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レインキス  作者: 七瀬 夏葵
第二章「加速する想い」
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Act.13「梅雨明けの曇り」

あれからもう二週間。

会社の喫煙所で、俺は自販機で買ったコーヒーを前に、窓の外を眺めていた。

すっかり梅雨明けした青い夏の空を見ながら、俺は大きな溜め息を吐いた。

その理由はただ一つ。彼女から電話が来ない。


「なんでだよ?」


使い方がわからない、なんてベタな事はないと思う。

きちんと使い方はレクチャーしたし、説明書も渡した。

あの携帯電話のアドレス帳はもう全部消去したけど、俺の持ってる仕事用の携帯電話の番号と、俺の部屋の電話番号はきちんと登録し直しておいた。

登録されたアドレス帳機能を使えば、難なく俺に電話がかけられる筈であり・・・・。


まさかとは思うが、俺に電話したくないとか?


彼女に何かあった、というのは考えにくい。

何故なら俺と彼女は仮にも同じ会社、それも同じ部署の人間同士だ。

実際に仕事をしている棟が違うとはいえ、彼女の身に何かあったなら、すぐに耳に入って来る事だろう。

それを考えると、電話がかかって来ない理由は、やっぱり単純に彼女に電話をかける気がないから、としか思えない訳で。


「まずったかなぁ」


思わず呟いた時だった。


「何がまずったんだ?」


「うわぁ!!」


背後から声をかけられ、俺は思わずびっくりして振り返った。


「や、山田さん!おどかさないで下さいよ~」


「はは。悪い悪い。そんなに驚くとは思わなくてな」


そう言って、声をかけた主、山田さんは豪快に笑った。

山田さんは俺の職場の先輩だ。

男らしいガッシリした体格もさることながら、面倒見のよさで他の同僚からも慕われている中堅社員である。


「で、お前、何昼間っから空見て溜め息吐いてんだ?何かあったのか?」


「いえ、その・・・・」


俺が口ごもると、山田さんはガシッと俺の肩をつかみ、こそこそと耳にささやいた。


「・・・・女か?」


その言葉に、俺はカーッと顔が熱くなるのを感じた。


「やや、山田さん!!」


慌てて腕を振りほどいた俺に、山田さんは笑いながら言った。


「はは。図星か。お前にしちゃ珍しい。しかし仕事中に女の事を考えるのはイカンぞ。今は仕事に集中しろ、な」


「・・・・はい。すいません」


「おいおい、そんなに落ち込むなよ。よし、今日は仕事終わったら久しぶりに飲みに行こう!俺がおごってやる。な!」


バンバン肩を叩きながら言う山田さんに、俺は思わず顔をほころばせ頷いた。

そうだ。この際山田さんに相談してみるのもいいかもしれない。

そう思い、幾分軽くなった心で、俺は再び仕事場へと戻ったのだった。

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