41話 サークルを設立せよ
特別講師就任から1ヶ月。
この国に来て2ヶ月がたったある日。
俺は理事長に呼び出されていた。
「…えっと…理事長。本日の要件は?」
「はい。実はレオリオスさんに頼み事がありまして」
「頼み事…ですか」
頼み事…なんだろうか?
「あなたに、サークル設立を要請します」
「…え?」
サ、サークルだと?
「具体的な内容を聞いてもいいですか?」
「それは引き受けてくれるということですか?」
「内容次第です」
ただでさえ人より多忙なんだ。
理由がないと困る。
「この学校には様々なサークルがあるのはご存知ですね?」
そう、この学校には複数のサークルがある。
魔術を研究したり、剣術を共同開発したり、バンドを組んだり、経済の追求をしたりなど、語りだしたらきりがない。
「はい。存じております」
「そのサークルの魔術研究の分野において、影魔術のみ、サークルがなかったのですよ」
「それはなぜでしょうか?」
「影魔術は具体的な魔術原理がまだ不明な点が多いかつ、王級と神級を使える人物があまりいないのです」
「なるほど…」
「過去に使える人物はいましたが、具体的な構造までわかっているひとはいませんでした」
「…なるほど……」
そうすると、ジルさんはニコッと笑みを浮かべた。
「先日までの影魔術の講義、拝見させていただきました」
あ…そういうことか……。
「あそこまで影魔術を熟知している方は始めてみました」
「まあ、影魔術で神級まで開発しているので」
「ぜひ、この学校に唯一ない影魔術研究会を作って欲しいのです」
なるほど。
全魔術コンプしたいってことか。
…断ったらあとに響きそうだな。
てか、この人怖いし。
「わかりました…引き受けましょう」
「ありがとうございます。では、サークルについて軽く説明します」
そういってジルさんはサークル活動について説明を始めた。
「では、失礼します」
内容が濃いせいで、結局30分も説明が続いた。
部屋を出ると誰かがいた。
「ん?分身?」
カナルだった。
今日は分身を教える日だったのだ。
「じゃあ、中庭でやるか」
俺はカナルを連れて中庭に移動した。
カナルの進捗はというと…特に進展はなしだ。
まあ、まだ始めて1ヶ月もたってないし、しょうがない。
しかし、少し変化があった。
分身の手に魔力が込められるようになっていたのだ。
つまり、もう少しで中級レベルにいきそうなのである。
行きそうなのだが…
…なんだろうか?
分身のレベルは上がっているはずなのに、何故か左耳の歪みが直らない。
魔力が左耳周辺の形を捉えきれてない?
それとも本体に傷があるのか?
どちらにしろ謎だ。
顔の形もまだはっきりしていない。
…まあ、それは後回しでもいいか。
「カナルさん。君はどうして保護生徒なんだい?」
喋れないのは承知の上で聞いてみた。
そうすると、カナルは自分の耳と目を指さした。
「…あ、エルフ?」
そう聞くと、カナルは手で三角を作った。
「惜しい…ってことか?」
カナルは首を縦に振った。
…惜しいって…どゆこと?
そしてカナルは額を指さした。
「…?」
どういうことだ?
額になにか特徴のある種族?
いまいち動作の理由がわからない。
カーン…カーン…
あ、時間か…
「悪い!これからサークルの準備をするから行くよ。またな」
そう言って俺はその場をあとにした。
しかし…何を伝えたかったのだろうか…
サークル設立に伴って行うことは3つである。
1つ目は活動場所の確保。
サークル活動である影魔術の研究をする部屋を用意する。
試したりもしたいから、できるだけ広い部屋が欲しい。
2つ目は必要な物品の調達だ。
部屋にあるかもしれないが、魔術研究や実験で使うような装備や道具、メンバーの机等の物などだ。
3つ目はメンバー募集。
これは一番重要だ。
この学校のサークルにはカースト順位が存在するらしい。
ただこれは差別するものではなく、ただの評価基準にそって決められたサークルの功績順位みたいなものらしい。
よりカースト順位の高いサークルは下位のサークルよりもより多くの支援を受けられるらしい。
まあ、下位のサークルに出される支援も十分な量なのだが。
理事長いわく、「競争心を煽ることで、より探求能力を高め、より多くの発見をするため」だそう。
ありきたりではあるが、賢いやり方だと思う。
話を戻そう。
このカースト順位は、設立初年は特にないのだが、次年からは評価対象に加わる。
そこまでにどれだけの人気と功績を出せるかが重要らしい。
つまりは人手だ。
人手が多いほど来年が楽になる。
以上の3つが設立時に行うことだ。
俺はまず研究の部屋、すなわちラボを探しに行った。
学校内をグルグルして最適な場所を探す。
…その前に、事務室に地図を見せてもらいに行った。
地図を見ていると、
「…何だここ?」
一箇所、建物にしては不自然な形の場所を見つけた。
「すみません…ここって何があるんですか?」
「え?あれ?なんだここ?見たことないな」
どうやら事務室も知らないらしい。
「すみませんが…理事長に確認をとってくれませんか?」
「え?はい。わかりました」
ということで、俺は理事長室に行き、ジルさんに聞いてみた。
「…?あ、あぁ〜〜〜!」
「なんかわかりました?」
「ちょっと待ってください」
そう言ってジルさんは棚をあさり始めた。
「……あった!」
ジルさんは棚から古い紙を持ってきた。
「これは?」
「改築前の学校の地図です。ここ見てください」
見ると、俺が気になっていた場所にはやや大きな部屋が描かれていて、そこには「図書館」と書かれていた。
「おそらく、この学校の旧図書館ですね。本が多くなったので移動したと聞いています。おそらくそれから使っていないんでしょう」
「…ちなみに何年くらい?」
「おそらく…50年くらい?」
マジか…
「スペースはあると思いますが…開けてみます?あの部屋?」
「…ちょっと見てみましょう」
俺はあのあと、ジルさんとともに1階にあった例の場所に行った。
「壁ですね…」
「…ん?」
俺は壁にあるものを見つけた。
魔法陣だ。
それもかなり古い。
「何かの魔術でしょうか?見たことない魔法陣です」
…気になるな。
俺は試しに模倣眼で見てみた。
……この眼…魔法陣も解析できるんかい。
なんとなく構造が頭に入ってきた。
…え?
マジ?
「ジルさん。ちょっと下がってください」
「え?はい」
俺は魔法陣に手を当て、頭に入ってきた通りに魔力を流して、術の発動をしてみた。
ズズズッ…
そうすると、壁がみるみるうちに割れていって…開いた。
「隠し扉!?」
やっぱりそうか。
なんか構造が結界解除に似ていたからまさかとは思ったが…
俺達は恐る恐る中に入った。
中はとてもホコリ臭…
…くない?
あれ?
「き、綺麗だ」
「ホコリ1つありませんね」
え?
なんでこんな綺麗なん?
ふと天井を見ると、大きな魔法陣があった。
俺はつかさず模倣眼で見る。
どうやら大型の結界魔術のようだ。
なるほど。
これで中の環境を保っていたのか。
中は結構広い。
…あれ?
即決じゃね?
「ジルさん…ここで決定でもいいですか?」
「構いませんよ。ぜひここで研究してください」
こうして、ラボを手に入れた。
よし。
買い出しに行こう。
決まったのはいいが、やることはまだまだ山積みである。




