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影を纏う転生者 〜平凡な高校生の異世界人生録〜  作者: 仮想猫
影纏の術師編 〜ドラマルト〜
48/50

44話 学校七不思議の調査依頼

この国に来て7ヶ月がたった。

ジャイフの一件以来、特に変わったことはなかった。

講義もサークルも研究もぼちぼちである。

1つ変わったこととしては、カナルが分身を上級まで扱えるようになったことだ。

今は発声練習中である。

そんなある日、俺は理事長に呼び出された。

「どうしました?理事長」

「実は…依頼がありまして」

「依頼…ですか?」

「はい」

最近、俺はナナ師匠の便利屋にあまり顔を出せていない。

というか、便利屋自体、あまり依頼が来ていない。

なので、少しありがたい。

「それで…依頼というのは?」


「…レオリオスさんは、この学校の七不思議をご存知ですか?」


七不思議?なにそれ?

この世界にもそんなのあんの?

「その七不思議は、特に危険というものはないのですが…最近、七不思議を研究していた生徒が連続で失踪しまして…」

「なるほど、つまり失踪原因を調べてほしいんですね?」

「はい…お願いできますか?」

「ナナ師匠と話してみます」

ただ事ではないな…

急いで調査したほうがいい






「この学校の七不思議…まだあったんですね…」

その夜、俺はナナ師匠に相談した。

「あれ?ナナ師匠、七不思議について知ってるんですか?」

「知ってますよ。一応卒業生ですから」

「え!?卒業生!?」

「あれ?言ってませんでしたっけ?」

「初耳です」

この人…ここの卒業生だったのか。

学校の案内中、念話で鼻歌歌ってた理由が今わかった。

すみません、暇な時間にしてしまって…

「あ、」

「どうしました?」


『七不思議については念話で話しましょう』


わお…久しぶりの念話だ。

『どうしてですか?』

『この七不思議、結構リアルなんですよ。2人に聞こえたら面倒なので…』

『なるほど…わかりました』

『今回行方不明になっている人たちは全員、七不思議その3に行っています』

『つまり、それが怪しいと?』

『はい』

『ちなみに、その3の内容は?』

『たしか…「月が見える夜に学校の西にある光魔術の実験室の中で、突如として影魔術が発生し、その中にいる人を縛りつける」というものでした』

『金縛り…ですか』

『まあそんな感じです』

『どうします?調査します?』

『被害が出てる以上、行くしかないですね』

『じゃあ、明日行きますか』

『そうですね』

こうして、調査の決行が決まった。

しかし影魔術か…

一応サークルにも声かけとくか。






「さて…行きますか」

次の日の夜。

俺達は早速調査に行った。

メンバーは俺、ナナ師匠、モラ、エル、ラーラ、カナルだ。

影魔術関連の事案ということで、理事長に許可をもらい、サークルメンバーを連れてきた。

カナルは分身ではあるが、結界魔術を使えるので誘ってみたところ同伴してくれた。

あとは有志である。

ライナはロングスリーパーらしく、「寝たい」と言って拒否した。

フェイは「3つ目の目が痛い」と言って断ってきた。

だが、ルカいわく「それは断り文句です」とのことだ。

とりあえず、今日は6人で活動する。

俺達は早速光魔術実験室に向かった。

「光魔術研究室ですか。初めて入りました」

「ここに影魔術が?」

「さあ?私も昔の噂話なので、本当かどうかまでは…」

『お腹へった』

「おや?」

「ラーラ。念話に本音がでてるぞ」

「え!?」

ラーラは心伝族なため、念話が使える。

俺とナナ師匠以外の念話使いは初めてだ。

………。


…なんか変だな。


さっきから実験室の中をくまなく見ているが、特に違和感はない。

至って普通だし、不気味なほど静かだ。

音1つも聞こえない。

…音1つ?

こんなに全員歩いているのに。


足音1つ…聞こえない。


「…!?」

俺はハッとして実験室の床を見る。

暗くて気づかなかった。

床は一面黒くなり、元々の木の床の原型すらない。

そして床は波打つように歪んでいる。

間違いない。

これは影魔術だ。

「カナル!床に結界魔術をはれ!」

掛け声に驚いていたが、カナルはすぐに床に結界魔術を展開した。


ズズズ…


しかし、影魔術はその結界を飲み込み始めた。

まずいな…

このままだと全員飲み込まれる。


光柱(シャインピラー)(マダラ)!」


俺が考えていると、ナナ師匠が光魔術を出した。


「…あ!」


そうか。

ナナ師匠は複数の光源を作って影を消そうとしてるんだ。


「光襲の矢・雨!」


俺はナナ師匠の意図を読み、光源を複数発生させた。

すると、影はだんだん薄くなり、消えていった。

「フ〜…助かりましたナナ師匠」

「私も慌ててしまいました…間違ってこの実験室壊しそうになりました」

一体何を出そうとしたんですか…ナナ師匠…

「なにか気づいたことはあったか?」

すると、エルが手を上げた。

「どうした?」


「影の中から、かすかに人の匂いがしました」


人の匂い?

「しかもさっき、影は光の柱も飲み込もうとしてたな」

「まるで、何か意思を持っているような動きでした」

…なるほど。

つまり、

「あの影の中には人がいる。そして、影を操ってるやつがいるってことか」

「どうします?」

影の中に人がいる。

だとすると、中にいるのは術者か行方不明者のどちらか、あるいは両方となる。

だとするとやることは1つ。


「俺が影の中に入ろう。そして事が終わったら念話でナナ師匠とラーラに合図を送り救出するということにしよう」


「「「わかりました」」」

「1人で大丈夫ですか?」

「はい。むしろ場合によっては1人のほうがいいかもしれません」

「それはどういうことですか?」

えっと…。

みんなが聞いても理解できないだろうしな…

ラーラに聞こえるが念話で話そう。

『ー…ー……」

「「え!?」」

2人ともすごく驚いた。

「それできるんですか!?」

「やる価値はあります」

「先生の実力でもそれは難しいんじゃ…」

「俺を信じろ…大丈夫だ。一応俺は影魔術の専門家だぜ?」

「…わかりました。ただし、危なかったらすぐ教えてください」






というわけで俺達は、再び影が現れるのをまった。

そして、そのタイミングはすぐに来た。


ズズズ…


影が再び出てきた。

「カナル、モラ。みんなを結界と土で守ってくれ」

「わかりました」

2人が魔術を出したのを確認して、俺は影に飛び込んだ。



影の中。

「暗いな、さすが影魔術といったところか」

中は四方すべてが影でできていた。

模倣眼を開いてみると、ジンッと痛みだした。

「この痛み…神級か?」

かなり痛い。

その痛みはかつて、転送結界を見たときに近い痛みだった。


「なぜだ?」


そう考えていると、影の奥から声がした。

見ると、そこには全身傷だらけの男が立っていた。


「なぜ影に飲み込まれない!?」


「飲み込んでるさ。足にずっとへばりついてる」


「お前以外は全身飲み込まれていた。それなのになぜだ!?」


…ん?

俺はやつの話などよりも、その後ろに意識がいった。

そこには、服がボロボロになり倒れている人たちがゴロゴロいた。

被害にあった人たちだろう。

…女性が多いな。

被害者のリストを見てなんとなくそう思っていたが、そんなレベルじゃない。

多分こいつ、ここ以外でもやっていやがる。

「キモいな、お前」

「お前に何が分かる?」

「わかりたくもないね」

模倣眼で倒れている人達を見る。

魔力が…枯渇してる?

人の体に本来ならあるはずの外側にある魔力が見えない。

他の術と同じく、これは模倣眼で見えるはずだ。

となると…


「魔力を…吸い取ってるのか…」


…許せない。

魔力は人の身体にある生命エネルギーの1つだ。

それを吸うということは、命を吸い上げているのと同じだ。

「ここでお前を止める」

「無駄だ。ここは俺の空間だ」

「たしかにな。だが…」

俺がそう呟くと、男は不思議そうな顔でこちらを見る。

「ここからは…」


ズズズ…



「俺の空間だ」



その瞬間、俺の足元からこの空間とは違う影がじわじわと広がっていく。

「な!?」

「どちらの影が強いか、力比べといこうか」

俺は足元から「影の領域」を出した。

そして、相手の影を侵食していく。

「この影を乗っ取ってやるよ」

「貴様!!」

その発言と同時に相手も影に魔術を込める。

ここからは影の押し合いだ。

が、そんな真っ向からやる気はない。

「影分身」


「「光襲の矢・雨!」」


俺は分身を出し、分身は相手に光の矢を放った。

「なに!?」

「別に真剣勝負してるんじゃないんでね」

相手が怯み、影の力にムラができた。

その瞬間を見逃さない。

俺は影の領域に最大限の力を込めた。

そして影は、とうとう俺の影に飲み込まれた。

「しま…った」

「お前の負けだ」

俺はつかさず分身を出し相手に剣を向けさせた。

相手はというと、


影の雨(シャドーレイン)!」


攻撃しようとしていた。

…しょうがない。


「「「「「「断地!」」」」」」


分身全員が断地を放ち、相手にぶつかった。

「カハッ!…」

相手は気絶した。

そりゃそうか。

加減したとはいえ奥義6発だ。

相当なダメージだろう。

『ナナ師匠、ラーラ。終わりました』

そう言うと、地上から2人が降りてきた。

「まさか本当に成功するなんて…」

「影纏先生。すごいですね…」


「それはあとで。まずは救出するぞ。もうすぐこの空間は壊れる」


「「え!?」」


数分後。

「ハァ…ハァ…」

「レオ…突然無茶言わないでください!」

俺達は被害者を救出して地上に出た。

いや…しょうがないじゃないですか。

術者気絶しちゃったんだもん。

「まあ…これにて解決です」

「はい…お疲れ様でした」

「「「お疲れ様でした」」」

「今日はもう遅いから帰りなさい。後始末は俺がしておく」

「ありがとうございます影纏先生」






「…以上が今回の事件の真相です」

翌日、俺はジルさんに報告に行った。

「犯人を調べたところ、人さらいの一味だったようで、自分が魔力を吸った相手を売り払おうとしていたらしいです。幸いなことに、売り払われる前だったようで、全員無事でした」

「そうでしたか。全員無事で良かったです」

というわけで一件落着である。

「報酬の方はどうしましょう?」

「自分はこれから業務があるので、ナナ師匠にお願いします」

「わかりました。届けておきます」

俺は話を終えて理事長室をあとにした。

その後、ナナ師匠に届いた報酬が金貨60枚という大金だったので、参加者全員で10枚ずつ割ったのは、また後日の話である。


次回の更新は1/20(火)です

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