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対ジャイアントモス

風魔法の汎用性に嫉妬します。

地図を確認しつつ、目的の村まで到着した。


所要時間1時間と12分。


300キロを1時間で走る俺ってなに?


適当な村人を捕まえて聞く。


「冒険者ギルドから派遣されたものだが、ジャイアントモスの卵の場所を知っているか?」


「それだったら、あそこにいるきこりのジェフが知ってるぜ」


指差されたほうにいた男に質問する。


「あんたがジェフか?」


「そうだが、なんだ?」


「ジャイアントモスの卵を駆除しに来たんだが、場所はわかるか?」


「おお、あんたがそうか!待ってろ、今案内する」


そのままジェフの後ろに続き、森に入る。


「この獣道を5分ほど進んだところに卵がある。アレとジャイアントモスのせいで仕事がまともにできない。頼む!どうにかしてくれ!!」


「そのために来たんだ。案内ありがとう。あんたは村に戻ってくれ」


ジェフは心配そうにしていたが、一度頷くと元来た道を戻っていった。


周囲に警戒しつつ慎重に進む。




「あれか……」


「みたいだね」


しばらく進むと80センチ大の丸い乳白色のものがいくつも転がっていた。


気配をさぐってみたが、親はいないようだ。


「さてどうするか」


「たまごわるの?」


「そうだな……ちょっと試してみたいことがあるんだ」


以前魔術の実験をしてみたときに、二つの魔法を同時に使うことができた。


ならば、属性魔法を複合して新しい魔法を創ることができるのではないかと考えていた。


今まで試す機会がなかったからちょうどいいだろう。


火と風が渦巻くイメージ。赤と緑が混ざり合い、新しい色を作り出す。


行けそうだ。


左手をかざし、新たな魔法の名前を紡ぐ。


「『フレイムストーム』!!」



ゴウッ!ヒュウゥゥゥ……!!



風が炎を巻き上げ、火力を強めながら炎の竜巻になる。


炎の竜巻はジャイアントモスの卵を巻き込み、炎の渦の中で燃やし続ける。


3分ほどじっくり焼き、魔法を止める。


炎の竜巻が止まると、巻き上げられた卵たちが一斉に落ちてきた。


殻は炭化し、割れ目から見える中身もしっかりウェルダン。卵の駆除は完了のようだ。


「成功だ。やればできるもんだな複合魔法」


「すごいよ!あるじさま!!」


「いやいや、本当にすごいのは、この力をくれたチートの神様だよ」


「けんそんしちゃって!このこの」


「謙遜なんかじゃないよ……ん?」


突然暗くなった。なんだ、雲か?


上を見上げると……


「うそだろ?」


大きな蛾がいた。


20メートルぐらいの。





「あんなにデカイのかよ……」


アスールと遊んでいて接近に気づかなかったようだ。


巨大な羽を羽ばたかせながら、俺の上空を旋回飛行している。


両羽についた黒い斑点が、まるで俺を睨んでいるみたいだ。


「まあ、デカけりゃいいってもんでもない。的がデカけりゃこっちだって当てやすいんだよ」


左手をジャイアントモスに向けて魔法を放つ。


「『ファイヤーボール』!」


ゴッ!


放たれた火の玉はジャイアントモスへ正確に飛んでいき……


「んな!?」


避けられた。ジャイアントモスはそのまま上空100メートルぐらいまで上昇していった。


それから何度か魔法を放ったが、全部避けられてしまった。


意外と機敏な上に、ここまで距離があると見切られてしまう。


「どうしたもんか……うわ!なんだ!?」


ジャイアントモスが上空から液体を振りまき始めた。


ビチャッ!ジュウゥゥ……


強い酸のようだ。


「うわ!うわ!やめろっ……そんなの当たったら服が溶けちまう!!」


(しんぱいするとこ、そこなんだ……)


逃げ惑いながら、対策を練る。


「魔法は避けられる。跳躍して仮に届いたとしても動けなきゃなどうしようもないし。せめて空が飛べれば……」


(なんでとばないの、あるじさま?)


アスールがのん気な声で聞いてくる。


「だからアスール、空を飛ぶ魔法はないんだよ……クソ!」


(ないならつくればいいんだよ。さっきだってそうしたでしょ?)


なるほど。盲点だった。


「じゃあさっそく。風を纏うイメージでもって……」


意識を集中し、マナを体取り込む。


「『エアロイクイップメント』!!」


体を風が包み込み、そのまま上空へ押し上げる。


降り注ぐ強酸液を纏う風で弾き飛ばしながらジャイアントモスの上へ躍り出る。


「いつまでも見下せると思ってんじゃねぇ!『エアカッタァッ』!!」


ジャイアントモスの両羽に空気の刃を叩きつける。


羽を切り落とされたジャイアントモスはそのまま森に墜落した。


(あるじさま。そらもとべるようになったね!)


「あぁ……でも……」


正直高くて怖い。





地上に戻り、墜落したジャイアントモスを確認するが、すでに死んでいた。


額のクリスタルをナイフで剥ぎ取って、念のため死体を燃やす。


「『アースウェーブ』」


大量の土をかけて消火し、そのまま来た道を戻る。


「終わったな……」


「あとは、ぜくとさんにほうこくするだけだね」


「とっとと戻ろうぜ」


「うん!」


村に立ち寄るとジェフが駆け寄ってくる。


なんかブラッドオーク倒したときのグレオを思い出すな。


「大丈夫だったか!?赤い竜巻が見えたり、ジャイアントモスが暴れてるのが村からも見えたぞ!」


「ああ、ちゃんと卵も燃やしてきたし、親も倒したよ。なんだったら確認してきな」


「本当か!?これでやっと仕事ができるし、村も安泰だ!!」


「よかったな」


「これから村長の家に報告しに行くから、あんたもついてこないか?きっと宴を開いてくれるぜ!」


ジーマル村のときと全く同じで思わず笑ってしまった。


「ハハハッ!気持ちは嬉しいんだが、これは仕事だ。感謝することもないさ」


「だが……」


「俺は帰ってギルドに報告しなきゃならない。だから遠慮しておくよ」


「……そうか。あんた名前は?」


「真だ」


「マコトか……覚えた。もしまたこの村に来ることがあったら、必ず村をあげて歓迎するぞ!」


「ありがとう。楽しみにしてる。それじゃ、もう行くよ」


「ああ!気をつけてなマコト!!」


ジェフに手を振って村をあとにする。





ザインまであと半分というところでアスールに話しかけた。


「なあアスール」


「なに、あるじさま?」


「人に感謝されるっていいもんだな……」


「そうだね」


「よっし、元気出た!このまま一気にギルドまで戻るぞ!!」


「ごー!だね!!」







冒険者ってのは意外といいもんだ。




次はザインを舞台に一悶着あります。

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