21話 旅の前に
季節は春となった。
俺がこの国に来て11ヶ月とちょっと、もうすぐ1年となる。
そして、この国をたつ時期でもある。
俺はナナ師匠とカオルとともに、「ジークバルト」へと向かう。
この国にいられるのも、残り僅かだ。
そんな俺達は今日、街の挨拶回りに行った。
「あらそう…ナナちゃんがいなくなるのはさみしくなるわね」
「カオルちゃんも行っちゃうのか…まあ、気をつけてな」
「いつも掃除ありがとうね」
「また魔術見せてくれ」
どうやら、ナナ師匠とカオルはこの国でかなり好かれていたようだ。
そしてその後は商店街に向かった。
旅の荷物の調達や、武器の最終整備が目的だ。
買い出しのものはナナ師匠とカオルに伝えたので、2人に任せた。
俺は全員の武器や杖を抱えて武器工房に行った。
中に入ると、
「あれ?影纏じゃねぇか」
中にいたのは「逆手のリュー・ダリウス」だった。
彼とは闘技大会の後も交流があり、よく組手をして競っていた。
実力はかなり拮抗しているようで、今のところ11戦5勝6敗だ。
「武器工房に来るなんて珍しいな。いつもは自分で整備してるじゃねぇか」
「えぇ、実はもうすぐこの国をたつんですよ。なので、それに合わせて最終整備をしようかと」
「え!?国をたつのか?」
「えぇ、実は…」
俺はリューに俺の旅の理由を簡単に説明した。
「なるほど…家族探しか…」
「はい。あと1人見つかってないので、それを探そうかと」
「それプラスで、仇の捜索もってことか」
「はい」
「…そうか。俺の勝ちってことになっちまうな。なんだったら今やるか?」
「いえ、その勝負はまたいつかの機会に取っておきましょう。今生の別れでもないんですから」
「それもそうだ。なら…」
というと、リューはカバンから何かを取り出した。
「これは?」
「収納魔術の魔法陣だ。何枚か渡したが、内1つには俺の匂い…というか魔力が入った集魔石がある。何か頼ることがあったら手紙で教えてくれ」
「おぉ!助かります。ありがとうございます」
「おう。じゃあ、またな」
そういうと、リューは店をあとにした。
俺もこの国でいい出会いができたものだ。
武器の整備を終えて、俺はナナ師匠とカオルと合流した。
そして、3人で王宮に向かった。
「国王様、ご報告があります。先日にご伝達しましたとおり、明日、この国をたちます。それに伴い、便利屋の仕事を停止させていただきます」
「そうか、今まで苦労をかけたな」
国王とも、龍獣の事件以来交流を深め、王宮からの依頼で関わることが多かった。
国王と俺は、同じ音楽好きということもあり、業務でも個人でも話す機会が多かった。
なので、旅立ちの報告をしに来たというわけだ。
「して、旅の理由というのは」
「はい、実は…」
本日2回目の旅の理由の説明をした。
「そうか…仇と家族…」
「ここからはジークバルトとドラマルトに向かおうと思っています」
「長い道のりになりそうだな。旅の成功を願っている。またいつか、音楽について語り合える機会があることを楽しみにしているぞ」
「はい」
こうして、挨拶回りは終了した。
「というわけで、明日からは長い旅となります。その前に、今後の具体的な動きについて説明します」
「「はい」」
その夜、俺はナナ師匠とカオルに今後について話した。
まず最初にジークバルトに向かうこと。
その後、資金や物資を集め、準備ができ次第、ドラマルトに向かうこと。
この国々で、残りの家族であるニナを探すこと。
そして、旅をしながら、村の襲撃の真犯人、仇となる者を探すこと。
説明が終わると、カオルが質問してきた。
「ナナさんやお兄ちゃんから名前は聞いたことはあったけど、実際にニナさんってどういう人なの?僕のお姉ちゃん?」
「あっ、そういえばニナさんについてはあまり話していませんでしたね」
俺とナナ師匠は2人でニナについて軽く説明した。
「なるほどね〜。つまりニナさんは血はつながってないけど大切な家族なんだね」
なんだこの子。
なんか解釈が大人に近いんだが。
まあ、日本語喋っても理解してなかったし、俺みたいに中身が大人って訳では無いらしい。
単純に成長が早いのだ。
「ニナさんか〜早く会いたいな〜」
「そうですね〜、私も早く会いたいです」
なら、頑張らないとな。
翌朝。
俺達はナナ師匠の名義で借りていた貸家を家主に返却して、国門に向かった。
ここからジークバルトまでは2ヶ月の道のりだ。
頑張ろう。
「とうとうお別れですか」
「あれ?そういえば他の村人は?」
「この国に残るらしいです。というか迎え待ちみたいです。村から家族が向かってるみたいです」
「そうですか。なら大丈夫ですね」
そんな事を考えていると、
「6年間、ありがとうございました!」
カオルがそう叫んだ。
そうだな。
カオルにとっては実家みたいなもんだからな。
感謝の気持ちは誰よりも大きいだろう。
「さて、行くか!」
「はい!お兄ちゃん!」
「頑張りましょう」
こうして、1人から始まった旅は3人となり、再び始まるのだった。
ファジサイトー完ー
ジークバルトに続く




