60話 鷲獅子
事件から2ヶ月が経過した。
今日は影魔術研究会の全員でとある任務に向かっていた。
その依頼を受けたのは、この1週間前である。
俺はニナについての報告や、サークル引き継ぎの件で理事長室にいた。
「レオリオスさん、突然なのですが…」
「え!?依頼ですか!?」
「はい…それもかなり厄介な…」
え〜、マジか。
俺はあの戦い以降、活動を控えていた。
が、遂に依頼が来てしまった。
「それで…依頼の内容は…?」
「その…鷲獅子の討伐です」
…ん?
…鷲獅子?
………。
…え!?グリフォン!?
「鷲獅子って…あの守護獣って言われてる!?」
「え?あ、それは前世の知識でしょうか?」
え?違うの?
「たしかに鷲獅子は守護獣と崇められた時期もありました。が、大戦後、彼らは凶暴化してしまい、今は単体で危険度Sの魔獣種です」
…マジか。
復帰早々、この難易度…
「もちろん、断っていただいても…」
「いや、やります」
「え!?」
野放しにはできないからな。
…しょうがない。
1期生連れて行ってくるか…
そして今に至る。
「先生?鷲獅子って冬眠する種族じゃないんでしたっけ?」
「調べたら、冬眠できなかった個体らしい」
「え〜…じゃあかなり凶暴じゃん」
「俺ら…大丈夫なのか?」
「大丈夫でしょ!こっちには神級使いが2人もいるんだから!」
「まあ…私は結界と治癒だけどね…」
鷲獅子は、ドラマルトのすぐ近くの山に出没しているらしい。
俺は現地に向かいながら、調べてきた鷲獅子の情報を確認していた。
鷲獅子。
頭は鷲で翼を生やし、胴体は獅子の魔獣種。
空からの奇襲を得意としているが、地上でも十分危険。
胴体には光魔術、口からは火魔術を放つ。
さらに、目に異能眼の一つである「予言眼」をもち、これにより遠距離の攻撃はほぼ避けるという、かなりの強敵だ。
「先生。聞こえました」
俺が情報を確認していると、フェイがそういった。
どうやら鷲獅子の声が聞こえたようだ。
息を潜めながら捜索していると、
『先生!いました!』
ラーラから念話が聞こえてきた。
俺は急いでラーラの元に向かった。
「どこだ?」
「あそこです」
ラーラが指差す方向を見ると、そこには丸まっているなにかがいた。
間違いない。
鷲獅子だ。
だが、何をしているんだ?
寝ているのかと思ったが、何かもぞもぞしている。
「ん?」
「せ…先生…助けて」
なんと、鷲獅子の懐にフェイがいた。
そして…抱きつかれていた。
『『フェイが鷲獅子のおもちゃにされてる!?』』
念話でラーラとハモった。
いや思わんやん。
獣種の研究してるとはいえ、寝ぼけた鷲獅子に捕まってるなんて。
クワッ!
鷲獅子はあくびをした。
そして、その勢いで口の中に火が灯った。
あ、ヤバい。
このままだとフェイ…死ぬよね?
「ギャー!!先生!助けてーーー!!」
流石にまずいか。
俺は立ち上がり、鷲獅子に魔術を放った。
「光襲の矢・雨!」
ドドドドドッ!
光の矢は鷲獅子に命中した。
が、刺さらずそのまま弾かれた。
(((え…硬っ…)))
俺とフェイとラーラ。
この場にいた全員がそう思った。
「…ッ!!」
そして…鷲獅子が目覚めた。
フェイを開放はしてくれたが…
「…怒ってる」
そりゃそうか。
眠りを邪魔されたんだからな…
「ガァァァァ!!!」
鳥の頭からは想像もできない獣のような声が響く。
「やるしかないか!」
こうして、戦闘が始まった。
「レオ!?大丈夫!?」
「ニ…カナル!結界を張ってくれ!」
「どれくらいの!?」
「半径100メートル!」
「分かった!」
鷲獅子との戦闘では結界が必須だった。
奴は上空400メートルから突っ込んでくることがある。
それを防ぐためにも、空の領域を縮めなくてはならないのだ。
「吸魔結界!」
ニナは当たった魔術を吸収する結界を展開した。
ちなみに、俺がニナのことを「カナル」と呼んだのは、みんなの前で本名を言えないからである。
「よし!俺がやつの動きを止める!合図をしたら、一斉攻撃だ!」
「先生!私を揺動に使ってください!」
「…わかった!揺動はエルに任せる!」
「俺は土魔術で動きを妨害します」
「わかった!じゃあモラはそれでいこう。フェイは召喚術で応戦しえくれ!」
「了解です」
「ラーラとライナは魔力溜めとけ!」
「「はい!」」
俺は全員に指示出しをし、鷲獅子に向かっていった。
鷲獅子は羽を動かし飛んでいた。
「さて…久しぶりに使うか」
そう言って俺は足に魔力を込めた。
そして次の瞬間、俺は浮いた。
久しぶりの飛行魔術である。
「閃光移動!」
さらに俺はその勢いのまま、鷲獅子の後ろに回り込んだ。
「フッ!」
「ガッ!?」
そして俺は剣をめいいっぱい振り下ろし、鷲獅子に当てた。
鷲獅子はその衝撃のまま、地面に叩きつけられた。
「影の領域!」
俺は攻撃を止めない。
俺は着陸後に分身を出し、攻撃を仕掛ける。
「ガァァァ!」
鷲獅子は再び飛び立とうとした。
「モラ!フェイ!」
「はい!」
「言われなくても!」
それをモラの土壁と、フェイの召喚物が邪魔をする。
「ニャハ!こっちこっち!」
さらに、俺に向けられた視線を妨げるように、エルが魔術と俊足で翻弄する。
鷲獅子はエルの翻弄、フェイとモラの妨害、さらに俺の分身による猛攻で身動きが取れずにいた。
「今だ!一斉攻撃!」
その合図とともに、全員が鷲獅子から少し距離を置く。
鷲獅子は怯んでいて、すぐに動けずにいた。
「撃て!」
「流星群!」
「猫尾火!」
「雨渦!」
「混合爆破!」
「影竜巻!」
「異属の双龍!」
結界を張っていたニナ以外のすべてのメンバーの攻撃が直撃した。
辺りはその衝撃で土埃が立ち、何も見えなくなった。
それがはれたのは10秒後だった。
「…ッ…ッ……」
鷲獅子は生きていた。
が、もうすでに戦闘不能だ。
だが、こいつは再生力もヤバいと聞く。
早くトドメを刺さなくては…
「みんなー!結界から出てー!」
すると、結界の外からニナの声が聞こえた。
「跳ね返すから!」
「「「「「「え!?」」」」」」
その言葉を聞いた瞬間、俺達は急いで結界の壁に向かい、ニナに出してもらった。
そういえば、この結界にはもう1つ性質が合ったのだ。
この結界に吸収された魔力がもし、術者に還元できない場合…
その魔力は数秒後、結界内に返ってくるのだ。
「逃げろー!!」
ドーーーン!
その瞬間、結界の中でものすごい爆発が起きた。
もし少しでも出るのが遅れていたら、今頃木っ端微塵である。
俺達はニナの後ろに隠れ、衝撃から守ってもらった。
そのお陰で、全員無事だった。
鷲獅子というと…
影も形もなかった…
「戦利品は二の次」と言われていたので良かったが…
少しもったいないことをしたなと、内心思った。
帰り道。
日はもう暮れ始め、空が橙色に染まる夕暮れ時だった。
「そういえば、なんで今回の依頼はみんなで行くことにしたんですか?」
エルにそう聞かれた。
「まあ…あれだ…嫌なこと言うけど、これで俺とカナルはほぼ引退だからな」
「あ…そっか。もうそんな季節なんだ…」
それを聞き、みんなの顔が少し暗くなってしまった。
「そんな顔するな。これも俺なりの思い出作りなんだ。思い出くらい、笑ったものであってくれ」
「…フッ!そうですね!」
「僕らも暇ができたら、エイサールに行きますね!」
「あぁ、待ってる!俺も暇なときは、また顔出すからな…」
「レオ?泣いてる?」
「な!?泣いてないが!?」
「「「「「「アハハハ!!…」」」」」」
こうして、一期生全員で行った依頼は終了した。
俺とニナがこの学校を去るまであと1ヶ月ほど。
国を出るのも、もうまもなくだろう。
「最後に先生?」
「ん?なんだ?」
「サインください!」
そう言って、エルとラーラが用紙を出してきた。
「先生、書いてくれるって言って…いつまでも書いてくれないんだもん!」
「あ…忘れてた…」
「「え〜!?」」
「「「「アハハハ!!」」」」
そんな笑い話をしながら、俺達は学校に帰った。
次回の更新は3/14(土)です




