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影を纏う転生者 〜平凡な高校生の異世界人生録〜  作者: 仮想猫
影纏の術師編 〜ジークバルト〜
32/50

28話 始動

「…レオさん!…レオさん!」

なんだろう。

なにか聞こえる。

もう少し…

寝させて…くれ…

レオさん!起きてください!大変です!」


「…!?」


ジークバルトに来て3日目の朝。

昨日の体験があまりにも衝撃的すぎて俺は疲れていた。

そんな中、ルカに叩き起こされた。

「ど、どうしたルナ?」

「早く事務所に来てください!」

え?俺寝起きなんだが。

まあいいか。

俺は不思議に思いながら部屋を出た。

今日は便利屋の開業初日だ。

初日だからあまり大した仕事は来ない。


はずだった…。


「何だこりゃ…」


部屋を出ると、そこには人がいた。

それだけじゃない。

事務所からカウンターの方へ出ると、そこには長蛇の列があった。

「ここが噂の便利やか」

「ここはあのナナ・リーフが経営してるらしいぞ」

「社員には影纏もいるらしい」

「とんでもないのがこの国に来やがった」

「ちょうど人手が欲しかったんだ」

「これでやっと討伐に行ける」

なんと初日から大盛況だ。

これは想定外だったな。

そしてそれはナナ師匠も同じだった。


『あ〜〜〜〜〜、頭がグルグルする〜〜〜!』


接客では平然としているが、念話で叫んでいた。

…すみません寝てて。

「ナナ師匠、手伝いますよ」

「あ、レオ!おはようございます」

俺がナナ師匠の近くに行くと、

「おぉ〜、あれが噂の…」

「ファジサイト闘技大会の勝者」

「番いの黒龍を2人で倒したという…」

「神級魔術師の…」

あ、まずい…

噂されている。

あまり注目を浴びるのはあまり得意じゃない。

どうしようか…

いや、ここは臨機応変に…

「ここからは俺も対応します!依頼の場合は俺の方へ、その他の場合はナナ・リーフの方へどうぞ!」






「「ハァ…ハァ…」」

接客が終わったのはそれから2時間後だった。

客の半分は依頼の申請だった。

掃除や商売の手伝い、配達といった雑用から、クエスト同行や討伐依頼といったものまで多数の依頼申請が来た。

疲れた。

手続きは忙しいし、接客で体力が持っていかれるしで大変だった。

「これがあったら見やすいだろう」といって客間に貼っていた板は依頼でびっちりとうまっていた。

「これは…全部なくなるのはかなり先になりそうですね」

「そう…ですね…」

「お兄ちゃん、ナナさん。僕も手伝うよ」

「ああ…頼む」

こうして、カオルが正式に事務所に入った。

まだ7歳の少女だぞ。

けどまあ…この世界なら問題ないのだが。

……大丈夫なのか?

道徳的に…。






翌日。

俺達はそれぞれ依頼を受け持ち、それの達成に向かった。

ナナ師匠とカオルは街の中での依頼に向かった。

今日は掃除や配達といった簡単なものを複数こなす予定らしい。

一方、俺は2つの依頼に向かった。

炎熊フレイムベアーの駆除」と「魔術鳥マジックバードの撃退」だ。

俺だけ討伐任務だ。


炎熊。

背中に炎を纏った熊。

主に自身の攻撃に炎をつけたり、火を吐いたりするらしい。

危険度はBで数は2体だ。


魔術鳥。

上級魔術と特級魔術を自由自在に使う全長4メートルの巨鳥。

知能が高く、狡猾な動きをするらしい。

単体では危険度A、3体以上でSになる。

個体数は不明だ。

俺だけ危険なのはちょっと納得いかなかった。

ナナ師匠に大丈夫なのか聞いてみると、

「レオなら大丈夫でしょう」

ということだ。

なんか適当だな。

けど実際そう思っているらしい。

まあ…頑張ります。






国をでて1時間くらいの場所に炎熊はいた。

2体両方いる。

「さて…やるか」

俺が近づき始めると、炎熊はすぐ俺に気づき、背中に炎をつけた。

そして、俺めがけて突進してきた。

水壁ウォーターウォール

2体の動きを水壁で受け止め、俺は交代した。

「悪いが、このあと別件もあるんでね。すぐ終わらせてもらうよ」

そういって俺は剣に剣力を込めた。

「断地」

斬撃は炎熊の首を同時に切断した。

「終わったな…」

俺は手早く炎熊の素材を集めた。

「さて、次の場所にい…」

そういった瞬間、


「キィーーーーーーー!!」


「へ?」

空からものすごい声が聞こえた。

これは、鳥の声だ。


「キィーーー」


「キキィー」


それも1体じゃない。

めっちゃ聞こえる。

うるさすぎる。


「…!?はぁ!?」


空には次の標的である魔術鳥がいた。

その数1、2、3、4…5体もいやがる。

「こんなのSランクとかって話の次元じゃねぇだろ!!!」

その後何をしたかって。

当然。


逃げた。


全力でジークバルトの反対方向へ逃げた。

10分くらい走り続けた。

そして…

「ここならいいな」

俺は止まって空を見上げた。魔術鳥はついてきている。

「影の領域」

俺は分身を4体出した。

そして分身は全員「炎戒の龍」の発動準備を始めた。

魔術鳥達はそれに気づき向かってきた。

準備にかかるのはだいたいあと9秒。


「いけるな」


俺は即座に飛行魔術を発動した。

そして月光斬を使って高く飛び上がった。

飛んだあと、俺は影の領域を見た。

発動はしたままだ。

離れたときどうなるかわからなかったが、こうなるのか。

俺はそう思いながら魔術鳥の行く手を阻んだ。

そこからはひたすらぶつかりあった。

俺と鳥4体の攻防は続いた。

そして9秒後。

俺は飛行魔術を切った。

俺の落下に鳥たちもついてきた。

「いいのか?ついてきて?」

鳥は何かに気づいたが、もう遅い。

この距離は無理だな。


「「「「炎戒の龍!!」」」」


分身は同時に術を放った。

鳥たちは避けられずに直撃した。

そして丸焦げになった。

「よし、任務完了だな」

………。

…あれ?

なんか違和感がある。

いや、たしかに全部倒した。

ここには丸焦げの鳥が4体いる。


…4体?


「…!?もう1体は…!?」


ペキペキッ!


そう言いかけた瞬間だった。

俺の足元にヒビが入ったのは。


「しまっ…」


ガラガラガラ…!


言葉を出そうとした瞬間、俺の足元が崩れた。

その下から、最後の1体が出てきた。

こいつ…

他がやられるのを前提にして、下から奇襲してきやがった。

無茶苦茶な技だ。

けど…

「こんな依頼で死ねるかよ!」

俺は勢いよく瓦礫を蹴り、鳥の空いていた口の中に入った。

鳥は驚いたようだ。

慌てて口を閉じた。

口の至る所に鋭い歯のようなものがあった。

なるほど。

これで噛み殺そうとしたのか。

だが終わりだ。


「周花!…断地!!」


俺は鳥の喉の中を切りつけ続け、弱ったところで剣力を飛ばして首を内側から切断した。

鳥は絶命し、自分が掘った穴の底へ落ちていった。

俺は飛行魔術の残り1秒を使って地面に戻った。

「危なかった…」

だが、一応勝った。

…疲れた。

戦利品を集めて、とっとと帰ろう。






「え!?5体もいたんですか!?」

帰宅後、ナナ師匠に報告した。

「でも倒したと?」

「死にかけましたが…」

「やっぱりお兄ちゃんすごいや…」

どうやら5体なんて量は稀らしい。

…俺運なさすぎだろ。

「とにかく休んでください」

「はい。そうします」

「そして、軽くいけると言ってしまってすみません」

「いいですよ。後でご飯奢ってください」

「…ハハッ!それでいいなら」

良かった。

元気になった。

「ちなみに2人は何件やったんですか?」

「14件」

「え?…」

あれ?

俺がナナ師匠とやったときは最大8件だったよな。

『カオルさん…家事もいけるみたいです…』

念話が飛んできた。

なるほど。

戦えて家事もできる7歳か…

妹よ、恐るべし。

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