Act.32「疑惑」
「ふっ・・・・んんっ・・・!!」
彼女の口から漏れる熱い吐息が、俺を甘い痺れへと誘う。
ささやかな力で抵抗を試みた彼女の腕はあっさりと俺に掴まれ、ろくに動く事さえ叶わずにふるふると震えている。
それは俺の情欲を激しく掻き立て、むしろ行為を激しいものへと変える材料になるだけだった。そのまま歯列を割り、強引に中へと滑らせ、彼女のソレと絡ませ、ねっとりと味わう。
シャンパンの芳醇な香りが残る口内を、余すことなく隅々までじっくりと蹂躙していく。
「んっ・・・・ふっ・・・・」
零れる吐息が甘さを増した所で、俺はようやくその唇を解放した。
「はぁ・・はぁ・・・・」
荒く息を吐く彼女に、俺はにっこりと微笑んだ。
「素直に話す気になった?」
「う・・・・・・・」
まだ言い淀む彼女に、俺はとどめの笑顔を向けて言った。
「んー、まだお仕置きが足りない?仕方ないなぁ。それじゃあ次は、その身体にみっちり聞こうとしようか」
彼女の両腕を片手でがっしりと掴み、もう片方の手を衣服にかけようとした俺に、彼女は必死な形相で懇願した。
「わぁあん、ごめんなさい!言います!言いますかもうやめて!さすがに食卓でこれ以上は・・・・」
ちょっと涙目になった彼女を見て、俺はようやく掴んでいた腕を離した。
「冗談だよ。いくら何でもこんなところでこれ以上する訳ないだろ」
にっこり笑うと、恨めしそうな目で睨まれた。
「う~。お兄ちゃんの意地悪!」
「あっはっは。お前が素直に言わないのが悪い。で、俺の大事なお嬢さんは、一体何を考えてたのかな?」
意地悪な目をやめて優しく微笑んでやると、彼女は小さく溜め息を吐き、ようやく決意したように口を開いた。
「・・・・・・ん、あのね、お兄ちゃんとあたしって、何だかちょっと住んでる世界が違うなって思って」
「はぁ!?」
思いっきり素っ頓狂な声を出してしまった。
「何かこう、セレブリティっていうか、庶民な感覚じゃないっていうか。正直、ちょっと、遠いなって・・・・・・」
「何だよそれ!?」
「だ、だって、普通は専属のハウスキーパーさんはおろか、別荘だって持ってないよ!しかも一千万円が安いとか、有り得ないから!!大体、ウチの会社の給料で、しかもお兄ちゃんの年でそんなの、聞いた事もないよ!お兄ちゃん、本当にウチの会社の人なの!?あ、それともまさか、実は裏で危ない仕事してるとか!?」
疑惑に満ちた目を向ける彼女に、俺は至って冷静に答えた。
「別に怪しい仕事はしてないぞ。ただ・・・・」
「ただ?」
「・・・・次期社長として会社経営陣に加わってるだけだ」
「なぁんだ、そうだったんだ、会社経営陣に・・・・て、えぇぇーーーーー!?」
驚愕の声が、ダイニングに響き渡った。
<作者より一言>
最近の一日のユニークアクセスが40件を超え、お気に入り登録が8件となり、読者様への感謝につきません。
いつも読んで下さっている皆様、本当に有難うございます。
この場を借りてお礼申し上げます。
見るに堪えない駄文かもしれませんが、宜しければまたお時間のある時に読みに来て頂けたら幸せに思います。
今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。