45話 研究発表会
この国に来て10ヶ月。
季節はとうとう冬に入った。
今日は全サークルが一同に会す特別な日である。
「それでは、今年度のサークル研究発表会を始めます」
サークル研究発表会。
この学校にあるありとあらゆるサークルが自分たちの1年間の研究を発表する会である。
この発表会はコンテストでもあり、これにより来年度のサークルカースト順位を決定する。
サークルに所属する者たちは全員、この「サークルカースト順位」の上位を狙い、研究と発表に熱を注いでいる。
審査は理事長を始めとする数多くの「サークル非所属講師」が採点し決める。
驚いたことに、リューも審査員である。
はたしてアイツに審査ができるのか。
結構大雑把なやつだが…
「それでは一組目、術師身体研究会の皆さん、お願いします」
さあ、始まった…って、え?
なんだその「術師身体研究会」って?
いきなり尖った名前が出てきやがった。
『先生知らないんですか?』
考えていると、横で念話を通して聞いていたラーラに言われた。
というのも、今日はサークルメンバー全員ときている。
俺はいわゆる引率だ。
『このサークル、去年と一昨年の発表会で2位だったサークルですよ』
『え?マジ!?』
…まあ、聞いてみるか。
「皆さまこんにちは、本日は私達が研究してきた『魔力と剣力を筋肉に変換することと、それによる結果』について発表します。まずはなぜこの…」
発表は10分くらい続いた。
結構内容がしっかりしていた。
内容もすごく実用的かつ魅力的だった。
研究結果をわかりやすくした模型が登場したときは正直驚いた。
この発表を今回は25組行う。
約5時間の長丁場だ。
休憩やお昼もあるから、何ならもっと長い。
これを毎年やってるこの学校…すごいと思う。
「あ、いよいよですよ」
「来ますね…」
「来ますねって何が?」
「注目サークルですよ」
「続いて、異能眼研究会の皆さん。お願いします」
「異能眼研究会」ですか。
これまたすごい研究が来たな。
「んで、なんで注目されてるんだ?」
「このサークル、3年連続サークルカースト1位をとってるんです」
「学校内では『レジェンドサークル』と言われていて、学校外でも異能眼の研究を補佐し、功績を上げたって有名なんです」
なるほど…
この学校のトップカースト…
いや、この言い方は良くないな。
この学校のサークルのトップを走ってるのか。
すごいな…
発表を聞き始めて5分くらいたった。
聞いていると、発表の随所に誰もしらないような情報を入れてくる。
まわりを暇にさせないとてもいい発表だ。
そしてここで、
「最大の発見として、異能眼には持ち主の魔力の1/3がこもっていることです」
…え?
なにそれ?いや…まて。
教科書書き換わるぞ、これ…
たしか、模倣眼が発言したときに読んだ文献には、「異能眼は込める魔力を増やすことで能力を発揮する」と書いてあった。
もしこの事実が本当なら、異能眼は魔力を流し込むものと言う概念が危うくなる。
これではもはや、貯蔵に近いことになるからだ。
「異能眼を持つものは、魔力の挿入量を変えているのではなく、制限量を変えているんです。そうでなければ魔力枯渇を起こした段階で開眼状態が終わらないのは説明がつきません」
俺はその話を聞いて、ファジサイトでのリューとの戦いを思い出した。
とある戦いで、俺は大技を連発して魔力枯渇を起こした。
しかし、模倣眼は開いたままだった。
つまりあの時、俺は「眼の中の魔力」を使っていたということか。
…これ、利用幅とんでもないぞ。
これってつまり、戦闘において眼と魔術は別口で考えていいってことだろ。
今まで俺は「魔力に支障が出そう」ということで、あまり模倣眼を使っていなかった。
が、それはほぼ意味ないってことだ。
なら、模倣眼をガンガン使っても大丈夫ってことだ。
これは、かなり戦闘が楽になるぞ。
「…これで私達の発表を終わります」
そんな事を考えていると、発表が終了した。
いや〜、とてもためになったわ。
さすがカースト1位のサークルだ。
…やっぱりこの言い方…やだな…
発表会はその後も続いた。
そして始まって約7時間後。
「これにてすべての発表が終了しました。これよし審査員による審議に移ります」
ここからは審査の時間である。
審査員すべての点数をまとめて順位付けをしていく。
………。
………。
………。
…長いな。
審議に入って40分がたったが、一向に始まらない。
と思っていたら、
「お待たせしました!」
アナウンスと共に、会場の正面、発表ステージだった場所の背面に大きな紙が現れた。
「これより結果発表を行います。発表をジル・エンター理事長、お願いします」
すると、壇上にジルさんがあがった。
あの紙は何に使うかはわからないけど、いよいよ結果発表だ。
「まずは10位から4位までを一斉に見せましょう。『火の印』」
ボッ!
すると、紙が燃え始めた。
やばっ、紙が…
と一瞬思ったがすぐに我に戻った。
あの火は…文字?
すると火は消え、焦げた後に文字が浮かび上がっていた。
なるほど。
これが結果発表の方法ってわけか。
火で紙を燃やし文字を書く。
シンプルで面白い方法だ。
周りからは歓喜の声や、残念そうに話す声も聞こえてくる。
でもまあ、多分ここからなのだろう。
「続いて、3位の発表です」
ボッ!
再び紙が燃える。
そして文字が浮かび上がってくる。
「第3位は『術師身体研究会』です」
「「「「「オォーーーーー!!!」」」」」
会場が湧き上がった。
やはりここらへんの順位には、それなりの意味があるらしい。
当人の「術師身体研究会」はというと、なんとも言えない顔をしている。
まあ、気持ちはわかる。
順位としては申し分ないが、元々2位だったサークルだ。
1位を狙っていた気持ちなどもあるのだろう。
「続いて、2位の発表です」
続けざまに発表は続く。
ボッ!
「第2位は、『水魔術研究会』です」
それを聞いた瞬間会場がざわつき始めた。
え?なんで?
妥当な順位に思えるのだが?
『なんでみんなざわついているんだ?』
俺は念話でラーラに聞いた。
『このサークル、去年は20位だったんですよ。それであまりの変化にこんな感じです』
なるほど、下剋上とかに近い感じになってるのか。
なら納得だ。
「いよいよ、1位そして11位以降の発表です」
ついに1位の発表が来た。
が、俺の中ではもう1位が確定していた。
「第1位は…」
ボッ!
再び紙が燃え、字が浮かび上がる。
「『異能眼研究会』です!」
「「「「「オォーーーーーー!!!」」」」」
わかってはいたが、やはりすごいな。
やはり大きな発見をするのは、発表において重要なポイントになるのだろう。
「1位の異能眼研究会には、グランプリフラッグをお送りします。壇上へどうぞ」
そして異能眼研究会には、旗が渡された。
いわゆる優勝旗である。
「そしてここで、来年度からこのサークル研究発表会に参加となるサークルを紹介します」
と、ここで来年度のサークル紹介が始まった。
遡ること1週間前。
俺は理事長室に呼び出されていた。
「…というわけで、来年度のサークル紹介があります」
「その内容を考えろと?」
「はい。それも凝ったものを」
「凝ったもの…ですか?」
「はい。実はこのサークル紹介、毎年全サークル凝ったものを出して宣伝するというのがお決まりなんですよ」
「は、はあ…」
「なので、考えてきてください」
とのことだ。
話を現在に戻そう。
「2つ目のサークルは『種族研究会』です」
呼ばれた種族研究会はアナウンスのあと、各種族の秘術を披露していく。
「「「「「オォーーーー!」」」」」
とまあ、こんな感じに会場をどれだけ釘付けにできるか…らしい。
紹介は約1分くらいだ。
「最後に3つ目、『影魔術研究会』です』
俺等の番である。
「カナル。結界だ」
俺の命令のあと、カナルは壇上に結界を展開した。
そして俺はその結界の中に閃光移動で移動して、影の領域を出す。
「「「「「オォ…?」」」」」
周りは、突然現れた黒い球にざわつく。
そして、その球に向かって、モラ、エル、ライナが得意技で攻撃する。
ドンッ!!
攻撃は勢いよく黒い球に衝突し、静止する。
そして、
ズズズ…
黒い球はそれを飲み込んでいく。
技は崩れることもなく、そのまま飲み込まれた。
ピキッ!
そして黒い球にヒビが入って、その後割れた。
その中から、俺、カナル、ラーラが出てくる。
「「「「「オォーーーー!!!」」」」」
会場に声が響く。
インパクトはバッチリなようだ。
「え〜ご紹介に預かりました『影魔術研究会』です。わたしたちは日々、影魔術の活用方法と構造を研究しています」
と、こんな感じで30秒くらい話した。
「来年からよろしくお願いします」
会場は拍手につつまれた。
どうやら成功のようだ。
「では…失礼します」
そう言って俺は再び影の領域を発動する。
そして、会場の照明を影で隠した。
その隙に席に戻り、影の領域を解く。
あたかも壇上から消えたように演出した。
会場を見渡すと、全員キョロキョロしている。
全員見失ったようだ。
よし、完璧にできた。
「では、これにてサークル研究発表会を終了します」
これにて終了だ。
十分インパクトを残せた。
…あとは研究だな。
今回の発表を見て、レベルの高さを思い知った。
これからの研究が楽しみだ。
次回の更新は1/23(金)です




