42話 面接沙汰
ラボを手に入れ、物品を買ったあと、俺は早速サークル募集のポスターを作った。
頭に思い浮かべた絵を水魔術やら火魔術やらでプリントし、それを各階1枚ずつ貼っていく。
ちゃんと許可は取った。
あとは明日を待とう。
ということでその日は寝た。
翌日。
俺は通常業務を終えて、早速ラボに向かった。
ラボはちゃんと地図で示されているから、人が迷うことは多分ないだろう。
…いや、この広さだとわからんか。
ラボの前についた。
…え?
「なんじゃこりゃ…」
そこには人、人、人、…
長蛇の列である。
なぜこうなった?
長蛇の列の原因がなんとなくわかった。
結論を言うと俺だ。
「あの影纏先生がサークルを作った!」
「ついに影魔術研究会ができた!」
ということで噂がみるみる広がり、こうなったらしい。
しかも、中には保護生徒の分身もいた。
これは…やばいな。
いっぱいいるのはありがたいが、養いきれない。
2,3人いれば良い方だと思っていたが…
「…しょうがない」
なら選抜するしかない。
「面接をしよう」
ということで面接の始まりだ。
定員は5人。
俺が直接面接し、意欲がある人などを採用する。
…と言っても意欲か。
…能力と現状についても加えておこう。
あとはそうだな…できるだけ生徒の特徴が偏らないようにしよう。
保護生徒もいるようだから、そこの人たちも1人か2人入れたい。
となると定員5か…
6にしよう。
「じゃあ始めます。最初の人どうぞ」
こうして、サークルでは稀な面接試験が始まった。
「失礼します」
最初に入ってきたのは若い男子生徒だ。
頭には1本の小さな角がある。
…ってことは鬼族だな。
「それでは面接を始めます。まず、このサークル加入の希望理由はなんでしょうか?」
「はい。自分は現在、鬼族の戦士団への推薦が来ているのですが、魔術がまだ未熟で、実力が不足していると考えています。自分は魔術の中だと影魔術が得意ですので、それらを深めたいと思い、希望しました」
なるほど〜。
理由はしっかりしてるな。
「では次の…」
と、こんな感じであとは能力や経歴について聞いていく。
1人だいたい5分が目安といったところだろうか。
「…面接は以上です。後ほど結果をお伝えします。退室してよろしいですよ」
「はい。失礼しました」
とまあ、ざっと内容はこんな感じだろう。
…ペース上げないとな。
「影分身の…」
…じゃなくて!
「影分身」
俺は6体の分身を出した。
「1人だいたい5分だ!頼むぞ!」
「「「「「「了解!」」」」」」
ここからは分担作業だ。
効率を上げるために、分身6体と俺、あわせて7人で面接する。
「次の方どうぞ」
「その次の方」
「さらに次の方」
「次の方も」
「そのまた次の人」
「次の人も」
「次、どうぞ」
効率は見事7倍に上昇した。
「よし。この調子で行くぞ!」
「「「「「「おう!」」」」」」
「次の方〜」
面接を始めて30分くらいたった。
まだ列は続いているようだ。
さて次は…
「………」
すると、見覚えのある人が入ってきた。
いや、分身が入ってきた。
「カナルか」
…さてどうするか。
カナルの分身は会話ができない。
どうするべきか。
すると、カナルが何かを出した。
「ん?それは…」
出したのはノートらしき紙の束だった。
そして、書き始めた。
「(これで会話します)」
とノートに書かれていた。
あ〜。
字で答えるということか。
なら…
「わかった、なら始めよう。君がこのサークルを希望する理由は?」
そう聞くと、カナルは書き始めた。
「(私は諸事情によって、部屋から出ることができません。それによって、他者との交流がありませんでした。また、私は攻撃に特化した魔術が苦手です。なのでこの通り分身も結界なしでは保てません。今まで学校や他の人の役に立つことができませんでした。ですが今回、ほとんどの人ができなかった影魔術の研究が始まったことを聞き、『これを通して役に立ちたい』と思いました。なのでこのサークルを希望しました)」
字だけなのに、思いが伝わってくるものだった。
…まず次だ。
「次に、あなたの得意分野を教えてください」
再びカナルは書き始めた。
「(得意は結界と治癒、多少水もできます)」
影はないか…
まあしょうがない。
「最後に、この研究で今後どのようなことをしたいか教えてください」
そう聞くと、再び書き始め…
…なかった。
途中でカナルはペンを止めた。
そして、
ビリッ!
そのページを破り捨てた。
え?どうしたんだ?
カナルはその勢いのまま書き直し始めた。
「(いつか、友達の役に立つため)」
………。
…簡潔だった。
面接試験としては少なすぎる文量だった。
けれど、それは俺の心に強く響いた。
なぜだろう?
俺が旅をする理由に近いからだろうか?
俺はその瞬間、カナルの採用を決めた。
ひいきしたつもりはない。
けれど、俺はここで採用しないと後悔する。
そう思ったのであった。
面接はそこから約1時間後に終わった。
面接総人数120人だ。
エグすぎる量だ。
さて…ここから選んでいく。
合格率1/20か…
低いな…。
まあしょうがない。
「分身たちよ…心の中に『こいついいな』というやつを思い浮かべろ。読み取って決める」
「何人だ?」
「…3人でいこう」
「「「「「「「フンッ!……」」」」」」」
俺達は3人の人物を思い浮かべた。
「さて、こいつらについて調べるぞ」
「「「「「「了解」」」」」」
*ここからは少しの間、会話のみをお楽しみください…
「こいつの経歴が嘘くさいんだが?」
「んじゃ優先度下げよう」
「できれば違う分野と種族がいいよな」
「それは確かに…」
「獣族か…初めて見た」
「魔術師は階級も基準か?」
「そこはあまり気にするな」
「年齢は?」
「それを気にしたらきりがないだろ」
「でも若い子欲しいな…」
「誰かこいつを成敗してくれ」
「そもそも何人だっけ?」
「6人って何回も言ってんだろ!」
「時間がねーぞ!」
「もうそんな時間なのか!?」
「急げ急げ!」
「レオリオス達!この中にサークルクラッシャーがいるんだが!?」
「「「「「「即刻除外!!!」」」」」」
「…ハァ〜………」
「お疲れ様です。レオ」
その後、俺達は3時間話し合い、採用者を決定した。
俺の体力も魔力ももう限界である。
「合格者への伝達って終わりましたか?」
「あ…まだやってないです」
「なんなら私とカオルでやってきますか?」
「お願いしてもいいですか?」
「わかりました。やってきます」
そう言って、ナナ師匠はカオルを連れて伝達に向かった。
…ダメだ。
眠すぎる。
今日は飯食って寝よう。
翌日。
俺はラボにいた。
そして、採用者もまたラボにいた。
6人。
男女3:3のいい感じのバランスである。
軽く説明しよう。
モラ・メンズ
ドワーフの13歳の男性。
土魔術を王級まで習得している。
温厚そうな3年生である。
エル・ドルトー
獣族の17歳の女性。
光魔術と火魔術を得意としている。
猫耳が特徴の4年生である。
ラーラ・センター
心伝族の15歳の女性。
水魔術と風魔術、影魔術を特級まで使う。
赤髪が特徴の4年生である。
ライナ・ヘリック
竜人の10歳の男性。
ここの魔術に得意不得意はないが、混合魔術の扱いに長けている。
黄色い目が特徴の2年生だ。
フェイ
獣族と三眼族のハーフの16歳の男性。
近年では三眼族の迫害により全く見なかった三眼族と別種族のハーフということで、命を狙われる可能性があるため、保護生徒として入学している。
風魔術と影魔術を得意とする他に、獣種の声が聞ける。
また、個人的に獣種召喚についても研究している。
4年生だ。
カナル
種族不明、年齢不明の女性。
保護生徒である。
結界魔術と治癒魔術を得意とし、水も扱える。
5年生だ。
「よし、今日からこのメンバーで活動します。よろしくお願いします」
「「「「「よろしくお願いします」」」」」
5人の声が聞こえた。
どうやらフェイの分身は喋れるらしい。
ん?
なぜ面接したはずなのに知らなかったのか?
保護生徒なのに本人が来たからだ。
思わず分身が「なぜ来た!!?」と叫ぶくらいのことだった。
その話はおいておこう。
これでサークルは完成した。
これからどんどん活動していこうと思う。
…訂正。
無理のないレベルでやっていきます。
おまけ話
実は面接にはリューも来ていた。
しかも講師ではなく研究員としてだ。
レオはそれを見て「テメーは何しにきた…」と、あまりの疲れでブチギレたらしい。
結果はもちろん不採用である。
「顧問でもいい!」とせがんだらしいが、無論、拒否されたらしい。




