52話 カナルの成長
新学期から8ヶ月。
季節はあっという間に冬になった。
この4ヶ月の話?
何もなかった。
至って平和だった。
けっして、天の主がネタ切れだったとかじゃない。
そういうつなぎのほうがいいと思ったのだろう。
…って誰に話してるんだ?
「フンフンフーン、フンフンフーン、フンフンフーンフフーン…」
「レオ先生、何歌ってるんですか?」
「あぁ、これか。俺の前世はこの季節にはこういった歌を子供が歌ってたんだ」
俺は「ジングルベル」を鼻歌で歌っていた。
前世ならもうすぐクリスマスだからな。
少し浮ついた気分だ。
「さて…今日は魔術を見てほしいって話だったな」
「はい!私、やっと強い攻撃魔術を覚えられたんです」
へ〜。
そんな練習してたんだ。
「じゃあ見せてもらおうか」
「はい!」
…寒い。
俺達は今中庭にいるのだが…さすが冬だ。
心臓が凍りそうだ。
「水炸裂!」
そう考えていると、カナルは自身の周りに無数の水の玉を出した。
あれ?これって…
「五重結界」
俺は急いで結界を張った。
ちなみにこれは上級だ。
パーン!
結界を張った直後、水の玉は破裂し、周りに針のように飛び散った。
パリン!
そして俺の結界が破れた。
「「あ…」」
グサグサグサ!
俺の体に水が刺さり、俺は吹っ飛んだ。
「レオ先生ーーーー!?」
「大…丈夫」
俺って…こういう時毎回吹っ飛ぶのか?
「てかその魔術…特級魔術じゃん!?」
「はい!やっと覚えれました!」
そうか、ついに特級を…
カナルの成長は嬉しいものだ。
………。
「カナル」
「…?どうしましたか先生?」
「卒業まであとどれくらいだ?」
「え?」
そう。
カナルは現在6年生だ。
春になれば、俺と同じくこの地から離れると聞いている。
「あと2〜3ヶ月くらいです」
「そうか…なら、卒業祝いを用意しておこう」
「え!?早すぎません?」
「あ、いや…師弟卒業の方だ」
「え!?」
実は俺には心に決めていたことがある。
それは「特級会得と同時に、師弟関係を解消する」というものだ。
理由はいくつかあるが、大きな理由は俺の経験にある。
俺の卒業試験は「剣術奥義会得」と「魔術特級」だったからだ。
だから、カナルが特級の攻撃魔術を覚えた瞬間に卒業、と考えていた。
「…というわけだ」
それをありのままカナルに話した。
「そう…なんですね…」
カナルは少し悲しそうな顔をしていた。
そりゃそうだ。
突然のことだしな。
だが、その顔はすぐに笑顔になった。
「わかりました!この2年、ありがとうございました!」
カナルは自分を納得させたようだ。
こいつは強い術師になりそうだ。
「なら、最後にお願いを聞いてもらってもいいですか?」
お願い?
なんだろうか?
「なんだ?可能な範囲ならいいが?」
「今日の夜、私の部屋にきてください」
「…え?」
「え!?カナルさんに呼び出されたんですか!?」
その夜、俺は一旦部屋に戻り、飯を済ませることにした。
このあと、カナルの部屋に向かう。
「お兄ちゃん…もしかして誘惑されてる?」
「カナルは保護生徒だ。そういった目的では部屋には人を呼べないだろ」
「それは…確かに」
「レオさん…大丈夫?」
ルカが心配した眼差しで見ている。
「大丈夫だ。それにカナルのことは、この中ならお前が一番わかってるだろ?」
「…そうですね!気をつけてください!」
「あぁ」
俺はご飯を済ませて、カナルの部屋に行く準備をした。
『レオ。一瞬だけいいですか?』
ナナ師匠からの念話だ。
『いいですよ。どうしました?』
『カナルさんについてなのですが…彼女、なにか隠し事をしてるように見えました。もしかしたら今日の呼び出しは、それについてかもしれません』
『何か根拠があるんですか?』
『いえ、私の感です』
…ナナ師匠の感は当たっているような気がした。
そういうことが多くあったわけじゃないが、そんな気がした。
『わかりました。頭においておきます』
『夜の学校は七不思議の件のように少し不気味です。気をつけてください』
『はい。行ってきます』
こうして俺はカナルの部屋に向かった。
外…というか廊下は想像以上に静かだった。
前に当直に出たときは、まだこんなに静かじゃなかったが…
そんな中、俺は歩きながらカナルについて考えていた。
何が目的なんだ?
何を伝えたいのか…?
自身について?
勉強について?
それとも相談事?
さっぱり見当がつかない。
ズズッ…
「………」
何かいるな。
それも影魔術が。
俺の影に誰かいる。
技は…「影潜」かな?
…はあ。
「解除魔術」
「「「「「うわっ!?」」」」」
人が5人ほど出てきた。
正体は…影魔術研究会の1期生だ。
「こんな時間に何してるんだ?」
「先生がカナルに呼ばれたって聞いて…」
「尾行してました!」
「「「フェイ!?」」」
「なんでお前はこういう時バカ正直なんだ?」
…俺とカナルについて気になるらしい。
……この時間は外出禁止時間だ。
俺が送る必要がある。
けどそうなると約束に遅れてしまう。
ハァ〜……
「隠れておけよ」
「「「「「はい!」」」」」
なんでこういうときに息ぴったりなんだ…
しょうがないので俺はそのままカナルの部屋に向かった。
カナルの部屋には数分もしないうちに着いた。
…流石理事長の関係者だな。
扉の柄が少し違う。
いい部屋に住んでるみたいだ。
「さて…」
俺は魔術でその場に椅子を作って座った。
「あれ?先生、入らないんですか?」
小声でエルが聞いてきた。
「カナルは保護生徒だぞ?分身としか話せるわけ無いだろ?」
「けど、部屋に呼んだんですよ?」
「…まずは分身が出てくるまで待つ」
「は〜い」
俺はその場で待った。
1分たった。
5分たった。
10分たった。
………。
「出てこないな」
「流石にノックじゃないですか?」
「…そうだな」
俺は再び扉の前に立った。
そして、
コンコンコンッ…
俺はノックした。
「レオ先生ですか?」
扉の向こうから声が聞こえてきた。
カナルのようだ。
「あぁ。来たぞ」
さて…どうしようか…
………。
…視線がうるさいな。
『ラーラ。中のやつに「もう少し落ち着け」と言ってくれ』
『…はい』
俺は念話でラーラに伝言を頼んで、再び扉に話しかけた。
「ここで待ってるぞ」
「あ、いえ。入ってきてください!」
「え!?」
「「「「「うぇ!?」」」」」
全員驚いた。
幸い、影内の声は漏れてないようだが。
入る?
俺が?
保護生徒の部屋に?
え?
頭が混乱している。
が、戸惑ってる場合じゃない。
「入っていいのか?」
「はい。ジルさんからも許可が出てます」
そうなのか…
………。
…よし。
俺はドアノブに手をかけた。
「入るぞ」
「…はい」
俺はその部屋の扉を開け…
ドーーン!!
開けようとした瞬間、学校全体が揺れた。
「何だ!?」
地震!?
こんなときに災害か!?
…待てよ。
俺は過去にこの世界の地図を見た。
その時に知ったんだ…
この世界に…
…大陸プレートはない。
つまりこれは…
プーーーン!プーーーン!…
考えていると、学校全体にアラームが鳴った。
「警報が鳴りました。警報が鳴りました」
アナウンスが流れた。
…間違いない。
「敵襲です。敵襲です。」
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