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影を纏う転生者 〜平凡な高校生の異世界人生録〜  作者: 仮想猫
影纏の術師編 〜ドラマルト〜
58/65

54話 影は骨を砕き、緑は黒を染める

俺は死ぬ寸前だった。

骨に再び胴体を貫かれるところだった。

けどそれは起きなかった。

カナルに命を救われた。


「なんで出てきた!?分身だとしても無謀だ!!」


「けど、レオ先生は生身です!!」


「結界使い…それも貫けないとは…」


ソオもカナルに気づいたようだ。

「厄介な増援ですね。消しますか」

その瞬間、ソオはカナルの分身に向かっていった。


「魔力の嵐!」


「影の雨!」


「…!?」


ソオの攻撃に被せて、俺はソオに攻撃した。

ソオは怯んでから横に避けた。


「カナル。俺がお前を守る。お前は俺を守れ!」

「は、はい!」

「…面倒ですね……」


「腹が立ってきただろ?その仮面の下の顔…見せてみろよ」


「…チッ!」


余裕はない。

だからこそ煽る。

苛立っているときに煽れば、動きは鈍る。

どんなやつでも、一ミリも緩まないやつはいない。



「…灼熱地獄インフェルノフィールド!!」



そう考えていると、学校の周囲が灼熱の炎に包まれた。

何だ!?何をされた!?


「これは…魔術なのか?」


規模がでかすぎる。

こんな技があっていいのか!?

これは…かなり怒ってるな。


「この術を出したのは50年ぶりだ…さあ…貴様らの命はいつまで続くかな?」


下を見ると、講師達は校内に逃げ、襲撃者は跡形なく燃やされていた。


「仲間すらも…」

「仲間ではない。ただの盗賊よ…して…論点がズレてはいないか?」


そんなことが重要じゃないことは俺にもわかっていた。

このままではこの学校は全滅だ。

校舎も炎に燃えてなくなる。

こいつと早くケリをつけなければ。


「我も死にたくはない、だから…」


そう言うと、ソオの体はさらに変形していく。



「5分で終わらせよう。骨の獣(ボーンビースト)!」



ソオの全身は骨につつまれ巨大化し、人の姿からはかけ離れた何かになっていく。

骨の…馬?


「馬骨だと!?」

「はて…聞かぬ名だな。貴様の前世とやらのものか?」


そこまで知ってるのか…こいつ。

そして馬の骨は複数の魔術を纏った。


「ここで朽ちよ」


馬骨はそのまま突っ込んでくる。

凄まじい速さだ。

俺は右に飛んで避けた。


「巨体からは想像もできない速さだ!」


さて、どうするか…


「レオ先生!攻撃だけを考えて!私がカバーします」


そうだ。

今は一人じゃない。


「わかった!頼む!」


なら、俺のやるべきことは一つ。


「骨を…砕く!!」


「舐めるな!若造がぁ!!」


馬骨は魔術を全身にまとい、まるで巨大な砲弾のように突っ込んできた。


「影の領域!影分身!」


俺はそれまで避難誘導に使っていた分身も含め、6体全員を集結させた。


「ツーマンセルで行動して、ありったけの攻撃でやつの骨を壊せ!俺は正面から迎え撃つ」

「それだとお前…」



「何も考えるな!まずは勝つことだけ考えろ!」



「「「「「「…了解!!」」」」」」


指示すると、分身は各々散らばり攻撃を始めた。


「フンッ…小賢しい。こんな分身など…」

「スピード勝負なんだろ?なら本体の俺を狙うんだな!」

「貴様…」






戦いは3分経過した。

すでに学校には火がつき始めている。


異属の双龍(いぞくのそうりゅう)!」


分身たちは最高火力である「炎戒の龍」と「岩塊の龍」を組み合わせた術で攻撃を続ける。

俺は閃光移動で攻撃を避けながら、剣術で攻撃をする。


「おのれ…ちょこまかと…」


そうしているうちに4分が経過した。


「もういい…」



ボーーーン!!



その瞬間、馬骨からものすごい魔力が放出された。


「ここで塵となれ」


馬骨は肥大化し、魔術を帯びていく。

それはまるで隕石のようだ。


「こいつ…自分と学校ごと消すつもりか!?」


まずい。

俺の背中には校舎がある。

ここで避ければ、学校は終わりだ。


「ここでこいつを倒すしかない…」


俺は避けるのをやめ、全力を剣に込めた。

そして、閃光移動の準備をした。

さらに、影の領域の範囲を絞り、閃光移動の必中性をあげる。


「散れ!!骨隕石ボーンメテオ!!!」


「閃光移動!断地!!」


俺とソオの攻撃は激しく衝突し、その衝撃波は校舎の壁の一部を壊した。

力はほぼ互角。

だが、質量で俺は少し押し負けている。


「…ッ!!ガァァァァァァァ!!!!」


「そんな攻撃に…私が負けるかぁぁ!!」


クソッ…

押し負ける…

その時だった。



「水炸裂!」



バシャン!


後ろから大粒の水が飛んできた。

カナルだ。

カナルが水炸裂を飛ばしたんだ。

俺はカナルの結界に守られ当たらず、ソオにのみ当たった。


「…ッ!?」


偶然にも、俺に攻撃を一点集中していたソオは攻撃に反応して怯んだ。

偶然のタイミングで偶然当たったことによる、ほんの少しの瞬間だ。

それは、最後のチャンスでもあった。



「ここだぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」



「…くっ…こんな…小細工に!?」


俺が力を込めると、馬骨の骨は砕け、ソオの本体が姿を見せた。



「貴様ぁぁぁぁ………!!!」



そして剣力は、ソオの腕を切り、体を上下に分けた。






ーカナル視点ー

気づいたときには終わっていた。

相手は胴体泣き別れの状態になっていて、面も壊れていた。

ただ、それを見て立ち尽くす人が1人いるだけだった。


「レオ先生!無事ですか!?」

「あぁ…俺はなんとか…」


分身越しに、彼の無事を確認できた。


「よし!あとは消火だ。休んでられない」

「手伝います!」

「あぁ、助か…」



「貴様は…これが終わりだと…思うのか?」



「「…!?」」


私達はハッとした。

足元を見ると、そこには上半身だけになっても喋り続ける相手がいた。


「ソオ…お前の負けだ…大人しくここで…」


「ここで…死ねと?…たしかに私は…ここで死ぬ……だが…貴様に…大きなダメージを…与えることは…できる」


「…何を今更言っている?」


「その油断が命取りよ…ッ!!」


その瞬間、ソオという男の口から、なにか白いものが出てきた。

そして、巻き付くように私の分身を拘束した。


「…え?」


「…チッ!骨分身か!」


けれどなぜ?


「無駄です。私は分身です。こんなことしても私には影響がありません」

「たしかにそうだな…でも…」



「これならどうだ?」



…え?

気づくと、私の本体の耳元に骨分身がいた。

そして、私の首を勢いよく掴む。


「かっ!!…ぁ…」


「フフフ…どうだ?突然自分が追い詰められる感覚は?」


「どう…して…?」


「貴様の分身に流れる魔力を辿ったんだよ。私の体は特別でね、魔術で自身の血液を骨に変えるのと同様に、自身の体を魔力化して相手の魔力に因子を混ぜれる」


「わけ…が…わか…ら…」


「わからなくて良い。どっちみち死ぬのだから」


なんで…こんな…まだ…


「今頃あの影纏は、突然消えた私と貴様の分身に混乱しているはずだ。助けは来ない」


誰か…助け……



「さらばだ、小娘よ」



レオ…く…



パリン!



意識が飛びそうになったその時、突然窓ガラスが割れた。

そして、誰かが入ってきた。


「だ…れ…?」


「貴様!?なぜここが!?」


「ここしか無いと思ったから、神様に祈りながら来た。結果は…ビンゴだな」


この声…!


「レ…オ…」

「おのれぇぇぇ!!」


「もしこれが分身なら…解除できるな」


「な!?待て!!」



「解除魔術!」



「やめろぉぉぉ!!………」


その声とともに、私の首から手が消えた。

分身が解除されたようだ。


「…ガハ!?ゴホッゴホッ...!」


「大丈夫か?」

「はい…大丈夫です」


私は彼の目を見た。

彼は安堵の表情を浮かべていた。


が、その顔はすぐに消えた。


そして、涙を流していた。






ーレオリオス・パルト視点ー

ソオの分身を完全に消し去ったあと、俺はカナルのもとに向かった。

カナルの分身が消えたあと、俺は反射的にカナルを心配した。

そして、無我夢中でカナルの部屋に走った。

結果は大当たり。

カナルはソオの分身に襲われていた。

俺はすぐさま救出し、カナルに呼びかけた。


「大丈夫か?」

「はい…大丈夫です」


俺は安堵した。

良かった。

無事なようだ。

………。


俺は落ち着いてカナルの顔を見た。

カナルは少し涙目で、少し顔が赤くなっていた。

目はエルフ特有の緑で、髪は銀髪で肩くらいの高さ。

額にはかすかに鱗が見えた。

そして極めつけは、左耳にある傷だ。

おそらくこれが分身の歪みの正体だろう。

………。


俺はこの顔に見覚えがあった。

幼い頃の記憶だ。

よく魔術を練習したり、本を読んだり、食事をしたり、笑ったり、話したり…。

………。


いつの間にか、俺の目には涙が浮かんでいた。

少しとかじゃない。

大粒で大量の涙が。

大人にしては情けないくらいの涙が。

けど、顔は歪まず、呂律は回っている。

ただ…呆然とした顔の頬に、大粒の涙が流れていく。

そして、それに気づいた彼女は、俺の顔を見て、こう言った。



「私のこと…覚えてる?…」



俺はこの時、確信した。


その見覚えのある姿を見て。



「レオ…」



その時、俺は様々な気持ちを込めて、言葉を放った。



「ニナ…なのか?…」



………。

「うん…私は…ニナ…だよ……」

カナルは…いや…



ニナは、泣いていた。


次回の更新は2/21(土)です

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