32話 王と妹と指南役
この国に来て3ヶ月。
俺は急遽王宮に呼び出された。
突然のことで動揺していたが、俺は急いで王宮殿に向かった。
「そこの者、要件は何だ?」
門番に止められた。
が、焦らずに俺は手紙を見せた。
「入城を許可する」
俺は城に入り、王室へ直行した。
だが、迷ってしまった。
この城…中が複雑すぎやしませんか?
城内でウロウロしていると、
「おい、貴様何をしている?」
振り返るとそこには騎士のような服を着た人がいた。
「あ!あなたは…」
よく見るとその人は、以前国門で門番をしていた男の1人だった。
知ってる顔に会えて少し安心した。
「実は、王室に行きたいのですが…迷ってしまって」
「そうか、なら案内しよう。ついてこい」
俺は門番の男に連れられ王室へ向かった。
数分歩くと、目的地についた。
のだが…
「あの…」
「なんだ?」
「王室の入口って…こんなに小さいもんでしたっけ?」
その扉は王室と言うより、ただの部屋だ。
ごく一般的な一人部屋。
俺のイメージとしては豪華な両開きの扉があって、かなり豪華そうな材質だという感じなのだが、目の前にあるのはごく普通の木の片開きの扉だ。
はっきり言うと、王室とは思えない。
「国王の趣味だ。気にするな」
「はぁ…わかりました」
会話を終えると、門番は歩いてどこかへ行ってしまった。
「…入るか」
俺は呼吸を整えてから、扉をノックした。
「…どうぞ!」
返事が帰ってきたので扉を開けた。
「失礼しま…す…」
中に入ってまず一番に目が止まったのは国王と国王がいる席だ。
おそらく仕事用のものだろう。
目の前にはかなり大きい机があった。
そこだけ見ればまだ王室と言えるのだが、問題はその他だ。
部屋を見回すと、あるのはベット、化粧台、本棚、食事関連等々。
大きいものはそれほど量がない。
にも関わらず部屋のスペースがだいぶ埋まっている。
それくらいの広さしかなかった。
もはやただの部屋だ。
申し訳ないが、王室とは思えない。
「よくぞお越しくださいました」
「いえ、王宮からの呼びかけですから」
まあ部屋は関係ない。
問題はこれからだ。
「早速ではありますが、本日自分をお呼びになられた要件はなんなのでしょうか?」
そう聞くと、国王の隣りにいた護衛?秘書?であろう女性が話し始めた。
「先日の舞踏会にて、あなたの実力や人柄を知ることができました。それを踏まえて、あなたにお願いがありお呼びしました」
「なるほど。では、お願いというのは?」
そう聞くと、護衛と思われる女性は国王に視線を向けた。
「ローザ様。ここからはご自身で」
「…わかってます」
そう言うと国王は真剣な眼差しでこちらを見てきた。
え?なに?
むちゃくちゃ怖いんだが…
ゴクッ…
「レオリオスさん」
「はい…」
「私に………」
まじでわからん。
何が目的だ?
依頼か?
それとも服従か??
「…教えてください」
…ん?
「すみません。もう一度伺ってもよろしいですか?」
そう聞くと国王は深く息を吸った。
「私に!魔術を教えてください!」
…ふぇ?
魔術!?国王に!?
「な、なるほど…」
断る理由はないのだが…
「あの、自分はあと3ヶ月で旅たつ身なのですが…それでもよろしいのですか?」
「はい!その期間だけでも!」
………。
「自分は今、妹にも手ほどきをしていまして…その…2日に1回という形になるのですが…よろしいですか?」
「はい!」
…勝負あり、か…
「わかりました。その命、謹んでお受けいたします」
「…!ありがとうございます!」
そう言って国王は頭を下げた。
「あ!?頭を下げないでください!」
こうして、俺に弟子2号(ローザ・ジーク様)ができた。
「「国王指南役!?」」
事務所に帰った後、全員に報告した。
ナナ師匠とカオルの反応はこんな感じだった。
かなり驚いていた。
ルカはというと、状況があまり掴めていないらしく、ポカンとした顔をしていた。
報告後、カオルが聞いてきた。
「お兄ちゃん。もしかして僕との修行は中止?」
「ん?いや?そこは調節して2日に1回にしてもらったから問題ないよ」
「本当に!やった〜!」
「ただし、早く座学を終わらせなさい」
「ギクッ…はい…」
しかし、また新しい予定ができてしまった。
とっとと研究を終わらせなくては。
「ナナ師匠」
「ん?どうしました、レオ?」
「1週間で研究を終わらせようと思っています。その間の依頼と研究サポートを頼みたいのですが…」
「あぁ〜!構いませんよ」
「ありがとうございます」
よし。
まずやるべきことは終わったな。
「レオさん」
そう思っていると、ルカが話しかけてきた。
「私は何をすればいいですか?」
…あ。
そういえばルカにはしばらくカオルの監視しか頼んでなかったな。
…そうだ。
「じゃあルカ。明日俺と一緒に来てくれ。ローザ様への指南のサポートを頼む」
「あ、はい!」
ちょっと嬉しそうだった。
…そうか。
きっと少し寂しかったんだろう。
ならしばらくルカのことも構ってあげることにしよう。
ルカはまだ5歳だ。
まだ人に甘えたい時期だ。
なら甘えさせてやるのが大人の務めだ。
…まあ俺はまだこの世界の成人ではないが。
この後は今後について多少話し合って解散した。
翌日。
俺はルカを連れて再び王宮に…
…は行かなかった。
俺とルカは王宮の近くにある「修行場」と書かれた場所に来ていた。
この国は王宮を境に西が街、東が森になっていて、森は剣士、魔術師、体術使いの修行場になっているらしい。
かなり広い土地だ。
そしてなぜここなのかの理由は2つある。
1つは国王をあまり目立たなくするため。
言わばこれはお忍びのお出かけなのである。
一般市民にはあまり目のつかないところでやるのが最適だろう。
もう1つはスペースの問題だ。
そもそも王宮内には修行できるだけのスペースがない。
だからここで行うことにした。
しばらくすると、運動着のようなものに身を包んだローザさんと護衛の女性改め、セリーヌさんが来た。
「では始めますか」
「はい!よろしくお願いします」
「まず確認なのですが、ローザ様について教えていただいてもよろしいですか?」
「私について…といいますと?」
「なんの術を何級まで使えるのか等です」
「あ、わかりました」
ローザ・ジーク。
年齢19歳のエルフの女性。
魔術はすべて中級、流剣術、衝術、流術を初級まで使える。
一番驚いたのは、バルト家の分家であるということ。
すなわち、俺の遠縁の親戚ということになる。
後でパルト家とジーク家の関係を調べておこう。
「では早速始めます、まずは得意魔術を調べましょう」
「はい!」
こうしてローザ様の修行生活が幕を開けたのだった。




