表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レインキス  作者: 七瀬 夏葵
第一章「始まりの雨」
3/75

Act.2「再会」

彼女と再会したのは、やっぱり雨の朝だった。


「お?」


愛車のハイエースを走らせる俺の前に、傘片手に爆走する自転車が目に入った。

その主が誰か、後ろ姿からでもばっちりわかる。

俺はクラクションに手を伸ばした。


ププッ!


ふいに響いた音にびっくりして振り向いたのは、やっぱり彼女だった。


「こら、傘さして何爆走してんだよ」


「あんたっ!?最悪ー、急いでるのに変なのに会っちゃったよ」


なんだかむかつく反応を返された。


「変なのって、失礼だなー。せっかく乗せてやろうと思ったのに」


え、ほんと!?


と、何やら打って変って好感触になる彼女。

現金なやつ。

でも、不思議と嫌な感じはしない。


「ほら、貸せよ」


自転車をかっぱらって、さっさと後ろのスペースに積み込んだ。


「どうぞ、お嬢さん」


助手席のドアを開け、エスコートしてみる。


「あ、ありがと・・・・・」


あ、照れてる?

意外な反応。ちょっとびっくりだ。


運転席に乗り込んで、車を発進させた俺は、ちょっとうつむき加減な彼女をちらりと見て声をかけた。


「お前って、意外と可愛いのな」


すると彼女は、顔を真っ赤にしてこっちを睨む。


「な、何言ってんのよ!?ああ、あたしがかか、可愛いだなんて!!」


動揺丸出し。

すごい。こんな反応するとは。予想外だ。


「あはは!ばーか。何動揺してんだよ」


むしろ動揺してるのは俺だよ、と思いつつからかい口調でつっこんだ。


「なっ!?か、からかったのね!!」


ミラー越しに憤慨する彼女を見て、俺はぷっと吹き出す。


「悪い悪い、お前、からかいがいあるからつい」


げらげら笑う俺に、ぷんぷん怒る彼女。ついこの間まで赤の他人だったのに、こんなふうにからかえるなんて。近頃なかった、気安い空気。昔からの知り合いみたいに、楽に話せる。

こんなの、初めてだ。


「悪かったよ。お詫びに今度どっか連れてくから」


口をついて出た誘いの言葉。ドキリとしたのは、彼女じゃなくて多分俺。


「ほんと?絶対だからね!」


YESの返事。瞬間、やっほう!と思ってる俺がいた。

顔には、出てないよな?


「ほんとだよ。日曜あたり、どうだ?」


さらりと続ける内側で、跳ねる心臓。


「ん、日曜?いいよ、別に」


よっしゃ!

心の中でガッツポーズ!


「じゃ、日曜、10時に寮の駐車場でどうだ?」


「了解。遅れないでよね」


遅れるわけないだろう。思いながら適当に相槌を打つ。


早く来い!日曜!


いつもより切実に思う、雨の月曜日だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ