25話 国と友を見つめる
旅を始めて1ヶ月と1週間。
山中道はまだ続く。
次第に、あの鬱陶しい光を放っていた太陽が恋しくなってきた。
あの日、ソオと遭遇して以来、刺客とは遭遇していない。
山の地中にいるため魔獣もいない。
いたって平和な道だ。
てか本来そうなのだ。
そうでないと困る。
俺はそう思いながら道を進む。
「お兄ちゃん…あとどれくらいで着くの?」
「あと3週間くらい」
「先はまだまだ長いですね」
「カオルさん、お水どうぞ」
「あ、ありがとうルカちゃん」
色々あったが、この4人の仲は深まった。
カオルとルカは特に仲良くなり、最近では一緒に魔術の練習をしている。
そんな今日。
人と遭遇した。
「おっと、こんなところで人と会うなんて、珍しいわね」
((((既視感……))))
この場にいた全員がそう思った。
そう。
ソオと会ったシチュエーションと全く同じなのだ。
「え!?なんでみんなそんな怖い顔をしてるの…」
「え!?あぁ…すみません。ちょっと先日ありまして、遭遇者に警戒してしまって」
「あぁそういうこと。いいわ、気にしなくて」
遭遇した女性はその後、特に何もせず「じゃあ気をつけてね」と言って去っていった。
本当にすみません。
「もう少し警戒を緩めましょう。このままだと、私達のほうが怪しい集団になってしまいます」
「はい、すみません師匠」
「というわけで、全員の緊張を解すために、ゲームをやろうと思いま~~す」
その日の夜、野営中でゲームをすることになった。
司会はカオルだ。
「んで妹よ。何をやるのかな?」
「こういう時はあれです…」
「あれって?」
そう疑問に思っていると、
「あれですか…」
ナナ師匠は気づいているようだ。
ルカに目をやるとキョトンとしていた。
これはわかってないやつの顔だ。
仲間がいてよかった。
「全員で、服従ゲームをやりま~~す」
何だそれ?
「毎ターンこの中から1人ずつ国王と奴隷を決めて、奴隷は国王が課す内容をこなします。国王は奴隷に1つ質問する、あるいは行動させます。以上!」
王様ゲームかーーーい。
この世界にもそんなのあるんだな。
「だいたいルールは分かった。んじゃやるか」
「カオルさん、国王と奴隷はどうやって決めるの?」
「そりゃくじだよ。私が作った石の棒の先端に色を塗って、赤を国王、黒を奴隷にします」
「準備もできましたし、早速やりましょう!」
ナナ師匠もノリノリである。
「じゃあお兄ちゃん、今日は何ターンやる?」
「そうだな……4ターンにしよう」
「4ターンね。分かった」
「じゃあ皆さん。くじを引いてください」
全員が一斉にくじを引いた。
「最初の国王は誰ですか?」
「あ、私だ」
最初の国王はルカだ。
「んで、奴隷…は…」
そう言おうとした時にカオルの方を向くと、カオルが肩をピクピクと震わせていた。
お前…か…
「んじゃルカ。カオルになんか指示出してくれ」
「まさか僕が最初なんて…」
驚いただろ。
けど兄さん気づいたからね。
カオルが奴隷くじに細工してたのを。
気づいた時に、細工は跡形なく消させてもらいました。
「じゃあ、カオルさん。カオルさんが使える中で一番強い魔術を見せてください」
あら、これまたシンプルな。
「え!?それでいいの?」
「?…全然構いませんよ」
「分かった!じゃあ見せてあげるよ」
そう言ってカオルは魔術を披露した。
「ハァ!光進」
その瞬間、カオルがとてつもない速さで走り出した。
え!?何それ?俺、その技知らないんだが。
「ハァ…ハァ…ハァ…」
20秒後、カオルはとまった。
だいぶお疲れだ。
「一応…これ…上級…ね……」
「凄いですね。私も冗談半分で教えていたんですが、できるようになっていたなんて…」
「じゃあ…次の…ターン…いこうよ……」
大丈夫そう?まあ…いっか。
「じゃ、次のターンいくぞー」
俺達はくじを混ぜてまたひいた。
「次の国王は…俺か」
次は俺らしい。
対する奴隷は…
「私が奴隷ですか…」
ナナ師匠が奴隷になったらしい。
「じゃあレオ。私に指示してください」
どうしようか?
ナナ師匠にやって欲しいことも今無いし…
質問……。
いや、ある。
やって欲しいことが
「じゃあナナ師匠。二つ名の『不可視』の由来になった術を見せてくれませんか?」
「あれ…あぁそうですか!そういえば見せたことありませんでしたね」
そう言うとナナ師匠は杖を出した。
「では、いきます。……ー…ーー…ー」
ナナ師匠は詠唱を始めた。
そして数十秒後…詠唱が終わった。
「光輪周斬」
………。
………。
ん?
何が起きた?
「皆さん。周辺の岩を見てください」
見てハッとした。
辺りの岩が切断されていた。
山中道の壁の一部にも傷があった。
「これが私が最初に認定された神級魔術です」
なるほど…不可視の斬撃、いや、光魔術か。
「私のターンはここまでです」
「じゃあ、3ターン目に行きますか」
俺達はくじを混ぜてひいた。
「3ターン目は…」
「僕だー!」
カオルが国王だ。
奴隷は…
「また私ですか…」
ナナ師匠が次の奴隷(2回目)だ。
「じゃあ…」
そう言うと、カオルは不敵な笑みを浮かべた。
「ナナ師匠。好きな人いますか?」
「「「!?」」」
マジか!?
カオルが学生の修学旅行みたいなことし始めたぞ。
「………ッ!?」
ナナ師匠…だいぶ照れてるな。
「私の…好きな人は…」
ナナ師匠、頑張れ!
「同じパーティーだった竜人の人です」
ん?名前を伏せた。
なんで………
………。
…あ、そうか。
2人はドーラ師匠のこと知らないのか。
なら伏せていても全情報はバレない。
賢いな…ナナ師匠。
「キャーそんなんですね!初めて知りました」
「結ばれると…いいですね」
2人とも女の子だな。
俺は正体を知っているから何も言わない。
「何も言うな」という視線がナナ師匠から飛んできているからな。
「ご、ごほん…じゃあ最後やりますか」
さて、いよいよ最終ターンだ。
どうなるのか。
俺達は再びくじをひいた。
「最後の国王は私ですね」
最後はナナ師匠だ。
奴隷は…
「俺か…」
俺だ。
「じゃあレオ…」
俺はナナ師匠の方を向いた。
「あなたの恋も教えてください」
な!?この人!?
やりやがった!
「俺の…好きな人ですか…」
…正直そういう人はいない。
さて、どう答えよう…
そう思っていると、ナナ師匠から言葉がとんできた。
「あ…ニナとかは、どうなんですか?」
「ニナですか…」
ニナか…
確かにニナとは仲が良かった。
家の中では多分1番だろう。
ただ、そういう目で見たこともなかったし。
離れてから6年以上経っている。
「ニナの事はそういうふうに考えたことはなかったです。ただ…」
「ただ?」
だが、俺は少しも興味がなかったわけじゃなかった。
前世では彼女はいた。
そしてニナは、どことなく前世の彼女と似ていた。
「嫌いではなかったし…多分…興味がないわけではなかった…と…思います」
変な言い方だが、実際そうだ。
そう見れていなかっただけで、見れないわけではなかった。
「…そうですか」
そう言ってナナ師匠は微笑んだ。
何かに安心したような顔をしていた。
「ちなみに今は好きな人いるんですか?」
「正直いないです」
「お兄ちゃん。それ逃げ文句じゃないの?」
「本当だよ。嘘つくもんか」
こうして夜は更けていった。
旅を始めて1ヶ月と3週間が経過した。
「レオさん、光が見えてきました」
俺が目を凝らすと、うっすらと、それも豆粒みたいな大きさの光が見えた。
出口だ。
ルカ…もしくは三眼族は目が良いらしい。
「見えてきたな。距離的に…あと10日って言ったところか…」
「長っ!お兄ちゃん、もうちょっと早くつかないの?」
「いやカオル。ナナ師匠をよく見てみろ」
そこには魔法杖にしがみつき、バテているナナ師匠の姿があった。
「すみ…ません。…私の……せいで…」
「気にしないでください。魔術師一筋の人の体力はだいたいそれくらいでしょ?」
そう、魔術師はあまり体力がある人の役職じゃない。
俺のように体力のある魔術師は結構稀だ。
剣術をたしなんでいる影響だろう。
「…次の旅では馬車を買いましょう」
「そう…ですね。…そう…してく……ださる…と……うれしい…です…」
この旅は、山中道を通って行けて良かった。
山を登ってたら、多分ナナ師匠…死んでるな。
そう心で思った。
そして、その10日後。
「やっと出れました…」
「久しぶりの太陽だ〜〜」
「レオさん…あの街が?」
カオルとナナ師匠が久しぶりの外に感動してるなか、ルカが指をさして聞いてきた。
その指の先には大きな街が見える。
中央には巨大な城のような建造物があり、周りを屋根が囲む。
ここからでも賑わっているのがわかる。
「あぁ…アレが」
俺も街を指さす。
「中心国ジークバルトだ」
こうしてとうとう俺達は、ジークバルトへとたどり着いた。
ここでは一体何が待っているのか。
そして、この国にニナは居るのか。
ゼイの情報を掴めるのか。
ここがゴールで、新しいスタートだ。




