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影を纏う転生者 〜平凡な高校生の異世界人生録〜  作者: 仮想猫
影纏の術師編 〜ドラマルト〜
64/65

60話 鷲獅子

事件から2ヶ月が経過した。

今日は影魔術研究会の全員でとある任務に向かっていた。

その依頼を受けたのは、この1週間前である。

俺はニナについての報告や、サークル引き継ぎの件で理事長室にいた。

「レオリオスさん、突然なのですが…」

「え!?依頼ですか!?」

「はい…それもかなり厄介な…」

え〜、マジか。

俺はあの戦い以降、活動を控えていた。

が、遂に依頼が来てしまった。

「それで…依頼の内容は…?」


「その…鷲獅子グリフォンの討伐です」


…ん?

…鷲獅子?

………。

…え!?グリフォン!?

「鷲獅子って…あの守護獣って言われてる!?」

「え?あ、それは前世の知識でしょうか?」

え?違うの?

「たしかに鷲獅子は守護獣と崇められた時期もありました。が、大戦後、彼らは凶暴化してしまい、今は単体で危険度Sの魔獣種です」

…マジか。

復帰早々、この難易度…

「もちろん、断っていただいても…」

「いや、やります」

「え!?」

野放しにはできないからな。

…しょうがない。

1期生連れて行ってくるか…

そして今に至る。






「先生?鷲獅子って冬眠する種族じゃないんでしたっけ?」

「調べたら、冬眠できなかった個体らしい」

「え〜…じゃあかなり凶暴じゃん」

「俺ら…大丈夫なのか?」

「大丈夫でしょ!こっちには神級使いが2人もいるんだから!」

「まあ…私は結界と治癒だけどね…」

鷲獅子は、ドラマルトのすぐ近くの山に出没しているらしい。

俺は現地に向かいながら、調べてきた鷲獅子の情報を確認していた。


鷲獅子。

頭は鷲で翼を生やし、胴体は獅子の魔獣種。

空からの奇襲を得意としているが、地上でも十分危険。

胴体には光魔術、口からは火魔術を放つ。

さらに、目に異能眼の一つである「予言眼」をもち、これにより遠距離の攻撃はほぼ避けるという、かなりの強敵だ。


「先生。聞こえました」


俺が情報を確認していると、フェイがそういった。

どうやら鷲獅子の声が聞こえたようだ。

息を潜めながら捜索していると、


『先生!いました!』


ラーラから念話が聞こえてきた。

俺は急いでラーラの元に向かった。

「どこだ?」

「あそこです」

ラーラが指差す方向を見ると、そこには丸まっているなにかがいた。

間違いない。

鷲獅子だ。

だが、何をしているんだ?

寝ているのかと思ったが、何かもぞもぞしている。


「ん?」


「せ…先生…助けて」


なんと、鷲獅子の懐にフェイがいた。

そして…抱きつかれていた。


『『フェイが鷲獅子のおもちゃにされてる!?』』


念話でラーラとハモった。

いや思わんやん。

獣種の研究してるとはいえ、寝ぼけた鷲獅子に捕まってるなんて。


クワッ!


鷲獅子はあくびをした。

そして、その勢いで口の中に火が灯った。

あ、ヤバい。

このままだとフェイ…死ぬよね?


「ギャー!!先生!助けてーーー!!」


流石にまずいか。

俺は立ち上がり、鷲獅子に魔術を放った。


「光襲の矢・雨!」


ドドドドドッ!


光の矢は鷲獅子に命中した。

が、刺さらずそのまま弾かれた。


(((え…硬っ…)))


俺とフェイとラーラ。

この場にいた全員がそう思った。

「…ッ!!」

そして…鷲獅子が目覚めた。

フェイを開放はしてくれたが…


「…怒ってる」


そりゃそうか。

眠りを邪魔されたんだからな…

「ガァァァァ!!!」

鳥の頭からは想像もできない獣のような声が響く。

「やるしかないか!」

こうして、戦闘が始まった。






「レオ!?大丈夫!?」

「ニ…カナル!結界を張ってくれ!」

「どれくらいの!?」

「半径100メートル!」

「分かった!」

鷲獅子との戦闘では結界が必須だった。

奴は上空400メートルから突っ込んでくることがある。

それを防ぐためにも、空の領域を縮めなくてはならないのだ。


吸魔結界インヘイルウォール!」


ニナは当たった魔術を吸収する結界を展開した。

ちなみに、俺がニナのことを「カナル」と呼んだのは、みんなの前で本名を言えないからである。

「よし!俺がやつの動きを止める!合図をしたら、一斉攻撃だ!」

「先生!私を揺動に使ってください!」

「…わかった!揺動はエルに任せる!」

「俺は土魔術で動きを妨害します」

「わかった!じゃあモラはそれでいこう。フェイは召喚術で応戦しえくれ!」

「了解です」

「ラーラとライナは魔力溜めとけ!」

「「はい!」」

俺は全員に指示出しをし、鷲獅子に向かっていった。

鷲獅子は羽を動かし飛んでいた。

「さて…久しぶりに使うか」

そう言って俺は足に魔力を込めた。

そして次の瞬間、俺は浮いた。

久しぶりの飛行魔術である。


「閃光移動!」


さらに俺はその勢いのまま、鷲獅子の後ろに回り込んだ。


「フッ!」


「ガッ!?」


そして俺は剣をめいいっぱい振り下ろし、鷲獅子に当てた。

鷲獅子はその衝撃のまま、地面に叩きつけられた。


「影の領域!」


俺は攻撃を止めない。

俺は着陸後に分身を出し、攻撃を仕掛ける。

「ガァァァ!」

鷲獅子は再び飛び立とうとした。

「モラ!フェイ!」

「はい!」

「言われなくても!」

それをモラの土壁と、フェイの召喚物が邪魔をする。

「ニャハ!こっちこっち!」

さらに、俺に向けられた視線を妨げるように、エルが魔術と俊足で翻弄する。

鷲獅子はエルの翻弄、フェイとモラの妨害、さらに俺の分身による猛攻で身動きが取れずにいた。

「今だ!一斉攻撃!」

その合図とともに、全員が鷲獅子から少し距離を置く。

鷲獅子は怯んでいて、すぐに動けずにいた。


「撃て!」


流星群メテオラッシュ!」


猫尾火ねこおび!」


雨渦ストームボルテックス!」


混合爆破ミクストバースト!」


影竜巻シャドートルネード!」


「異属の双龍!」


結界を張っていたニナ以外のすべてのメンバーの攻撃が直撃した。

辺りはその衝撃で土埃が立ち、何も見えなくなった。

それがはれたのは10秒後だった。

「…ッ…ッ……」

鷲獅子は生きていた。

が、もうすでに戦闘不能だ。

だが、こいつは再生力もヤバいと聞く。

早くトドメを刺さなくては…

「みんなー!結界から出てー!」

すると、結界の外からニナの声が聞こえた。



「跳ね返すから!」



「「「「「「え!?」」」」」」


その言葉を聞いた瞬間、俺達は急いで結界の壁に向かい、ニナに出してもらった。

そういえば、この結界にはもう1つ性質が合ったのだ。

この結界に吸収された魔力がもし、術者に還元できない場合…

その魔力は数秒後、結界内に返ってくるのだ。



「逃げろー!!」



ドーーーン!


その瞬間、結界の中でものすごい爆発が起きた。

もし少しでも出るのが遅れていたら、今頃木っ端微塵である。

俺達はニナの後ろに隠れ、衝撃から守ってもらった。

そのお陰で、全員無事だった。

鷲獅子というと…

影も形もなかった…

「戦利品は二の次」と言われていたので良かったが…

少しもったいないことをしたなと、内心思った。






帰り道。

日はもう暮れ始め、空が橙色に染まる夕暮れ時だった。

「そういえば、なんで今回の依頼はみんなで行くことにしたんですか?」

エルにそう聞かれた。

「まあ…あれだ…嫌なこと言うけど、これで俺とカナルはほぼ引退だからな」

「あ…そっか。もうそんな季節なんだ…」

それを聞き、みんなの顔が少し暗くなってしまった。

「そんな顔するな。これも俺なりの思い出作りなんだ。思い出くらい、笑ったものであってくれ」

「…フッ!そうですね!」

「僕らも暇ができたら、エイサールに行きますね!」

「あぁ、待ってる!俺も暇なときは、また顔出すからな…」

「レオ?泣いてる?」

「な!?泣いてないが!?」

「「「「「「アハハハ!!…」」」」」」

こうして、一期生全員で行った依頼は終了した。

俺とニナがこの学校を去るまであと1ヶ月ほど。

国を出るのも、もうまもなくだろう。

「最後に先生?」

「ん?なんだ?」

「サインください!」

そう言って、エルとラーラが用紙を出してきた。

「先生、書いてくれるって言って…いつまでも書いてくれないんだもん!」

「あ…忘れてた…」

「「え〜!?」」

「「「「アハハハ!!」」」」

そんな笑い話をしながら、俺達は学校に帰った。


次回の更新は3/14(土)です

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