表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レインキス  作者: 七瀬 夏葵
第一章「始まりの雨」
7/75

Act.6「雨と彼女と買い物と」

ああもう。何だってこんなに顔が熱いんだよ!

アイツに顔見られたら、絶対変に思われる。

ここで警戒されたら部屋になんか来てくれないかもしれない。

そんな思いが頭をよぎる。

正直、どうこうしようなんて気はない。

いや、ちょっとはあるけど、そんな事よりアイツの手料理の方がずっと大事で。

それ以前にこんなところで気付かれたくない。そんな考えが次々によぎった。


「ねー、待ってってば!」


速足で歩く俺に追いつけない彼女を置いて行く形で、俺はそのまま肉売り場に直行した。


早く治まれ、俺の顔!


何とか平静を取り戻そうと、速足に歩きながら深呼吸してみた。

やりにくい事この上なかったが、それでも何とか顔の熱がひいたようだった。


「ねえってば!」


ついに追いついた彼女が俺の後ろからシャツを掴んだ。


「足、速い!!」


「掴むな!シャツ伸びる!!」


口をついて出たのは、そんなアホな台詞だった。


「えー、だってアンタ、止まってくれないんだもん」


口をとがらす彼女に、俺は仕方ないというように大袈裟に溜め息を吐いた。


「悪かったよ。ほら、肉売り場、ここだから」


ショーケースに並んだ肉はどれもグラム単位の量り売りだ。

俺は彼女に問いかけた。


「肉、どれをどのくらい使うんだ?」


「鶏モモ肉。300gくらいかな」


俺はショーケースの向こう側にいる店員に向かって注文をし、肉を受け取った。

ビニールに入れられ、値札の貼られたそれをカゴに放りこむ。


「これでいいか?後は?」


「ん、調味料。アンタんとこ、みりん、酒、醤油、砂糖、味噌はある?」


問われて俺は、部屋にある調味料を思い浮かべた。


「えーと、たしか、砂糖はきれかかってたな」


「じゃ、砂糖買おう。あと、ダシの素材なんだけど、何かある?」


「粉末のやつ」


俺の返答に、彼女はあちゃー、というような表情を浮かべた。


「それじゃダメだね。せめてカツオ節とか買わないと」


という訳で、俺達は調味料のコーナーへとやって来た。

まずは砂糖をカゴに放りこむ。後はダシなんだが・・・・。


「ん?何だそれ?」


彼女が手に持ってる物を見て、俺は尋ねた。

それは、麦茶のような白い幾つかのフィルターパックが入った物だった。


「あ、これ?お徳用だしパック。これ一つでカツオ節も煮干しも色々入ってるの」


彼女いわく、粉末よりきちんとダシがとれるらしい。


「ふぅん。お前、よくそんなの知ってるな」


「まぁね。よく使ってるから」


だろうな。ちなみに俺は見た事も聞いた事も無かったぞ。


「さて。後は卵と魚肉ソーセージかな」


「じゃ、あっちだ」


俺は彼女を連れ、再びスーパー内を歩き出した。


俺達はおひとり様1パック限定77円の卵Mサイズ10個入りをカゴに入れ、最後に魚肉ソーセージをカゴに放りこむとレジへと向かった。

レジは空いていて、俺達はあっさり会計を終えると、せっせとカゴの中身をビニール袋に詰め込んだ。


「よしっと。さ、行こう」


袋詰めを終えた俺は、彼女を連れて店外へ出た。

雨はもう小降りになっていた。


「走るぞ!」


俺は両手に袋を提げ、車へと走り出した。


「あ、待ってよ!」


彼女が俺の後ろから走って来た。

荷物を持っている俺の方が遅そうなのに、いかんせん彼女の方が足が絶望的に遅いようだ。

俺はあっさり車にたどり着き、キーを開けて袋を後部座席に積み込んだ。


「はぁはぁ・・・・。足、速いね」


ちょっと走っただけなのに息を切らしている彼女を見て、俺は皮肉まじりに笑顔で言った。


「お前、自転車はあんなに早いのに足は遅いんだな」


「ひどいなぁ。まあ、事実だからしょうがないけど」


小さく溜め息を吐いて、彼女は助手席に乗り込んだ。

俺も運転席に乗り込み、シートベルトを締めると車を発進させた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ