46話 雪上の文化祭
この国に来て11ヶ月。
国には雪が降り積もり、いわゆる雪化粧している。
「次、あっちな!」
「こっちの物品足りない!」
「何か買うものあるか?」
「あぁ!看板が!」
学校はすごく慌ただしい。
無理もない。
実はこの学校、明日から文化祭なのだ。
…この世界に文化祭ってあるんだ。
「この学校作ったの、転生者の方らしいですよ」
「ラーラ、念話で俺の脳内を読むのはいいが、頻度を減らしてくれないか?」
「はい、影纏先生」
…納得したわ。
転生者のたてた学校なら文化が似てるのは納得がいく。
「で、俺達は何をやるんだ?」
「さあ、私もわかりません」
俺とラーラ、カナルはサークル宣伝のために出払っていたため、何をするのかを知らされていない。
俺達のサークルは一体何をやるんだ…?
「…入るぞ」
「どうぞ!先生!」
俺とラーラは恐る恐るラボに入る。
「く、暗ッ!」
「何やってるんでしょう?」
中は驚くほど暗い。
「光球」
俺は魔術で中を照らす。
「…え?」
中には見たことない壁があり、迷路みたいになっている。
足元には少しだけ冷気が漂っている。
これを見た瞬間俺は気づいた。
「お化け屋敷か…」
「「「正解です!!」」」
俺が呟くと、壁の隙間、仕切りの上からモラ、エル、ライナが顔をのぞかせていた。
そして正面からはフェイもきた。
本体で。
「だからなんでお前は出てきたんだ!?」
「だって楽しそうなんですもん!」
「お前はこの4年間どうやってきたんだ…」
…まあそれはそれだ。
今重要なのはこのお化け屋敷だ。
「内装のクオリティーは高いな。あとは演出か」
「それを今悩んでます」
「コースはどんな感じだ?」
「迷路みたいな道で奥まで行ったあと、別ルートから入口に戻ります」
「…にゃ?」
「なにか浮かんだか?」
「1つ浮かびました」
俺たちはエルの案を聞いた。
「…ヤバいなそれ」
「怖すぎでしょ」
「けどできなくはないですね」
「これなら2人も参加できますし」
内容が決定した。
「よし、シフトは俺が作っておく。その時間で各々動こう」
「「「「「わかりました」」」」」
さて、どうなるか楽しみだ。
ーナナ・リーフ視点ー
「身支度終わりましたか?」
「「はい!」」
「じゃあ行きますか」
今日はこの学校の文化祭だ。
レオの案内のもと、今日は学校をみんなで回る。
こうして4人が揃うのは久しぶりだ。
「レオ。今日って何か仕事とかってあったりするんですか?」
「いえ。今日は全部分身に任せたので大丈夫です」
レオはいつの間にか分身に仕事を任せられるほどに魔術が上達している。
もう私は追い越されてしまったかもしれません。
私ももう少し魔術を磨かないとですね。
「ナナさん!お兄ちゃん!お腹が減った!」
「はい?お前さっき朝食を食ってなかったか?」
「お祭りはお腹が空いちゃうんだもん」
「ルカはどうですか?」
「私は…お腹には余裕があります」
ルカは少し確認するような仕草をしてそう答えた。
「じゃあ、出店に行くか」
「やったー!」
「ありがとうございます」
「レオのおごりですか?」
「…ナナ師匠、その言い方はズルいと思います」
早速私達は出店があるエリアに向かった。
到着すると、
「こ、混んでますね」
「さすがドラマルトの学校だ…」
私とレオはあまりの人の多さに驚いてしまった。
そんなことは横目に、
「お兄ちゃん!あれ買って!」
「あ、ああ!どれだ…って、食べ物じゃなくて集音石じゃねーか!」
「えへ!欲しくなっちゃって」
「「アハハハ!!」」
あまりにおもしろいやり取りで、私とルカは笑ってしまった。
「とにかく、何食べたい?」
「私、レオの前世の知り合いのお店行きたいです」
「ジャイフのですか?」
「はい。私あまり食べたことないので」
「2人もそれでいいか?」
「「はい!」」
「じゃあ行くか」
「いらっしゃいま…って、レオリオスさんじゃないですか!」
「お疲れ様。今日は連れいるんだけどいい?」
「もちろん!」
私達はエリアの中にあったジャイフのお店に行った。
…なんだろう?
嗅いだことのないほど濃い味付けの匂いがする。
そしてそれは、レオも同じようだ。
「お、お前ら…この匂い…まさか…!?」
「はい…完成しましたよ」
いや、どうやらレオは嗅いだことがあるらしい。
「はい!できました!『ラーメン』!!」
「「「らぁめん?」」」
「マジか!!」
どうやらこれは、レオの前世の料理を再現したものらしい。
「味は!?」
「これは醤油で、味噌もあります」
「…ちなみに塩は?」
「まだ制作中です」
「そうか…」
『チクショー!』
念話からレオの悔しそうな声が聞こえてきた。
「…まあ、全員食べてみてくれ」
「「「いただきます!」」」
私はなにかツルツルした長いものを一本食べた。
「「「…!?お、おいしい!」」」
初めて食べる味だ。
ちょうどいいくらいの濃い味付けだ。
口の中に味が残る。
具材も見たことがない。
いや、味的には食べたことがあるものもあるが、料理に合わせてアレンジをしているみたい。
とても美味しい。
「これが、レオたちの前世の料理ですか!」
「美味しいでしょう?」
「はい!とても!」
そう聞くと、ジャイフの人たちとレオはガッツポーズをしていた。
「これからも頑張れよ」
「「「はい!」」」
私達はこの「ラーメン」を食べ終わったあと、レオのラボへ向かった。
ラボの前についた。
扉からは不気味な雰囲気を感じる。
「影魔術研究会の出し物はお化け屋敷でしたっけ?」
「はい。かなりのクオリティだと思います」
レオがそう言うほどか…
私は怖いものが苦手だ。
ルカも苦手だ。
けれど、レオの手掛けたものは見たい。
「行きましょう、カオル、ルカ!」
「は〜い!」
「…はい!」
私達は扉を開けた。
ヒューーーー!!
…え?
ラボから冷気が流れてきた。
なにこれ?
めっちゃ怖いんですが!?
けど怯まない。
私達は中に入った。
「これは…影魔術?」
中は想像より遥かに暗かった。
いや、影だった。
すべての壁や仕切りに影を纏わせているらしい。
しかも迷路みたいだ。
部屋の中なのに迷いそうだ。
「ナナさん。ありましたよ、祠!」
今回のお化け屋敷は結構シンプルな内容でした。
部屋の奥にある祠に石をおいて帰って来るというもの。
祠とは、英雄たちの武器や所有物を保管する場所。
レオいわく、「前世の世界と似てるけど違う」らしい。
このお化け屋敷は、所々に驚かされてきているが、今のところ普通だ。
クオリティはものすごく高いが…
そう考えていると、
キィィ…
祠の扉が空いた。
え?なんで?
その瞬間だった。
ドタドタドタ…
ドーーーン!
祠から大量の…人が出てきた。
「「「「「「ブオォォ〜〜〜!!」」」」」」
「「ぎゃーーーーー!!!」」
「え!?分身!?」
私達は全速力で出口に走った。
ふと後ろを振り返る。
「「「「「「ぐあぁぁ〜〜!」」」」」」
まだ追ってきている!?
「助けてーーー!!!」
…数秒後。
「お疲れ様でーす」
ようやく出口に出た。
「どうでした?」
「こ、腰が…」
腰が抜けてしまった。
まさかあんな集団に追われるなんて思ってなかった。
それに演出もそうだ。
影魔術を使いこなして、不気味さを完璧に表現していた。
…お化け屋敷で一番使えるのは、影魔術なのかもしれない。
ーレオリオス・パルト視点ー
結論から言うと、お化け屋敷は大盛況だった…らしい。
実際には見てないからわからないが…
中の仕組みを簡単に説明すると、まずはカナルに壁や仕切りをかたどるように結界を張ってもらう。
その後、俺の分身が影の領域で部屋全体を影で覆う。
これで会場は完成だ。
そして肝心の祠だ。
祠から出てきたのは、サークルメンバーの分身たちだ。
俺の分身が5体、カナルとフェイ、ライナがそれぞれ1体、モラとエル、ラーラが2体ずつの計14体の大集団だ。
祠に石が置かれた瞬間、全員を突撃させる。
まるでゾンビ映画だ。
俺もやってみたが、かなりの出来だった。
ナナ師匠は腰を抜かすほど驚いていた。
ルカはしばらく放心状態になっていた。
カオルには分身だと見破られた。
…なんであいつ、すぐ分かるんだよ。
そして時間は過ぎていく。
「ラスト一組です」
「よし、殺す勢いで驚かせ!」
「「「「了解!」」」」
こうして文化祭は幕を閉じた。
来年は何をしようか…
今から考えてもしょうがないが、楽しみだ。
次回の更新は1/26(月)です




