表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レインキス  作者: 七瀬 夏葵
第三章「軋む歯車」
34/75

Act.33「驚愕」

「じじ、次期社長って、お、お兄ちゃんが!?」


驚きの表情でどもる彼女をよそに、俺は極めて冷静に答えた。


「ああ。俺、一応現会長の孫だからね。子会社の一つは俺が権利を持ってるんだ。今はまだ外部に委託してるけどね。あ、これ、社内でもごく一部の役員しか知らない情報だから、他言はしないよう頼むな」


何やら口をぱくぱくさせている彼女を前に、俺はどうしたものかと考えあぐねた。

まさかここまでショックを受けられるとは・・・・。


「なあ、俺が普通の会社員じゃなかったのって、そんなにショック?」


「え!?あ、ショックっていうか、その、ビックリして・・・・」


「俺の事、キライになった?」


「き、キライになんて、そんな事あるわけ・・・・!」


そう言って勢いよく立ち上がった瞬間、彼女の傍らにおいてあったバッグが下に落ち、中身が勢いよくぶちまけられた。


ガシャン!!


音をたて、携帯電話が床へと落ちた。

瞬間、携帯電話の裏についた電池パックの蓋が勢いよく外れてしまった。


「あ・・・・」


彼女は慌ててそれを拾い上げたのだが、そのまま動かなくなってしまった。


「ん?どうした?」


そばに歩み寄った俺の前で、彼女は手に持ったそれを凝視したままボソリと言った。


「お兄ちゃん・・・・」


「ど、どうした?」


何やら重い気配を感じ、戸惑いながら尋ねた俺に、彼女は手にした蓋を俺に突き出し、低い声で言った。


「・・・・これ、何?」


そこには、一枚の小さなプリクラが貼られていた。

幸せそうな顔で肩を組む男女の。

その下には、『2008.3.10 イチ❤カヨ 婚約記念』と書き文字されていて・・・・。


「どういう・・・事かな?」


うつむいたまま発せられた彼女の低い声に、俺はサーッと血の気が引いた。


「これって、お兄ちゃんだよね?どうして?お兄ちゃん、婚約してたの!?」


「それは・・・・・・」


思わず言い淀んだ俺の前で、彼女の瞳が潤んだ。


「あたしに結婚しようって言ってくれたのは、嘘だったの?答えて!お兄ちゃん!!」


「違う!嘘なんかじゃない!」


「だったら何で!?この彼女はどうしたのよ!?」


「死んだんだよ!!」


カラン・・・・!


彼女の手から零れ落ちたプラスチックの蓋が、硬い音を立てた。


「死ん・・だ・・・・?」


「・・・・そうだよ。カヨは、もう一年も前に死んでるんだ」


俺は声を落とし、静かに言った。

出来ればこんな形で話したくはなかったんだが、この状況では仕方がない。


「ちゃんと話すから、まずは座って」


俺は茫然とする彼女を椅子に座らせた。

その隣の椅子を引き、腰かけた俺は彼女の目をじっと見つめて口を開いた。


「アイツ、カヨと出会ったのは、もう5年も前の事だ」


俺は、静かにその時の事を話し出した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ