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影を纏う転生者 〜平凡な高校生の異世界人生録〜  作者: 仮想猫
影纏の術師編 〜ドラマルト〜
59/65

55話 9年 1

ーニナ視点ー

朝起きたら、窓の外は戦場だった。


「なに…これ…?」


私は夢でも見ているのだろうか。

空は黒煙が立ち込め、麦畑は火の海となり、村の方から悲鳴が聞こえる。

「何が…起きてるの?」

隣りにいたカーラさんも、混乱しているようだ。


「カーラさん、ニナ」


私達が混乱していると、家にナナさんが入ってきた。

「ナナさん!何が起きているんですか!?」

「襲撃です。盗賊の集団が村に襲撃してきました」

え…襲撃!?

「私達はどうすれば…?」

そう尋ねると、ナナさんの表情が変わった。

「それを…今から教えます」

なぜこんなに重い空気なのか、私には最初はわからなかった。

けれど、カーラさんには少し状況が理解できたらしい。

カーラさんの表情も、真剣なものになっていた。


「今からカレラさんが転送の魔術を発動します。皆さんはそれを使って逃げてください」


それを聞いた途端、カーラさんは立ち上がった。


「それはダメです!それだと母さんが…!!」

「私も認めたくないです!でもこれは…カレラさんの望みなんです…」


…その魔術はたしかに得策だと、幼いながら思った。

けれど、それと同時に…カーラさんの反応に少し引っかかった。


「カーラさん。転送魔術って…なにか危険なことがあるんですか?」


すると、カーラさんは弱々しく、こう言った。


「この魔術の発動者は…人柱になって…死ぬ…」


…え?

死ぬ?

それはつまり…


「カレラさんは…死ぬ気なんですか?」


…ナナさんは浅く頷いた。

「…嫌だ…そんなの駄目です!だって…!」

「…ニナちゃん」

私が言葉を出そうとすると、後ろから声がした。

カレラさんだった。

「これしか方法がないの。お願い…」

「けれど…それじゃあ…!!」

「ニナちゃんの気持ちはよく分かる。私も…身内が命を捨てようとしたら、止めたくなる」

そしてカレラさんは一呼吸おき、続けた。

「けれど…もしニナちゃんが同じ立場だったら…同じことをすると思わない…」

…私はこの言葉に共感してしまった。

そして、何も言葉を返せなくなった。

「だからお願い…最後に…みんなを守らせて…」

私はただ…泣くことしかできなかった。






「みんな、母さんとはもう二度と会えないけど、諦めずに、生きてね」

………。

術は発動された。

眩い光が私たちを包み込み、各魔法陣にバラバラに転送された。

そして私は恐る恐る、泣き腫らした目を開いた。


「…どこ…ここ?」


周りには誰もいない。

私だけが、ここに転送してきたらしい。

そして、私は何をすればいいのかわからないまま歩き出した。

けれど私は種族の関係で、あまり人目につきたくなかった。

だから私は、裏路地を歩き続けた。

そして、城のような大きな建物の前についた。

日は暮れ、もう夜になっていた。

ショックと疲労によるものだろう。

そこで私は意識を失った。






目が覚めると、私は室内にいた。

ベット…じゃなく、ソファの上にいるようだ。

「大丈夫?校門の前で倒れてたのよ」

声の方向を向くと、そこには一人の女性がいた。

「あなた…は?」

「私はジル・エンター。この学校の理事長をしている者よ」

「…学校?」

「ここはドラマルトの学校よ、あなた…もしかしてこの国の人じゃない?」

「はい…実は…」

私は彼女に、私達の身に起きたことを話した。

「…なるほど…それでこの国に」

彼女はそれを聞き、少し考え込んだ。

そして、

「あなた、行くあてってあるの?」

「…ないです」


「なら、私が保護してもいいかしら?」

「え?」


こうして私は、ジルさんに保護されることになった。






気づけばこの国に来て3年が経過していた。

ジルさんは私のことを家族のように扱ってくれて、とても穏やかな暮らしをしていた。

そんなある日のこと。


「ニナ。学校に興味ってある?」


「学校ですか?」


「そう。あなたを村に帰すのは、今の私にはできないけれど、あなたが実力をつけれれば、いずれ帰れると思うの」


たしかにそうだ。

行くことにデメリットは1つもない。

「それに、もしかしたら村の人が学校内にいるかも知れないし」

「…わかりました!じゃあ今年から入学してみます」

「わかったわ。種族もあるし…保護生徒として手続きしておくわね」

「はい!お願いします」

「あ、それと…」

「なんですか」

「保護生徒って、身分を隠さないといけないんだけど…偽名とか作る?」

偽名か…

私の立場上、それは必須なのだろう。


「…じゃあ、『カナル』という名前でお願いします」


「わかったわ、カナル」

こうして私は、保護生徒のカナルとして、学校に入学した。






学校生活はとても楽しい…

というわけでもなかった。

というのも、私は保護生徒なので、基本は部屋から出ない。

外出はだいたい分身がしている。

分身を覚えるのには苦労した。

元々魔術は得意ではなかったので、入学が決定してからジルさんと毎日練習した。

そしてもう1つ退屈な理由があった。

分身の操作中、私自身は身動きできないのだ。

意識を分身に移しているからだろう。

そして分身は喋れない。

まさに孤独な学校生活だ。

レオたちは…今頃どうしているのだろう…



そんな中、私にはこの学校では1つだけずば抜けたものがあった。

それは結界魔術だ。

入学して約1年。

私は結界魔術を王級まで覚えた。

これはすごいことだと自分でも思った。

9歳で王級魔術なんてほとんどいない。

そのせいか、私の名前は少しだけ有名になった。

部屋の近くまで来る人もいた。

けれど私は、誰ともかかわらなかった。

そうせざるおえなかったのだ。

…暇だな……。






私がこの国に来て6年が経過しようとしていた。

この生活にもなれた頃だった。

今冬の学校は、とある人物の話題で持ちきりだった。

「ファジサイトで活動している影纏が竜獣の集団を返り討ちにしたらしい」

「13で神級になったとな…とんでもないな」

それは「ファジサイトで名を馳せる『影纏のレオリオス・パルト』」という話題だった。


レオリオス・パルト…


そうか…

レオくんは無事なんだ。

そして神級か…

二つ名は神級の術を会得、開発した証。

そうか…そんなに大きくなったんだ…

私はとても嬉しかった。

けれど、疑問だった。


…どうしてファジサイト?


エイサールの所属はウェストンだ。

ましてや、どうして魔族世界にいるんだろう?






「ジルさん」

「どうしました?」

私は試しにジルさんに聞いてみた。

「レオ…影纏のレオリオスさんについて、なにか知りませんか?」

「その方はたしか…ファジサイトで活動しているっていう…」

「はい」

「珍しいですね。カナルが他者に興味を持つなんて」

「実は……」

私はジルさんに、レオが身内であることを伝えた。


「え!?彼があなたの身内!?」


「は、はい…」

「………。」

そう聞くと、ジルさんは少し考え込んだ。

そして、

「あなた、今何年生でしたっけ?」

「え?3年生です」

そう聞くと、ジルさんは手紙の用紙を出した。



「再来年の特別講師の枠が2枠…空いてるんですが」



特別講師?

たしか…期限付きで講師として雇うという…

「…え!?」


「その人枠を…レオリオスさんにするのはどうでしょう?」


…とても嬉しい申し出だ。

でも…


「私…正体を明かせないんですが…」


「それに関しては運ですね。あっちが気づいてくれることを信じましょう」

そう。

できても神頼み。

けど、やる価値はある。

「そして、卒業と同時に、あなたは村に帰りなさい」

「ジルさん…」

「そんな顔しないでください。私も暇があれば、遊びに行きます」

「…はい!」

こうして私達は、レオに特別講師のお誘いをすることを決定した。

その1年後の冬。

この学校にレオがやってくるのであった。


次回の更新は2/25(水)です

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