48話 新学期
季節は移り春となった。
今日から新学期だ。
といっても、俺がやることは基本変わらない。
午前は講義をして、昼を食べたらサークル活動。
その後に個人の剣術と魔術の研究をして、残りを家族たちと過ごす。
このサイクルは変わらない。
のだが……
「あ!あれって!?」
それは廊下を歩いているときだ。
その瞬間はやってくる。
「「「「「「影纏さーーん!!」」」」」」
「やべっ!?」
新入生が入ってきたことにより、俺は毎日追い回される。
家族探しのために、「影纏のレオリオス・パルト」の名前を広めようとはしていたが、少々拡散しすぎてしまったようだ。
「影魔術のプロ」みたいに認識した人たちが、俺を見るなり走ってくる。
確かに影魔術については誰よりも研究したつもりだ。
だが「なにか教えて?」と言われてもほぼほぼ今は感覚で術を使ってるからできない!
だから逃げる。
前世の異世界者だったら、これに浮かれる主人公や、ものともしない主人公が王道だろ。
俺は違う。
俺はこんな状況、ごめんだ!
「あれ?どこいった?」
俺はこういう時、ラボに逃げるようにしている。
ラボの入口は魔術で開閉する壁だ。
一見するとただの廊下の一部だ。
ラボの場所をまだ把握していない1年生には見つけられまい。
「サークル紹介の日までしか使えませんよ。それ」
「それまでは使わせてもらうさ。それと、勝手に脳内の独り言を聞くな。ラーラ」
ラボにはだいたいラーラとエルがいつもいて、その他もちょくちょくきてる感じだ。
あと、カナルも毎日のように通っている。
基本は女性陣3人がラボにいる感じだ。
…男どもは何してるんだ?
と思っていたが、
ドーーン!
中庭から爆発音がした。
「またか…」
「またですか…」
「またなんだ…」
「相変わらず焦げ臭いにゃ」
「「「にゃ?」」」
「あ、また口が滑っちゃった」
俺達は中庭に行く。
中庭にはぼろぼろになったモラとライナがいた。
「2人とも、実験はラボでやれって言ってんだろ?」
「閉鎖空間が苦手なんですよ」
「あと、でかいことやるとラボ爆発しちまうぜ?」
「常時結界張ってんだから大丈夫だろ」
「「あ、そっか」」
「ここ壊したら、弁償は俺なんだから勘弁してくれ」
「「はい…」」
とまあ、日常はこんな感じだ。
…ん?
誰か忘れてるような…
「おい。フェイはどうした?」
「フェイなら『動物が騒いでる!』って言って、どっか行きました」
「あいつ…レポート出さずに…」
「あ、影纏先生がキレてる!」
「珍しい。さすがこのサークル一番の問題児」
「…カナル…学校を結界で囲めるか?」
「いつも通りですね。わかりました」
なれた手つきでカナルは結界を張った。
「逃がすな、お前ら」
「「「「「はい。先生」」」」」
このあとフェイがどうなったかは、言わなくてもいいだろう。
証言によると、結界が張られたと思ったら、校舎内から男の悲鳴が響いたのを聞いたらしい。
別の証言によると、悲鳴の前に一瞬だけ辺りが暗くなったんだとか。
これは後に、「この学校名物の暗転心霊現象」と言われるようになったんだとか。
「レオの仕事は順調なようですね。研究の方は?」
「まだまだです。結界の研究は多少進んだのですが…」
とある夜、俺は家族で飯を食っていた。
「カナルさんが話せるようになったので『禁忌の結界』の研究を再開してんでしたっけ?」
「はい。今は神級結界について学んでいます」
「進捗の方は?」
「2割くらいですかね?」
「レオさんの研究…楽しみです」
「なんでルカが乗り気なんだ?」
「なんとなくです」
なんとなくか…
それは果たして当たるのか否か…
「そういえばカオル。体術はどうなった?」
「とりあえず衝術の奥義1つと、他の体術の上級までは覚えたよ」
「…お前、そっちの才能のほうがあったか?」
「けど魔術好きだしな〜」
「なんだったら、三刀流ってのもありますね」
「魔術と剣術と体術全部使えるっていう人、あまり見たことないんですが、いるんですか?」
「いるにはいますね」
「じゃあ僕は三刀流を目指そうかな」
ここ最近はあまりカオルとルカのことを見れてなかったが、それぞれの気になることややりたいことがあるようでよかった。
…ん?
「ルカはやりたいこととかないのか?」
「私…ですか?」
そう聞くとルカは少し考え込んだ。
「じゃあ…」
「なんだ?言ってみろ」
「レオさんとナナさんの助手になりたいです」
…ん?
「「え?」」
突然の申し出に、俺とナナ師匠は固まってしまった。
助手?
手伝いってこと?
それとも他にも何か意味が?
「つまり…私たちの研究や活動を手伝いたいということですか?」
「はい!そうです」
ナナ師匠が尋ねてくれた。
なるほど…
…なぜ?
「どうしてルカは手伝いたいんだ?」
「単純に興味があるんです」
「何に?」
「助手という役目に」
…え?そういうこと?
手伝いがしたいんじゃなくて、「手伝い」という名目に興味があるってこと?
「まあ、俺はいいよ」
「私も構いませんよ」
というわけで、小さいが凄腕の助手の誕生である。
そして翌日、ラボにて。
「ルカ、全員分のお茶を淹れてくれ」
「は〜い」
早速ルカはラボで助手を始めた。
「影纏先生、あの子が前に言ってた?」
「あぁ、三眼族のルカだ」
「純血は初めて見ました」
「混血は…まあ、気にしないでおこう」
「「はい」」
こうして、新体制として新たに活動を始めるのであった。




