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影を纏う転生者 〜平凡な高校生の異世界人生録〜  作者: 仮想猫
影纏の術師編 〜ドラマルト〜
51/65

47話 分身に声は宿る

この国に来て1年がたった。

まだ雪は溶けていない。

外は極寒である。

今日は自室にいた。

カナルの分身と共に。

「さて、今日はテストだ」

コクリとカナルは頷く。


テスト。

何のテストかと言うと、分身のテストだ。

分身が喋れるかどうかを確認する。

これができれば分身は特級だ。

「やり方のコツは分かるか?」

そう聞くと、カナルは首を縦に振ったが、若干曖昧な感じの振り方だった。

…内容はわかってるが、感覚はわかってないらしい。

「よし、じゃあまずはコツから教えよう」

俺はそう言って分身を出し、実演を交えながら説明を始めた。

「まず、分身は基本は本体と魔力でつながっている。分身が魔術や剣術を使う時、魔力や剣力は本体から供給される。分身を喋らせる大前提として、この『本体からの供給』を利用するために、声や思考を魔力に乗せるんだ」

端的に言えばこんな感じだ。

前世の世界でわかりやすく例を挙げるとすれば、声が電波となって電話越しに聞こえるあれに近い。

「本体からの供給」と「同人物の魔力は引き寄せあう」の2つの法則を利用して、魔力化した声を分身に届けるのだ。

…まあ、突然こんな難しいこと言っても頭がゴチャつくだけだ。

これに関してはあとで教えよう。

「よし、まずは分身に魔術を出させてみよう」

カナルはその指示のあと、手から水魔術を発動した。

どうやら魔力を送る感覚をつかんでいるらしい。

「いいな。その感覚で声をおくってみろ」

そう指示出しすると、カナルは口をパクパクさせながら止まった。

多分声を送ろうとして本体がめっちゃ喋っているんだろう。


「…あ…が……ど…じゃ……」


お?声が出始めたぞ。

…だがこれだけ聞くと、やっぱり電話だな。

電波障害で音が途切れ途切れになっている状況と似ている。

「そんな感じだ。もっと魔力を込めてみろ」


「…は……わか…ま…た………み」


…てかカナルって、声聞こえなくてもこうやって喋ってたんかな?

いま、普通に返事してたよな。


「きこ…ます…やっぱ……ずかし…」


お、結構形になってきたぞ。

内容がわかる。

多分今「聞こえますか?やっぱり難しい」って言おうとしていたような気がする。

その時、


「あー、あー、聞こえてますか?レオ先生?」


あ!

「聞こえたぞ〜。今『あー、あー、聞こえてますか?レオ先生?』って言ったな?」

「え!?聞こえた!?」

…突然めっちゃ安定し始めたな。

コツつかんだってことかな?

「やった!ついに喋れる!やっと…やっと……」

ん?また途切れ途切れに…

………。


…違う?


途切れてるんじゃない。

泣いてるんだ。

カナルの本体が向こう側で泣いているんだ。

「おいおい泣くにはまだ早いぞ〜。まだ他のやつと話してないんだから」

「はい…すみません…って、え?」

何だ?何かあったか?


「レオ先生。なんで泣いてるんですか?」


「え?」


俺は目をこすった。

こすった手には水滴がついていた。

え?なんで?

なんで俺…泣いてるんだ?


「わからん。多分俺も嬉しかったんだろう。なにせ1年の集大成みたいなもんだからな」


…正直納得はしてない。

けどそれ以外に理由がわからなかった。

「きっとそうなんだろう」と、一旦自己完結させた。






「サークルメンバーの諸君よ。今日は嬉しいお知らせを持ってきた」

翌日、俺はサークルメンバーを招集して、「今後の活動方針の話し合い」という名目でミーティングを開いた。

「珍しいですね。全員招集するなんて」

「そんなに重要で大きなことなんですか?」

「もちろん。今後の活動幅も広がるビッグニュースだ」

「びっくにゅうす?」

あ、しまった。

この世界、こういう言葉は通じないんだった。

「ゴホン。カナル。まだ伝えてないな?」

カナルは頷いた。

実は昨日、カナルに「紹介まで誰にも話すな」と言っていた。

どうせ伝えるならサプライズがいいからな。

「カナルは知ってるんだ」

「なんだろうな…」

よし、渋ってもしょうがないし、伝えよう。


「カナル。自己紹介をしなさい」


「「「「「…え?」」」」」


「はい!わかりました、レオ先生!」


「「「「「…え!?」」」」」


「改めてになりますが、私の名前はカナルです!もうすぐ6年生で、みんなと関われるのはあと1年だけど、これからもよろしくね!」



「「「「「え〜〜〜〜〜!!!」」」」」



よし。

インパクトはバッチリである。

「カナルさん、喋れるようになったんですか!?」

「はい!この1年、レオ先生が1から教えてくれて」

「上達が早いと思ったらそういうことだったのか…」

「じゃあ、これからは喋って色々できるの!?」

「もちろん!たくさん話そ!」

「「やったーー!!」」

特に女性陣には大好評のようだ。

そりゃそうか。

今まで会話の男女比が4:2だったからな。

1人加わるだけで心強いだろう。

「というわけで、新体制ってわけじゃないけど、次の1年頑張ろう」

「「「「「「はい!」」」」」」

すげー。

返事が1人増えるだけでこんなにボリュームが増したように感じるんだな。

「そういえば影纏先生。先生って任期あと何年なんですか?」

「来年で終わりだが?」


「「「「「「え!?」」」」」」


「あれ?言ってなかったか?」

「じゃあ、このサークル、来年で終わりなんですか!?」

「そんなことはない。ちゃんと他の顧問はつくはずだし、俺も時々来るつもりだ」

「あぁ…なら良かったです…」

「ちなみにその後はどうするんですか?」

「竜族世界に寄ってから、エイサールに帰るつもりだ」

「あれ?そもそも先生ってどうしてこの国に来たんでしたっけ?」

「家族探しだ」

「家族…あ、あの事件関連で?」

「まあそんなところだ」

ふと、カナルに視線を向けると…

なんか…難しい表情をしている。

何かあるんだろうか?

「よし!まずこの話は一旦終わろう。活動方針決めるぞ〜」

「あ、それ本当にやるんだ…」

「口実には使ったが、やるのは本当だ」






ミーティングはその後1時間くらい続き、解散した後に各々の研究に移った。

俺はカナルと雑談していた。

「魔力消費はどんな感じだ?」

「なれてきたら、あんまり減らなくなりました」

「集中力的には?」

「問題ないです」

「よし。じゃあ大丈夫だな」

…なんだろう?

なんか頭がポアポアする。

興奮した空気にあてられたか?

実際そういうのは前世から弱いし。

「…あの…レオ先生…」

「んあ?どうした?」

「あの…」

なんだろうか?

「…いえ、すみません。また今度にしてもいいですか?」

「え?あ、うん。いいぞ」

なんだったのだろうか?

けどまあ、俺が気にしてもしょうがないな。

「とりあえず、次は分身を複数出す練習もしていこう」

「はい!よろしくお願いします」

こうして、俺はその場から離れた。






部屋に戻った俺はカナルについて考えていた。

というのも、昨日の段階で、カナルのプロフィール的なものを聞けたのだ。


カナル

年齢は14歳で、あと2ヶ月ほどで15歳になるらしい。

種族は秘匿情報らしい。

この学校には約8年いるらしい。

留年したというわけではなく、理事長が保護してくれているからだそうだ。


…約8年。

となると、エイサールの一件と同時期だな。

…なにか引っかかる。

けど、それがなにかはわからない。

今度、できるところまで調べてみよう。

…なんか言い方キモいな。

聞いてみることにしよう。


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