28話 始動
「…レオさん!…レオさん!」
なんだろう。
なにか聞こえる。
もう少し…
寝させて…くれ…
「
レオさん!起きてください!大変です!」
「…!?」
ジークバルトに来て3日目の朝。
昨日の体験があまりにも衝撃的すぎて俺は疲れていた。
そんな中、ルカに叩き起こされた。
「ど、どうしたルナ?」
「早く事務所に来てください!」
え?俺寝起きなんだが。
まあいいか。
俺は不思議に思いながら部屋を出た。
今日は便利屋の開業初日だ。
初日だからあまり大した仕事は来ない。
はずだった…。
「何だこりゃ…」
部屋を出ると、そこには人がいた。
それだけじゃない。
事務所からカウンターの方へ出ると、そこには長蛇の列があった。
「ここが噂の便利やか」
「ここはあのナナ・リーフが経営してるらしいぞ」
「社員には影纏もいるらしい」
「とんでもないのがこの国に来やがった」
「ちょうど人手が欲しかったんだ」
「これでやっと討伐に行ける」
なんと初日から大盛況だ。
これは想定外だったな。
そしてそれはナナ師匠も同じだった。
『あ〜〜〜〜〜、頭がグルグルする〜〜〜!』
接客では平然としているが、念話で叫んでいた。
…すみません寝てて。
「ナナ師匠、手伝いますよ」
「あ、レオ!おはようございます」
俺がナナ師匠の近くに行くと、
「おぉ〜、あれが噂の…」
「ファジサイト闘技大会の勝者」
「番いの黒龍を2人で倒したという…」
「神級魔術師の…」
あ、まずい…
噂されている。
あまり注目を浴びるのはあまり得意じゃない。
どうしようか…
いや、ここは臨機応変に…
「ここからは俺も対応します!依頼の場合は俺の方へ、その他の場合はナナ・リーフの方へどうぞ!」
「「ハァ…ハァ…」」
接客が終わったのはそれから2時間後だった。
客の半分は依頼の申請だった。
掃除や商売の手伝い、配達といった雑用から、クエスト同行や討伐依頼といったものまで多数の依頼申請が来た。
疲れた。
手続きは忙しいし、接客で体力が持っていかれるしで大変だった。
「これがあったら見やすいだろう」といって客間に貼っていた板は依頼でびっちりとうまっていた。
「これは…全部なくなるのはかなり先になりそうですね」
「そう…ですね…」
「お兄ちゃん、ナナさん。僕も手伝うよ」
「ああ…頼む」
こうして、カオルが正式に事務所に入った。
まだ7歳の少女だぞ。
けどまあ…この世界なら問題ないのだが。
……大丈夫なのか?
道徳的に…。
翌日。
俺達はそれぞれ依頼を受け持ち、それの達成に向かった。
ナナ師匠とカオルは街の中での依頼に向かった。
今日は掃除や配達といった簡単なものを複数こなす予定らしい。
一方、俺は2つの依頼に向かった。
「炎熊の駆除」と「魔術鳥の撃退」だ。
俺だけ討伐任務だ。
炎熊。
背中に炎を纏った熊。
主に自身の攻撃に炎をつけたり、火を吐いたりするらしい。
危険度はBで数は2体だ。
魔術鳥。
上級魔術と特級魔術を自由自在に使う全長4メートルの巨鳥。
知能が高く、狡猾な動きをするらしい。
単体では危険度A、3体以上でSになる。
個体数は不明だ。
俺だけ危険なのはちょっと納得いかなかった。
ナナ師匠に大丈夫なのか聞いてみると、
「レオなら大丈夫でしょう」
ということだ。
なんか適当だな。
けど実際そう思っているらしい。
まあ…頑張ります。
国をでて1時間くらいの場所に炎熊はいた。
2体両方いる。
「さて…やるか」
俺が近づき始めると、炎熊はすぐ俺に気づき、背中に炎をつけた。
そして、俺めがけて突進してきた。
「水壁」
2体の動きを水壁で受け止め、俺は交代した。
「悪いが、このあと別件もあるんでね。すぐ終わらせてもらうよ」
そういって俺は剣に剣力を込めた。
「断地」
斬撃は炎熊の首を同時に切断した。
「終わったな…」
俺は手早く炎熊の素材を集めた。
「さて、次の場所にい…」
そういった瞬間、
「キィーーーーーーー!!」
「へ?」
空からものすごい声が聞こえた。
これは、鳥の声だ。
「キィーーー」
「キキィー」
それも1体じゃない。
めっちゃ聞こえる。
うるさすぎる。
「…!?はぁ!?」
空には次の標的である魔術鳥がいた。
その数1、2、3、4…5体もいやがる。
「こんなのSランクとかって話の次元じゃねぇだろ!!!」
その後何をしたかって。
当然。
逃げた。
全力でジークバルトの反対方向へ逃げた。
10分くらい走り続けた。
そして…
「ここならいいな」
俺は止まって空を見上げた。魔術鳥はついてきている。
「影の領域」
俺は分身を4体出した。
そして分身は全員「炎戒の龍」の発動準備を始めた。
魔術鳥達はそれに気づき向かってきた。
準備にかかるのはだいたいあと9秒。
「いけるな」
俺は即座に飛行魔術を発動した。
そして月光斬を使って高く飛び上がった。
飛んだあと、俺は影の領域を見た。
発動はしたままだ。
離れたときどうなるかわからなかったが、こうなるのか。
俺はそう思いながら魔術鳥の行く手を阻んだ。
そこからはひたすらぶつかりあった。
俺と鳥4体の攻防は続いた。
そして9秒後。
俺は飛行魔術を切った。
俺の落下に鳥たちもついてきた。
「いいのか?ついてきて?」
鳥は何かに気づいたが、もう遅い。
この距離は無理だな。
「「「「炎戒の龍!!」」」」
分身は同時に術を放った。
鳥たちは避けられずに直撃した。
そして丸焦げになった。
「よし、任務完了だな」
………。
…あれ?
なんか違和感がある。
いや、たしかに全部倒した。
ここには丸焦げの鳥が4体いる。
…4体?
「…!?もう1体は…!?」
ペキペキッ!
そう言いかけた瞬間だった。
俺の足元にヒビが入ったのは。
「しまっ…」
ガラガラガラ…!
言葉を出そうとした瞬間、俺の足元が崩れた。
その下から、最後の1体が出てきた。
こいつ…
他がやられるのを前提にして、下から奇襲してきやがった。
無茶苦茶な技だ。
けど…
「こんな依頼で死ねるかよ!」
俺は勢いよく瓦礫を蹴り、鳥の空いていた口の中に入った。
鳥は驚いたようだ。
慌てて口を閉じた。
口の至る所に鋭い歯のようなものがあった。
なるほど。
これで噛み殺そうとしたのか。
だが終わりだ。
「周花!…断地!!」
俺は鳥の喉の中を切りつけ続け、弱ったところで剣力を飛ばして首を内側から切断した。
鳥は絶命し、自分が掘った穴の底へ落ちていった。
俺は飛行魔術の残り1秒を使って地面に戻った。
「危なかった…」
だが、一応勝った。
…疲れた。
戦利品を集めて、とっとと帰ろう。
「え!?5体もいたんですか!?」
帰宅後、ナナ師匠に報告した。
「でも倒したと?」
「死にかけましたが…」
「やっぱりお兄ちゃんすごいや…」
どうやら5体なんて量は稀らしい。
…俺運なさすぎだろ。
「とにかく休んでください」
「はい。そうします」
「そして、軽くいけると言ってしまってすみません」
「いいですよ。後でご飯奢ってください」
「…ハハッ!それでいいなら」
良かった。
元気になった。
「ちなみに2人は何件やったんですか?」
「14件」
「え?…」
あれ?
俺がナナ師匠とやったときは最大8件だったよな。
『カオルさん…家事もいけるみたいです…』
念話が飛んできた。
なるほど。
戦えて家事もできる7歳か…
妹よ、恐るべし。




