37話 職場訪問
「入国手続きお願いしまーす」
季節はまだ冬。
もうすぐ春になるが、まだ雪が積もっている。
俺達はドラマルトの国門にいた。
いよいよ入国だ。
「次の方々〜」
俺達の番だ。
…一応言っとかないとまた疑われるか。
「あの〜…」
「はい。どうされました?」
「この子、実は…」
「…ん?あぁ!三眼族ですね」
あれ?思ってた反応と違うんだが?
「入国には別料金が発生しますので、お支払いお願いします」
「あれ?入国禁止とかじゃないんですね」
「はい。この国ではすでに『三眼族との研究と体制構築』という名目で入国は禁止されていません。しかし、それをよく思わない人もいますので、一応料金を頂戴しています」
「なるほど。わかりました。ちなみに料金の方は?」
「金貨1枚です」
……まあ妥当か。
俺は料金を支払って入国した。
入国後はすぐ学校に向かった。
「すみません」
「はい。どうされましたか?」
「自分、特別講師の依頼をもらったのですが…」
「確認いたします。依頼書などはお持ちですか?」
「あ、はい」
俺は学校からの手紙を渡した。
「…あぁ!影纏さんですね!」
「あ、はい。そうです」
「お待ちしておりました。まさか記載日時ピッタリとは」
俺はこの前、学校に返事の手紙を書いていた。
そこに書いた約束の日が、実は今日である。
「旅が順調に進みまして」
「かしこまりました。理事長室にご案内します」
俺達は全員で理事長室へと向かった。
コンコンコンッ
「理事長!影纏様一行がお越しなさいました」
「…部屋へどうぞ!」
俺達は理事長室に入った。
部屋には沢山の本があり、部屋の中央には一人の女性がいた。
「失礼します」
「あ〜、かしこまらないでください!私が招待したのですから」
いや、そういうわけにはいかんやろ。
「とりあえずお座りください」
俺達は置かれていた横長のソファに腰を掛けた。
…4人座れたな。
このソファ、広くね?
「本日はお越しいただきありがとうございます。来てくださったということは、今回のご依頼を引き受けていただけるということでしょうか?」
「はい。そのつもりです」
「ありがとうございます。では、手紙にも記載しました通り、部屋と研究スペース、報酬はきちんと用意させていただきます。他になにか要望などはありますか?」
要望か…
まあ、ないわけではない…か…
「…では1ついいですか?」
「はい。できる範囲であれば」
「この学校の前に便利屋の掲示板の設置って可能でしょうか」
「できますよ」
「では、そちらをお願いします」
「わかりました。部屋に関しましては、レオリオス様のお部屋と、女性陣のお部屋をご用意いたします」
その会話の後、ナナ師匠が質問した。
「…あの、1つ質問なんですが…」
「はい。なんでしょう?」
「ここって三眼族の受け入れって大丈夫なんですか?」
「あ!もしかしてそちらの女の子が…」
「はい、手紙に記載しました三眼族の少女です」
「大丈夫ですよ。きちんと受け入れ体制を確保しています」
「そうですか!ありがとうございます」
とりあえず、生活は困らなさそうだ。
「では、ここからは学校を案内させていただきます。私についてきてください」
ここからは、昔懐かしい学校探検の始まりだ。
「まずは集会広場です」
順番的には、1階の広場からぐるりと1周して、2階、3階と上がっていき、最終的には28階にある理事長室に戻ってくる。
28階か…
高いな…
「この建物の構成ってどんな感じなんですか?」
「構成としましては、今いる広場を中心とした最も高さのあるエリアが中央エリア。ここから向かって東にあるのが研究エリア。西にあるのが保護生徒エリアです。中央エリアでは主に集会や発表会、合同講義等が行われます。研究エリアでは生徒と講師が各々の研究をしたり、分野に別れた講義に参加したりしています。また、1階から10階が生徒の活動場所であり、区間的には一番敷地が広いです。11階から20階には宿舎と食堂があります。21階から25階には資料室、図書室があります。資料室、図書室はすべて一体化しており。学校内の部屋の中では体積が一番広い空間です。そして、26階が魔法陣管理室、27階が会議室、28階が事務室と理事長室になっています」
「随分とたくさんありますね」
「すみません。長い説明になってしまって」
「あの、さっき説明にあった『保護生徒エリア』とはなんですか?」
「そこは、様々な理由で移動困難だったり、命を狙われたり、または人との接触を好まない生徒が寝泊まりと研究をしている場所です」
すべての人を受け入れてるってわけか。
「あと、保護生徒エリアは基本立入禁止です。担当者のみが出入りできます。講師も講義や当直以外では出入りしません」
おや、これまた厳しい。
「わかりました。覚えておきます」
「では、次の場所に案内いたします」
5階まで登ってきた。
研究エリアの研究室の様子を見たり、中庭を見たりした。
「次は室内運動場です。運動場は5階から7階までの3階分の高さになっています。広さも十分用意されております」
「室内なのにこの広さですか…」
思わず驚愕してしまった。
だが、それはまわりもそうだったらしい。
「あれ、新しい特別講師の人?」
「…ってかあれって!?」
「影纏だ…」
「じゃああれは不可視のナナ・リーフさん!?」
「すげー…初めて見た」
相変わらずまわりの視線が多いな…
「あ、そうだ…」
「…?理事長。どうされたんですか?」
「せっかくなので、皆さんに実力を見せてくれませんか?」
「え!?」
突然すぎるだろ。
「いいですが…どうやって見せればいいですか?」
「そうですね…あ、いた!」
ジルさんは誰かを見つけて、呼びに行った。
「この学校でもかなりの実力を誇る『シン・レース』くんです。彼と手合わせしてくれませんか?」
「「え!?」」
俺と、そしてシンくんの声が被った。
「理事長!僕はまだそんな実力ないですよ!」
「まあ、経験だと思ってやってみてください」
「…まあ、構いませんが」
大丈夫かな?
だが、俺の前に立ったシンくんは表情が変わった。
「お願いします!」
顔には笑みがこぼれている。
こいつ…なんかリューに似てるな。
「レオリオスさんもいいですか?」
「はい。いつでも」
「では…」
突然だが、ガチでやろう。
「はじめ!」
「周花!」
いきなりシンくんは剣術の奥義を出してきた。
すげーなこいつ。
周花ができるのか。
「影の領域、岩石壁!」
俺は分身を出し、全方位に壁を作った。
「とった!」
ガラガラガラ…
壁は一瞬で崩れた。
が、シンくんは驚いた。
「い、いない?」
中に俺はもういない。
早速試してみたが、閃光移動は成功した。
「はい、炎戒の龍」
「え?」
俺はシンくんの後ろに回り、炎の龍を構えた。
「そこまで!」
シンくんは腰を抜かしていた。
まあ、いきなり目の前に特級魔術があったんだ。
そうなるわ。
「いい動きだったよ」
「あ、ありがとうございます!」
パチパチパチパチ…
運動場内は拍手に包まれた。
…緊張疲れが来たな。
とっとと出るか。
そう思ってあたりを見回した。
…ん?
「理事長?」
「どうしました?」
「なぜ本体がいない分身がいるんですか?」
そこら中に術者本人がいない分身が何人もいた。
「あの分身は保護生徒の皆さんの分身です」
なるほど。
それでコミュニケーションしたり、講義を受けたりしてるのか。
「では、次の場所に行きますか」
「はい」
そこからは、学校内の教室等をまわった。
結構すごいシステムでお腹いっぱいである。
「最後は図書館です。階段は酷ですので、これを持ってください」
そう言われて、俺達はペンダントを渡された。
…なんだこれ?
「では、この円の中に入ってください」
「は、はい」
入った途端、ペンダントが光った。
そして、体が宙に浮いた。
天井がそれと同時に開いていく。
「このペンダントは風魔術が組み込まれていて、特定の場所に入ると発動し、ペンダントの所有者を浮遊させます」
なに!?
つまりこれは飛◯石か!
ロム◯カ・パ◯・◯ル・ラピ◯タがいたら高笑いしているところだろう。
そう「はっはっはっはっはっ」って感じに。
…話を戻そう。
つまりこれがエレベーター代わりということか。
便利だな…
その後は図書館を見て理事長室に戻った。
「では、また後日」
「はい。今度は就任の儀で」
俺達はその後解散し、各々の部屋へと向かった。
今日は休もう。
…明日からは、ニナも探さないとな。
ー???視点ー
背は高かった。
聞くと、もうすぐ年齢は15になるらしい。
髪はところどころに白があった。
相当な修行をした証だろう。
そうか…あれが…
「影纏の…」
私は少し、笑っていた。




