その生き物は
雨が降っている。
道行くスーツ姿の男性は傘をさしながら家に向かい、手を繋ぐカップルがコンビニに駆け込み、タクシーを待つ老婆は道行く車を見ている。
公園でその姿を見ていた僕は、雨に打たれていた。
今日もうまくいかなかった、明日も明後日も、この先ずっと・・・そんなことが頭の中をぐるぐると駆け巡る。
「うらやましい」
横目で見ていた、人達が日常を過ごす姿。
なんでそんなことができる?なんで僕にはできない。
友達がいないから?うまく話せないから?
格好良くも、可愛くもないから?
そんなこと誰が決めた?
澱んだ感情が止められない
「だれか・・・たすてけよ」
その声は届かない。
日常を過ごす人達は幸せそうに見えるのに、温かそうに見えるのに誰にも気づいてもらえない。
気づいても目を逸らされる。
その度に心を抉られ、締め付けられていく。
いっそのこと眠ってしまえば楽なのに、眠ることさえできない。
冷たい雨が隙間から降ってきて僕の身体を冷やしていき、空腹は限界を超えて腹の音が大きく鳴ったのはいつのことだったか。
心許ないびしょ濡れの壁は剥がれていく。
「もう疲れた・・・」
眠れなかった瞼が閉じようとしている。
外で寝るなんて何年ぶり、いら初めてかもと思っていると、ピチャピチャと水を弾きながら近づく音が聞こえる。
どこかの物好きか?幻聴か?
はたまた救いの手か?
僕は何度も裏切られて、今日もダメだと諦めていた。
明日も明後日もダメならこの世の不適合者なのかもと思っていた。
いつの間にかやんだ雨に、望みをかけ閉じかけていた瞼を微かに開き、力の限り振り絞って声を出した。
最後に見えた空には虹がかかっていたが、それは救いの手か、天使の導きかわからない。
あとは気づいてくれるか運に任せようと思う。
僕はきっと運はいいほうなんだ。
だって叫ぶことはできたんだ
『わん』と。




