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影を纏う転生者 〜平凡な高校生の異世界人生録〜  作者: 仮想猫
影纏の術師編 〜ドラマルト〜
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57話 再会に勝利と告白を

保護生徒エリアの一部屋。

そこはソオとの戦いで、中は多少散らかっていた。

窓ガラスは割れ、外の火と月明かりが部屋を照らす。

俺はそこにいた。

そして、目の前には一人の女性がいる。

それは俺の弟子であり、仲間であり、家族であった。

ニナだ。

ニナの顔は昔のままだった。

背は伸び、多少大人びていたが、それでも彼女はニナだった。


「ニナ…!?」


俺が話しかけようとした瞬間、ニナは俺に抱きついてきた。

そして、



「ごめん!…私…ずっと会いたかった…話したかった…けど……怖かった…だから…ずっと隠してた…ごめん…ごめん…」



ニナは泣きながらそう言った。

…よっぽど辛かったのだろう。

抱きつく力は強く、言葉には重みがあり、声は震えていた。

「…明かせなかったんだろ?しょうがない…俺の方こそ、気づくのが遅くなった…ごめんな」

「…ズッ…ズズッ…」

ニナは俺の胸に顔を潜り込ませて泣き続ける。

涙が俺のシャツを通り抜け、肌にまで到達するくらいまで。

そしてそのまま時は流れる。

なにか話すわけでもなく、ただ時が流れる。

沈黙が消えたのは、それから2分後のことだった。


「…レオ…私…ずっと言えなかったことがあるの…」


言えなかったこと…

「…なんだ?教えてくれ……」

そう言うと、ニナは顔を上げ、俺を見上げた。

「…ずっと…レオのことが…」

ニナの顔は少し赤かった。

そして、言葉を続ける。



「…好きだった……」



………。

俺は驚くよりも前に、ある日のことを思い出した。

それは、ファジサイトからジークバルトに向かう道中。

そこでやった服従ゲームの時のことだ。


『ニナとかは、どうなんですか?』


ナナ師匠が俺に向けた質問だ。

俺の回答の後、ナナ師匠は微笑み、何かに安心したような顔をしていた。


…こういうことだったのか。



「ずっと…一緒に…いてほしい……」



…俺は少し考えた。

ニナが嫌いな訳では無い。

むしろ好きに近いのは確かだ。

けれど俺は、前世のことを思い出した。

前世の俺には彼女がいた。

その人を今でも思っているというわけではない。

前に、俺はレオリオスとして生きていくと決めたように、これに関しても「前世は前世で、今は今」と思っている。

不安だったのは、別れることだ。


また突然離れてしまうのでは…


俺はこういった生き方をしていいのか…と。


…それがどうした。

可能性なんて関係ない。

問題は「今どうしたい?」かだ。

俺は…ニナとまた一緒に…

暮らしたい……。



「…わかった」



「……っ!?」


それを聞いた途端、ニナは顔を赤くして、再び泣いてしまった。

俺はそんなニナの頭を軽く撫でた。

そして、


「さて…まだ終わりじゃないな」


俺は立ち上がった。

そう、まだ終わりじゃない。

最後の後始末をしなくては…


「今から火を消す」


「…レオ?」


ニナは不安そうな顔をしていた。

そりゃそうか。

俺がもう体力ギリギリなのは、一番近くで戦いを見ていたニナが一番知っている。

「大丈夫。ニナはそこで見ててくれ」

そう言って俺は割れた窓から外を見た。

下は火の海となり、建物も燃えている。

「フーーーー……」

俺は深呼吸をして、杖を構える。


「滲み出す混濁の…!」


…やめておこう。

これを詠唱にしてしまうと、魔術じゃなく棺が出てきそうだ。

「…ッ!」

俺は再び杖を構えて、イメージした。

そして、



禁忌の結界(パンドラボックス)!!」



俺は学校の敷地を覆い尽くす大きさの結界を展開した。

そしてその結界を宙に浮かせた。

「吸い取り…閉じ込めよ!」

すると、周囲の火は宙に浮き、結界改め、箱へと吸われていく。


禁忌の結界。

俺がこの学校での研究で目標としていた禁術。

構造の難しさと危険性から、再現されてこなかった魔術だ。

この学校生活を通して、俺はこの魔術の大方の構造を解き明かせた。

が、その内容はあまりにも複雑で、完璧な再現はできないと断定した。

この魔術の本来の特徴としては「あらゆるものを封じ込める結界」というものだ。

範囲内のものすべてを結界で囲い、半永久的に閉じ込める。

封印後の結界は小さくなり、術者が保管する。

原本はそんな感じだ。

しかし、これには大きな問題があった。

現在の結界魔術は、結界に魔力を流し続けるのに対し、これは魔力を結晶化させ結界にするというものだったのだ。

現在の結界は、自身のイメージを魔力でくっつけて結界を作るが、これにより、結界内の特性をあらかじめ構築する必要ができたのだ。

これが、この結界を難しくする最大の理由だった。

俺はそれを知り、特性の事前設定をひたすら研究し、開発した。

しかし、結晶化した結界はあまりにも脆く、結界内のものが持つ魔力や質量に耐えきれず、小さくなる段階で崩壊した。

さらに、結界を小さくする段階で、中のものを縮める必要があった。


これらの条件をクリアすべく、試行錯誤の結果たどり着いたのは、「対象の限定化」だった。

封印する対象を絞ることで、その分結界の特性設定を簡単にすることができた。

それによってできた余裕を「結界強度」と「結界内のものも縮小」に回した。

これにより、遂に「禁忌の結界」は完成した。


そして現在、俺は封印対象を「魔術」に絞り「禁忌の結界」を発動した。

結果は…成功だ。

結界はあたしの炎と何人かの分身のみを吸い込んでいった。

吸い込まれた分身よ…すまん…

そして、全ての炎を吸い込んだのを確認した後、


「封印!」


結界は小さくなり、俺の手のひらに乗った。

これで、ほんとうの意味での…

「終わった…」


ドサッ!


「レ、レオ!?」

俺は安堵と魔力切れで倒れてしまった。

意識はある。

しかし、脱力してしまい立ち上がれなかった。


『レオ〜!どこですか〜!』


遠くから念話が聞こえた。

この声は間違いない。

ナナ師匠だ。


「ここだった気がします!」


その声とともに、ニナの部屋の扉が開く。

その瞬間、俺はナナ師匠と目があった。

「だ、大丈夫ですか!?レ…オ…」

そして、ナナ師匠の視線は俺の斜め上に向けられた。

俺もそちらを向く。

見るとそこにはニナがいた。

…いや、俺はニナの顎しか見えなかった。

どうやら俺は、俺を心配したニナに膝枕されているようだ。

そして、涙目になったナナ師匠が言葉を発する。


「ニナ…なんですか…?」


「…はい…お久しぶりです。…ナナさ…ッ!?」


ニナが話し終わる前に、ナナ師匠は俺諸共ニナに抱きついた。


「ニナが無事で良かったです…!ずっと…会いたかったです!2人とも…無事で…良かったです!」


ナナ師匠は過去にないくらい大泣きしていた。

「なんで…ナナ師匠が一番泣いてるんですか」

「だって…ズズッ!…嬉しくて…つい…」

「「…フッハハハ……」」

俺とニナは笑った。


みんなの再会に。


この事件の終わりに。






「影纏ーー!」

「リュー…か…」

封印が終わり、俺達はみんなが避難していた室内運動場に向かった。

その途中でリューと遭遇した。

「お前…ボロボロすぎだろ…」

あのあと、俺は脱力状態が治らず、ニナとナナ師匠の肩を借りて歩いてきていた。

「敵の首位と戦ってたんだ…しょうがねーだろ」


「んで…勝ったのか?」


そう言いながら、リューは拳を突き出した。

…分かってんなら聞くなよ。


「言われるまでも」


俺はそれに応え、グータッチをした。

「他のみんなは?」

「全員無事だ。お前らのおかげでな」

「俺らの?」

「あぁ!影魔術研究会の奴らとお前の分身がいち早く行動してくれたおかげで、逃げ遅れゼロだったよ」

そうか…あいつら…

「分かった…あいつらの所に案内してくれないか?」

「構わないさ。そこの嬢ちゃん、俺が持ってやる」

「はい、リューさん」

「…そういえば影纏。この嬢ちゃんは誰だ?」

「ニ…カナルだが?」

「え!?こいつがカナルの本体!?」

そんな会話をしながら、俺はサークルのメンバーのもとに向かった。


次回の更新は3/4(水)です

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