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影を纏う転生者 〜平凡な高校生の異世界人生録〜  作者: 仮想猫
影纏の術師編 〜ジークバルト〜
31/50

27話 故郷は1つ

前回までのお話

遂にジークハルトに到着したレオリオス一行は、各々自由な時間をとっていた。

そんな中、街を歩いていたレオリオスは、日本語を喋る2人組と出会う。

その2人は、日本からの転生者であった。

俺はこの世界に来て、これまで前世の世界の人と会ったことはなかった。

疑問に思った。

なぜ他にいないのか。

その中でちょっとした仮説があった。


その1、そもそも転生、転移は俺の身にしか起こっていない。

これについては可能性は低かった。

たしかにそれだったら面白い。

けど別世界から転生、転移が起きるという事実がある時点で、他に事例がないことはほぼ無いと考えた。


その2、気づけていないだけ。

これが一番濃厚だった。

この世界に来てから、俺が前世の言葉を話したのは数回程度だ。

転移者は例外だが、転生者同士は気づけないだろう。

ただ、そうなるとこの世界には転移は存在しない可能性が強くなる。


その3、転生者、転移者は存在してはいけない。

これは可能性は低いし、そうでないでほしい。

そもそもそういった存在が殺されている可能性だ。

まあ、そういったことは聞いたことがないし、大丈夫だろう。

そして今日、俺は日本人と遭遇した。

見た目はどちらも日本人とは見えない。

ごく普通のこの世界の人間だ。

つまり…

「あなた方は『転生者』ですか?」

俺は日本語でそう聞いた。

場所は近くの店に移っていた。

「ああ。俺達はこの世界に転生してきた」

「あなたも?」

「はい。14年ほど前に」

「そうか。俺達は20年前にここに転生してきた」

「その…原因はなんですか?」

「私達は死んでここに転生したわ」

そうか、やはり転生のトリガーは死亡か。

「その…あなたは?」

「俺も前世の死亡です」

「死因とかってわかりますか?」

「死因…ですか?」

…なるほど。

死因に転生条件がある可能性もあるのか。

「転落死です。橋を渡っていたら崩壊しまして…」

「え!?」

そう言うと、男のほうが驚いた。

「お前…名前は?」

「え?レオリオス・パルトです」

「パルトってあの…じゃなくて、前世の!」

「前世の?」

どうしたんだ?

何かあるのか?


「佐々木 守ですが」


そういうと彼は声を出せなくなったかのように、口を開閉させながら黙った。

なぜだ?

そう思っていると、ふと視線が彼の手元で止まった。

彼は指の関節を不規則に動かして鳴らしていた。

本来なら気持ち悪い動きだと思うだろう。

しかし、俺はその動きに見覚えがあった。

そして、彼の姿は前世で見ていたある人物と重なった。


「お前…じゅんなのか?」


「…ああ。そうだ…。ここで…生きてたんだな……守…」


彼は泣いていた。

そして、笑っていた。






進藤しんどう じゅん

俺が生きていた当時、17歳だった男子高校生。

俺の所属していたバンドのリーダーであり、ギターだったやつ。

そして、俺の同級生だ。

ちなみに、前世最後のLINEで「明日スタジオ借りたから17時集合〜」と呟いていたのが彼だ。


「あのときは驚いたよ。橋の崩壊に巻き込まれて守が死んだって聞いて」

「俺も驚いたよ。目が覚めたら木刀持ってんだもん」

「あはは!それはビビるな!」

「ちなみに、今はなんて名前なんだよ?」

「今はジン・ゴートっていう名前だ」

「ゴート?羊か?」

「何笑ってるんだ?別に羊でもいいだろ」

まさか同級生と再会できるとはな。

ただ、これで俺の仮説2が濃厚になったな。

しかし、彼が転生したのは20年前。

俺より6年ほど早い。

つまり、この世界と前世の時間軸は別物ってわけか。

「そういえば、他のみんなは俺が死んだあとどうしてた?」

「………。」

そう聞くと彼は黙った。

どうしたんだ?

「それについては私が説明します」

沈黙の中、もう片方の女性が話しだした。


「私達は、戦争に巻き込まれて死にました」


………。

………。

…え?

「せ、戦争?」

「はい、アメリカとアジア諸国の戦いの中、日本が戦場になりました」

「そ、そして…」

「空路がしっかりしていた首都圏や関西の方はうまく逃げられました。しかし、東北や九州を始めとする多くの県は逃げ遅れたり、アジア諸国に真っ先に狙われたりなどで…」

「全員死んだ…んですね」

「はい」

俺が住んでいたのは東北の北部。

つまり…俺の知っている日本はもう無いし、知っている人ももういない…ということか。

「ちなみに…それはいつのことですか?」

「お前の死んだ…1週間後だ」

「…そうか」

「それで何だが」

その言葉の後、純は言った。


「俺達は今後、転生者を探そうと思ってる。お前も来ないか?」


突然の申し出だった。

前世の関係が不服だったわけではない。

もう一度会えるなら…会いたい。


けど…


「ごめん。それはできない」

「なぜ?」

「俺には家族がいる。そして、その家族は6年前の事件で離れ離れだ」

「6年前…エイサールの事件ですか?」

「はい。この1年で2人は見つけた。けど、もう1人が見つかってない。前世の友達には会いたいが、俺は今の家族も大事だし、おいていけない」

「…そうか」

純は少しさびしそうな顔をしていた。

けれど、その顔はすぐに消えた。

「わかった。ならそうしろ。前世のことは俺達に任せろ。お前は自分のために頑張れ」

「ありがとな、純」

そして俺達は別れた。






「レオ…」

事務所に戻ると、ナナ師匠が待っていた。

「念話で少し聞いていました」

「え!?聞こえてたんですか?」

「はい、ちょっと近い位置にいたので」

ということは…


「前世ってなんですか?」


そうなるか。

だが、別に秘密にする必要はないだろう。



俺はナナ師匠に前世のことについて話した。

ナナ師匠は終始表情を変えず、真剣に聞いてくれた。

「なるほど…それで死んで、転生して今に至ると」

「…ナナ師匠。一つ聞きたいんですが」

「なんでしょうか?」

「転生は…ありきたりなものなんですか?」

そう聞くとナナ師匠は話し始めた。

「レオは『カスラ戦線』については知っていますね」

「はい。だいたいは」

「その戦いでカスラは5人の英雄によって打倒されました」

それがどうしたのだろうか。

「五英雄の1人、『シュウ』の別名を知っていますか?」

「いえ。知りません」

「彼は、『転生を名乗る放浪者』と呼ばれていました」

「それって…」

「彼は自分を『転生者だ』と名乗っていたんです」

転生者はかなり昔からあったのか。

「ですので、ありきたりでは無いかもしれませんが、存在はしています」

そうか。


だが、もう一つ気になることがある。


「転生者は…この世界にいて大丈夫なんですかね?」

「というと?」

「処刑されたりとかは…」

「無いです。むしろ、転生者は案外歓迎されるかもしれません。英雄と同じ境遇の人物になりますからね」

「そうですか」

少しだけ、安心した。

「それで…なんですが」

「…?なんですか?」

「私は…今まで通り接していいんですか」

なるほど。

ナナ師匠は心配だったんだな。

けど

「むしろそのままでいてください。前世の記憶があったとしても、俺のこれまでに偽りはありません。なので、このままでいさせてください」

そう言うと、ナナ師匠は笑った。

「わかりました!では、これからもお願いします」

「はい。お願いします」

今日は、多くの人に俺の秘密を共有することができた。

けど、何も変わらない。

俺は俺だ。

前世がどうとか関係ない。

俺は前世「佐々木 守」の記憶を持つ、「レオリオス・パルト」として生きていくんだ。

改めて、そう心に誓った。

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