30話 招待状
国に来て2ヶ月。
最近では事業も安定し、特に危険という依頼も減った。
修行と研究もぼちぼちといった感じだ。
そんな今日は依頼に行っていた。
依頼の内容は「巨大猪の討伐」である。
巨大猪。
通称「畑荒らしの代名詞」
基本的には草食であり、人はめったに襲わないが、農作物を荒らす。
しかもこちらが襲いかかると、口から魔術で攻撃をし、猪なのに頭にある1本の角と口の2本の牙で相手を貫く。
迷惑かつ強力な厄介者だ。
討伐難易度はまさかのAだ。
幸い、こいつは群れないので単体だ。
その討伐にナナ師匠と2人できていた。
カオルとルカは事務所で留守番をしている。
カオルは「一緒に行きたい!」と駄々をこねていたが、まだ勉強があった。
だから、俺はルカに「見張りよろしく」と伝えて2人をおいてきた。
俺達は国の近くにある林に来ていた。
どうやらここで巨大猪が出るらしい。
俺は巨大猪をおびき寄せるために、野菜の匂いを充満させるおこお的なものを出した。
数分後、巨大猪が現れた。
高さ2メートル、全長3メートルの巨大な猪だ。
「レオ、すぐ終わらせましょう」
「はい」
ナナ師匠が詠唱をはじめたのを確認した後、俺も杖を構えた。
猪は俺達に向かって突進してきた。
どうやらもう敵判定らしい。
「光襲の矢・雨!」
「氷破!」
猪は俺の放った光の矢に切りつけられた。
そして、その傷口から氷が生えてきた。
猪は血を吐き倒れこんだ。
どうやら氷は体内にも生成されているようだ。
周囲は夏とは思えない冷気に包まれ、猪はそのまま凍った。
「討伐完了ですね」
「はい。では猪を運んで帰りましょうか」
俺は猪を担いで帰ろうとした。
その時、
ヒュッヒュッヒュッ!
辺りの冷気を斬るような音が響いた。
その音に俺は振り返った。
ドドドッ!
「ゴハッ!」
俺の頭と胸と腹に何かが突っ込んできた。
いや、刺さった。
よく見てみると、それは鳥だった。
鳥の足には紙がついていた。
これは…伝達鳥!?
てか力…強くね!?
「ゴエーーーーー!」
俺は鳥3体の勢いのまま飛ばされた。
ドーーン!!
そして近くにあった岩の壁に衝突した。
「レオーーーーーーーー!!!」
あれ…この感じ…
昔あったような。
あ…気絶す…
……気絶した。
気絶しているさなか、夢を見た。
昔の夢だ。
ベースバックを担いで、橋の上を鼻歌を歌いながら自転車で走る。
橋は緩やかな放物線を描くような形になっていて、最初は走るのがきついが、段々と楽になり、風に当たる。
ふと、俺は後ろを振り返る。
後ろにあるはずの橋は崩れるように消え、向こう側が光りに包まれる。
光の向こう側にはエイサールの麦畑が広がる。
人も見える。
剣を振るバオス父さん。
談笑をするナナ師匠とドーラ師匠。
こちらを笑顔で見つめるニナ。
ゆりかごの中にいるまだ小さいカオル。
………。
そして、光のさらに奥に不気味な色が見える。
そこには全身ローブ姿のあの女が立っている。
なぜ…お前を夢でも見る羽目になってしまうんだ…
………。
……オ…。
レ……オ……。
「レオ!」
「…!?」
目覚めた。
俺はどうやら1時間ほど寝ていたらしい。
「大丈夫ですか?治癒はしましたが」
「はい…一応大丈夫です」
初めてじゃないからどうってこと無い。
…とまでは言わないが、まあ大丈夫だろう。
「それで…あの伝達鳥は?」
「あ、そこにいますよ」
ナナ師匠の指を指した方向を見ると、きれいに並ぶ3羽の伝達鳥がいた。
「俺に3羽とも飛んできたってことは…」
「はい…おそらく全部レオ宛です」
そんな一気に来ることがあるんか?
まずいいか。
俺は3羽から手紙を受け取った。
その後、3羽は勢いよく飛び去っていった。
手紙3枚は、質の良い紙のもの、少し古めの紙のもの、ハガキサイズの紙のものがあった。
それぞれ見ていこう。
まずは一番小さいハガキサイズのものから。
相手は…ジークバルトの王宮?
何だろうか?
〜影纏 レオリオス・パルト殿〜
3日後に行われる舞踏会へ招待いたします。
国王からの招待でございます。
ぜひいらしてください。
〜ジークバルト王宮〜
なんかかしこまりすぎじゃね?
まあこの世界、敬語とかの使い方が前世の世界と違うみたいだし…違和感あるのは俺だけか…
ナナ師匠も普通に見てるし。
次だ。
次は古い紙のものからいこう。
誰からか…は実は正直わかっている。
前にもこの紙でもらったからな。
〜レオリオスへ〜
まずはナナとカオルの発見を嬉しく思う。
そして仇を名乗った女についてだ。
こちらも今捜索を始めている。
しかし、情報が少なく、捜索は難航している。
何か情報があれば随時連絡しよう。
だが、今回手紙を送ったのは別件だ。
どうやら竜獣の奴らに動きがあったようだ。
戦力増強を図ってか、竜人との争いが起きているらしい。
そこで、レオリオスに竜獣についてを探ってほしいと依頼が来た。
旅もあるだろうから後回しでいいが、できれば探ってほしい。
また何かあれば手紙を送る。
気をつけろよ。
〜ドーラ・コンドル〜
やっぱりドーラ師匠だったか。
しかし竜獣…
厄介な奴らが動き出したな。
探ってみよう。
そして最後は…
〜影纏殿〜
初めてお手紙差し上げます。
私は、ドラマルト国本学校の理事長でございます。
影纏殿の噂はかねがね聞いております。
ファジサイトでの活躍は、こちらドラマルトにも広まっております。
神級の影魔術を開発し、剣術も操り、竜族の秘術等も使えるとか。
そんな影纏殿に、来季より特別講師についていただきたいのです。
特別講師とはこの学校独自に行なっている、外部から神級の魔術師や剣士、体術使いを招き、在校生の研究のサポートや講習等行ってもらうものです。
さらに、特別講師の皆様もこちらの学校を使い研究をすることができます。
住む場所等もこちらで用意いたします。
期間は1〜2年程をお願いしたいです。
後ほど返事をください。
快い回答を待っています。
〜ドラマルト国本学校理事長 ジル・エンター〜
なんと送り主はドラマルトの学校の理事長だった。
来季…つまり来年の春からか…
「レオ、どうするんですか」
顔なども合わせたいな。
となると…今年の冬の初めにはもう出発しないといけない。
資金の関係もあるし…
そうは思ったが、
「断る理由は…無いですね…」
「そうですね……私は構いませんが、行きますか」
この国にはローブの女もニナもいなかった。
依頼の最中に辺りの村も回ったがいなかった。
ここにいる理由はあまりない。
ならば…
「行くことにしましょう」
こうして俺達の出発期間は4ヶ月後に決まった。
「ようこそお越しくださいました。影纏のレオリオス・パルト殿、不可視のナナ・リーフ殿…と…そちらは」
「あぁ、すみません。自分の連れなのですが…だめでしたか?」
「いえ、問題ありません。しかし国王謁見はそちらのお二方はできないのですが…よろしいですか」
「はい、構いません」
「かしこまりました。ではこちらへ」
3日後の夜。
俺達は招待状を頂いた王宮へと足を運んだ。
詳しく調べてみると、どうやらこの国では定期的に舞踏会を開き、国にいる権力者や貴族、二つ名持ちといった著名人から、抽選で選ばれた100人ほどの一般市民まで幅広く参加しているのだそうだ。
さらに、著名人は国王謁見の権利が与えられるのだとか。
まあ、俺はなぜか強制されたが…
中に入るととてつもない広さの会場が広がっていた。
何ここ?ベルサイユ?
とてつもない広さに圧倒されていると、
「影纏だ…」
「初めてみた…」
「…かなり若いな」
というような声が度々聞こえてきた。
この国に来てまだ2ヶ月だが、名前が広がっているようだ。
嬉しいことではあるが、やはり噂されるのはむず痒い。
そんなことを考えながら、俺は舞踏会の開始を待つ。
「国王陛下のお見えだ!!」
全員の視線が会場の奥、玉座の方に向く。
そこには高価そうな服に身を包んだ女性がたっていた。
かなり若い女性だ。
全員がその女性の方を向き、距離が近い人は頭を垂れている。
『もしかしてあの人が?』
俺は念話でナナ師匠に問う。
『はい。あれがこの国の現国王、ローザ・ジークです』
まさか現国王が女性だとは…
しかも若すぎる。
多分ナナ師匠よりも若い。
この年で国王とは…
すごいと言うべきか、大変だなと思うべきか…
そう思っていると、国王が話し出す。
「本日はお集まりいただきありがとうございます。私は本日をもって、着任1年となります。皆様のお陰でここまでこれました。今宵はこの舞踏会を楽しんでいってもらえたら幸いです。どうかこれからもよろしくお願いします」
なるほど。
今日の舞踏会の目的は周年記念ということか。
国王が話し終えると、会場は拍手に包まれた。
いや〜。
やっぱ宴会みたいなのはこういう雰囲気が一番いいよな。
そう思いながら周りを見渡すと、所々に拍手をしていない者がいた。
そいつらはみんな国王を睨みつけるように見ている。
……なんか嫌な予感がするな。
頼むから、何も起こらないでほしいものだ。
そう思いながら、俺は食事の方へ向かった。




