますね。まずは契約書を確認して、サインをお願いします」


イリヤがミシャに契約書を渡す。


「ミシャは読み書きはできるのか?」


「うん。孤児院にいるときに教えてもらった」


「そうか、じゃあ大丈夫だな」


ミシャは契約書を読み進め、サインをしている途中で手が止まった。


「どうした?」


「いや、名前だけで苗字がないと寂しいなと思って」


うぅん……そうだな。


「ミシャ、俺の武藤って苗字名乗っていいぞ」


ミシャがキラキラした目で俺を見てくる。


「本当にいいのか?」


「ああ、俺は一応おまえの保護者だからな」


そう言ってミシャの頭にポンッと手を乗せる。


「うん……ありがとう。イリヤさん。はい、これ」


ミシャがサインをした契約書をイリヤに渡す。


「はい。登録名はミシャ=ムトウ様でよろしいですね?」


「はい」


「それではギルドカードを発行しますね」


イリヤはタイプライターのようなものでなにか打ち込むと、ミシャに白いカードを手渡した。





イリヤからギルドカードとランクの話を聞いたあとでギルドを出た。


ミシャはギルドを出たあとも、自分のギルドカードずっと見ていた。


そしてなにかを思い出したように俺を見てきた。


「確か、マコトのギルドカードはシルバーだったよね?」


「そうだよ」


「ってことはマコトはBランクだったのか?」


「うん。見直したか?」


「うん、すごいよ!!」


こう、素直に反応されると少しこそばゆい。


だから、照れ隠しに隣を歩くミシャの頭を撫でた。


ミシャは気持ちよさそうに目を細めたあとに、少し不機嫌そうに俺に尋ねてきた。


「そういえば、イリヤさんと仲よさそうだったなマコト」


俺は頬をかきながらなんとなくイリヤさんのことを考える。


「そんなことはないと思うけど……」


「あたしには仲よさそう見えた。あぁ……でもイリヤさんいい人そうだし、複雑な気分……というか美人だし胸も結構……」


ミシャはなにか一人でぶつぶつ言いながら、最後に自分の胸に手を当てて、ため息をつきながら首を振った。


「なにしてんだ、ミシャ?」


「なんでもないっ!!」


(なんで怒ってるんだ?アスールおまえわかるか?)


(あるじさまは、おとめごころをべんきょうするべき)


(それとミシャが怒ってることになんの関係が?)


(……みしゃちゃん、むくわれないな)


なんでアスールまでちょっと怒ってるというか、呆れてるんだ?


俺が悪いのか?





「ミシャ、これからおまえに基本的な技術を教えていこうと思う」


「うん」


「それじゃあ、さっそくザインの外に出て特訓するぞ」


「わかった」


「あ、そうだ。その前にちょっと寄道していいか?」


「うん、いいけど……どこに?」


「リベンジしに行く」


「……リベンジ?」


そのままミシャを連れてザイン大通りを歩き、あの店へ。


「なんだここ……マジックアイテムショップ?なんでこんな店に?」


「ミシャも晴れて冒険者の仲間入りだし、必要なものを買おうと思って。あとは……」


「……あとは?」


「俺の矜持がかかってる」


店内に入った。


「たのもう!いつかの店員はいるか!?」


入り口付近で大声で叫ぶ。


「はいはい、そんな大声出さなくても聞こえてますよっと。おや?この前のお兄さんじゃないか」


ニヤつきながら俺のほうを見る。今日はカモでは終わらないぞ。


「今日はなんの御用で?おや可愛らしい娘さんつれて、いやぁ兄さんも隅におけな『世辞はいい!初心者3点セットとマナグラスを出せ!!』」


おまえの営業トークには乗らん!!


「はいはい、それじゃあ4点で23万フレだよ」


「安っ、いや、高い。割り引け」


「しょうがない兄さんだね、じゃあ21万フレでどうだい?」


「……まだだ。まだいける」


「兄さんこれでもぎりぎりなんだぜ?これ以上は無理だ」


そういって店員は困り顔になった。


それを見ていたミシャがおずおずと言ってきた。


「マコト……別にそれ以上安くしてもらわなくてもいいんじゃないか?向こうも困って『騙されるな』」


凄い低い声でミシャの反論を封じた。ありゃ演技だ。


「……店員、ちょっと耳を貸せ」


店員に近づいて耳打ちする。


(あんたこの前、俺にマジックアイテム使って、商品高く売りつけたろ?)


(おいおい、言いがかりはよしてくれよ。ウチはそんなアコギな商売してないよ)


そういって店員は離れた。


……まだ言い逃れするか。なら。


「これは独り言なんだが……うわさってやつは怖いもんだよな?事実も確認してないのに勝手に流れて評判を悪くしちまう」


店員を見据えながら、口の端を吊り上げて、悪そうにニヤリと笑う。


「なあ、あんたもそう思うだろ?」


「……15万だ。それ以上はもう無理だ」


まぁ妥当だな。


「よし、買った」


「……まいどあり。ったく。ひよっこがいっぱしの口きくようになりやがって」


「これからも贔屓にするぜ」


店員は額に手をあてながら商品を手渡してきた。


勝ったな。ブラッドオークやジャイアントモスを倒したときより嬉しい。


ほくほく顔で店を出る。


ミシャの顔が少し引きつっていた。





ザインを出て10分ぐらいの草原に来た。


「さて、じゃあ早速だがこれをかけてみろ」


「これは?」


「それはマナグラスって言ってな、とりあえず魔術が使えるか判定するもんだ」


「ふぅん」


興味深そうに一瞥してからミシャはマナグラスをかけた。


「なんか、靄みたいなものは見えるか?」


「う~ん。ごめん見えない……」


だめだったか、魔術が使えれば便利なんだが……


そのまま空を仰ぐ。


どうにかならないかな?チートの神様?


すると、アスールから青い光が出てきて、ミシャの体にまとわりついた。


「うわっ!なんだこれ、光が体の中に……!?痛っ!それになんか熱い!!」


これは……お力を貸してくださるのですか!?チート神様!!


ミシャの小さな体が痛みにのたうちまわる。


すまない弟子よ……今は耐えてくれ。そして無力な師を許しておくれ。


1分ぐらいして痛みがひいてきたようだ。


「ミシャ、大丈夫か?」


ミシャは顔にうっすら汗を浮かべ、荒い呼吸を整えていた。


「なに、今の?凄い痛くて熱かった……」


「今はどうだ?」


「ちょっと体が熱いけど、大丈夫」


そう言ってミシャは立ち上がった。


「あれ?なんか体が軽い?」


「ミシャ、あっちのほうに軽く走ってくれないか?ただし、絶対に全力は出さないで。できるか?」


「う、うん。やってみる」


ミシャは走り始めた。


「わ、わっ……なにこれぇぇえっ!!??」


時速200キロぐらいかな?


そのあと戻ってきたミシャに力の説明をする。


最初は半信半疑だったが、いろいろ試していくうちに納得したようだ。


「これ、本当に凄いね……」


「凄いだろ?ただし、基本的に全力は出すなよ」


「なんで?」


「危ないってのもあるし、あと空気摩擦で服が燃える。本気で動いたら、30秒で全裸だぞ?」


「ぜ、ぜったい全力ださない!!」


全裸を想像してしまったのか、顔を真っ赤にして叫んでいた。


「あと忘れてはいけないことが一つある」


「なに?」


「力を貸してくれたチートの神様に感謝を」


「え?」


「感謝を籠めて『チートの神様!ありがとう!!』って言ってごらん」


「えぇ!?」


「いいから、言ってごらん?」


「ち、ちーとの神様!ありがとう!!」


すると、指輪からまた青い光がミシャを包んだ。


「ま、また!?あれ……でも今度は痛くない……」


「どうやらチート神様が喜んで、また力を貸してくれたみたいだな。ということは……ミシャもう一回これをかけてみな」


マナグラスをミシャに手渡す。


「あ、赤いのと緑色の靄が見える!!」


火と風か。


「ミシャ、これでたぶんおまえにも魔術が使えるようになったはずだ」


「本当に!?」


「ああ、論より実戦だ。まずは古代魔術から教えてやる」


そのまま古代魔術を使わせてみたが、問題なく、魔力も俺レベルだった。


「次は四精魔術だな。ミシャは火系統と風系統が使えるみたいだ」


「火と風……」


「古代魔法と違って、こっちは少しコツがいる。まぁたぶん俺と同じように呪文詠唱も魔導器もいらないと思うが」


そのままミシャの後ろに回りこみ、腕をとって少し離れた岩に向けさせる。


「うわ、わ……」


ミシャが俺の腕の中で暴れる。


「ミシャ、暴れるな。集中しろ。怪我するぞ?」


「わ、わかった……うぅ」


「自分の周りにマナがあるのは感じるか?」


「……うん」


「それじゃあ、そのマナを息を吸い込むように体に取り込んでみな、最初はゆっくり、少しづつ……」


「大丈夫みたい」


「よし、それじゃあ頭の中で火の玉が手からでるイメージを持て」


「できた」


「そのイメージを持ったままで手のひらから魔力を解放しつつ、ファイヤーボールって唱えてみな」


「……『ファイヤーボール』」


ボッツ!


ドンッ!!


「できた…できたよマコト!!」


「ああ、よくやった。ミシャ偉いぞ」


ミシャの頭を撫でてやる


「……うん。ありがとう」


「それじゃあその調子でどんどん行くぞ!!」


「うん!あ、そうだ……ちーとの神様!ありがとう!!」


ここにもう一人チート神信者が生まれた。


そのまま気配の探り方や力加減の仕方などを教えて、魔術にいたっては、複合魔法も使えるようになっていた。


訓練が一通り終わったので木陰で休憩していたのだが。


(疲れて寝ちまったな)


(おこすの?)


(いや、宿までおぶっていくよ)


木に寄り添って眠ってしまったミシャを優しくおんぶし、ゆっくりと歩いていく。


(ワノクニ亭まで帰るか)


(ごー!だね!!)







背中で寝息をたてる可愛い弟子を起こさないように、ゆっくりと帰った。


そろそろ装備をそろえていこうかと思ってます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ