Act.5「雨のち赤面」
俺の部屋の近所にあるスーパーはハイウェイ近くの大型スーパーだ。
いつもは混み合っているここも、今日は激しい雨のせいか若干駐車場も空いている。
俺は店舗の近くに車を停め、車外へと出た。
「おい、傘!」
そのまま走りだした彼女に、俺は車に積んでいたビニール傘を手に叫んだ。
「いいよ別に。もう濡れてんだし。それより早く行こ!」
そう言うと、彼女はあっという間に店の入り口へと駆けて行った。
「ったく。仕方ねぇな」
俺は軽く溜息を吐くと、彼女を追いかけて走った。
店内に入ると、買い物カゴを手に入口近くの野菜売り場にいる彼女が目に入った。
「あ、ねえねえ、ポテトサラダ好き?」
近づいた俺に、大きな男爵いもの入った袋を手にした彼女が尋ねた。
「ポテトサラダ?ああ、嫌いじゃないけど」
「じゃ、決まり」
彼女はそれをぽいっとかごに放り込んだ。
「あとは玉ねぎっと・・・・」
彼女は目ざとく玉ねぎのコーナーを見つけ、何やら品定めを始めた。
山と積まれた1個35円、3個100円の玉ねぎを、1つ1つ手にとっては、うーん、などと唸っている。その様はまるで熟練の主婦のようだった。
「お前、意外と主婦くさいのな」
俺の言葉に、彼女は得意げに言った。
「ふふん。こう見えてもあたし、小学生の時から家事してんのよ。底値だって研究してんだから」
意外だ。てっきり家事はしないタイプかと思ってた。
「あ、でも料理洗濯だけよ。掃除はすっごい苦手だから」
「ふぅん」
なんとなく納得。大雑把そうだもんな、こいつ。
「うん、これとこれとこれ!」
彼女は目の前の山から玉ねぎ3つを選び出してビニール袋に入れ、カゴに放り込んだ。
「さて、次は三つ葉っと」
彼女はスタスタと三つ葉の置かれたチルドの商品棚へと向かった。そのままポイッとビニールに包まれた三つ葉をカゴに放り込んだ。
「あ、三つ葉大丈夫?」
「ああ、別に平気」
「そう。良かった。じゃあ、なめこは?」
「それも平気。むしろ好物だな」
すると彼女はスタスタと近くにあるキノコ売り場へ歩いていき、ポイッとなめこの袋をカゴに放り込んだ。
「それじゃ、次は肉ね肉!!」
キラキラ目を輝かせて言う彼女に、俺はサッとカゴを奪いとった。
「あ・・・・」
「こういうの、男が持つもんだろ」
すると彼女はポッと頬を染め、小さく呟いた。
「・・・・ありがと」
何その反応!めちゃくちゃ可愛いんですけど!!
「さ、肉コーナーはあっちだ。行くぞ」
直視出来なくて、俺は思わずスタスタと肉コーナーへ歩き出した。
「あ、待ってよ」
慌てて追って来る彼女をよそに、俺はひたすら歩を進めた。
今振り向いたらダメだ。だって俺、今絶対ヤバイ。
顔の熱をごまかすように、俺は必死で彼女の前を歩くのだった。