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レインキス  作者: 七瀬 夏葵
第四章「見えない明日」
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Act.49「再発」

※病気・医療・ドナーに関する描写は現実と異なる場合がございます。

恐れ入りますが、予めご了承の上お読み頂けますよう宜しくお願い致します。

その日俺は、医師から話があるとカンファレンスルームへと呼ばれた。


「――――再発!?」


驚く俺に、医師は頷き、重い声で答えた。


「・・・・ええ。白血病細胞が、再び増殖してしまっているんです」


骨髄移植をしたとしても、それで完治する訳ではない。

投薬治療は続けなければならないし、場合によっては、再発の危険だってある。

移植手術前、医師から聞かされ、恐れていた事が現実になってしまった。

ずっと調子が良かっただけに、俺は動揺を隠せなかった。


「そんな・・・じゃあ、カヨは・・・・」


目の前が、真っ暗になった。


――――最悪の場合も、覚悟しておいて下さい。


医師の言葉が、重く、のしかかった。


その日から、カヨはまた激しい戦いへと逆戻りした。

会うのは無菌室のガラス越し。会話は室内に設置された電話越しでしか出来ない。

手を触れる事はおろか、傍らに行く事さえ許されない。

もどかしく、辛い毎日が続いた。

それでもカヨは、きっと治ると信じて疑わなかった。

――――来年は一緒に桜を見に行くんだから。

それがカヨの口癖だった。

病状は一進一退を繰り返し、カヨは懸命に立ち向かった。

季節は移り過ぎ、やがて年が明けた。

健闘が実り、無菌室を出られたのは、桜が散る頃になってからだった。


「イチ、今年はもう、無理かなぁ?」


点滴を受けながら、カヨはふいに尋ねて来た。


「ん?エゾ山桜か?そうだなぁ。向こうは今が咲き始めってとこだけど・・・・」


「じゃあ、今からでも大丈夫なんだ!?」


ぱぁっと顔を輝かせたカヨに、俺は苦い顔で言った。


「ダメだよ。まだ病気、良くなってないんだから」


「え~、イチのケチ」


ぷぅっと顔を膨らませたカヨに、俺はそっと手を伸ばし、その頭を撫でた。


「ごめんな。良くなったらいつでも連れてってやるから」


「う~、本当?」


「ああ。約束したろ。一緒に行こうって。だから安心して、ゆっくり治せばいいよ」


するとカヨは、安心したように笑った。


「・・・・うん。ありがとう、イチ」



―――――今になって思う。あの時、おぶってでもいいから、連れて行ってやれば良かった、と。

その時の俺は、カヨと桜を見る事が出来なくなるなんて、微塵も考えてなかった。

きっと良くなる。そう、信じていた――――――。



病院を後にした俺は、いつものごとく会社の仕事と子会社のオーナー業務に追われ、部屋に帰りついたのは深夜になってからだった。

なだれ込むようにベッドに入った俺は、すぐに眠りに落ちた。


Piririririri・・・・・・!


枕元に放り出していた携帯電話の音で目が覚めた。


「・・・・誰だよ、こんな時間に」


不機嫌に枕元の携帯電話を引きよせ、ディスプレイを見た。


「―――――――――っ!?」


瞬間、飛び起きて通話ボタンを押した。


「もしもしっ!」


『笹宮さんですか!?』


「はいっ!!」


『こちら富士乃宮市立病院です!杉崎さんの容体が急変しました!すぐにこちらに来て下さい!!』

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