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第4話 和を背負うことだ

 

 新太が上着を脱ぎ捨てた。

 背中から陽炎のような熱気が沸き立つ。


 大きく息を吸う。

 そして腹の底から声を張り上げた。

 発する言葉は、この世界の熱気となった。


 ——祭だ、祭だ


「わっしょい、わっしょい。」


 ——背中に花笠はながさ、胸には腹掛はらがけ


「わっしょい、わっしょい。」


 ——向こう鉢巻はちまき、揃いの法被はっぴ


「わっしょい、わっしょい。」


 ——神輿みこしだ、神輿みこし


「わっしょい、わっしょい。」



固有ユニークスキル【お祭りわっしょい】発動』


『スキル効果——【幻影神輿顕現みこしだ わっしょい】』


 荷台みこしの輪郭がぼやけ、淡青の神輿みこしが上から被さるように現れた。

 濃淡があって、角と金具の縁が白く眩しい。

 反った屋根の上の鳳凰は、わずかに羽ばたいていた。

 担ぎ手たちが、太く、たくましい担ぎ棒と一体化する。


「わっしょい!わっしょい!」


 新太たちの後ろに、次々と新たな幻影の神輿みこしと、担ぎ手たちが現れる。


 三基目、四基目と掛け声(わっしょい)と共に増えていった。


「わっしょい!わっしょい!」


 その数十数基。


「そいや——!」


 新太が台の上で雄たけびを上げる。

 その声を合図に、新太の乗る神輿みこしが、先陣を切ってゴブリンの群れに突っ込む。

 他の神輿みこしも、後を追うように動き出した。


「クギャーッ!?」


 最初にぶつかったゴブリンたちが、あっけなく吹き飛ばされた。

 神輿みこしの勢いは留まることを知らない。


「わっしょい!わっしょい!」


 そのまま、四方八方、縦横無尽に、暴れまわった。


 淡青の月の下、

 舞い散る花吹雪のように、宙を舞うゴブリンたち。


「わっしょい!わっしょい!」


 もはやゴブリンたちは、哀れに逃げ惑う、

 ただの小さな小人に過ぎなかった。


 一匹のゴブリンが、セレアのそばまで転がってきた。

 目が合う。


「クギャーッ……!」


 セレアは身構えるが、ゴブリンは襲ってこない。

 そのまま這うように起き上がり、怯えながら森の奥へと消えていった。


 先ほどまでの猛々しい声の波とは打って変わり、

 弱弱しいうめき声たちが、どんどん遠くなっていく。


 幻影の神輿みこしとその担ぎ手たちは次々と消えていった。

 淡青の月の下、残されたのは、新太と村人たちだけだった。


「さっきまでの体にみなぎる力は一体?」

「俺たちが、ゴブリンを退治したのか?」

「意識が、途中から・・何が何だか・・」


 我に返った村人たちが口々に語り出す。


「これが——まつり、なの?」


 セレアは呆然とつぶやいた。

 助かった安堵よりも、目の前の圧倒的な熱気に腰を抜かしていた。


「これが祭りだ」


 近寄ってきた新太がセレアに手を差し出す。


「わっしょいって・・・一体?」


「”和を背負うこと”だ」


「何か顕現していましたが?」


神輿みこしだ。祭りには神輿みこしだ」


「スキル効果ですか…?えっと…とりあえず鑑定させて下さい」


 セレアは、差し出された新太の手を握りながら、鑑定スキルを発動した。


『鑑定:成功』

『対象:風祭かざまつり 新太あらた<祭人>』

固有ユニークスキル【お祭りわっしょい】』


「いや・・・だから、わっしょいって一体、何?」


 セレアは訳が分からず、混乱していた。

 だが、続きを見た瞬間に言葉を失った。


『脅威判定——厄災級』



※本話の詠唱は、北原白秋「お祭(お祭り)」の詞を用いています。

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