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影を纏う転生者 〜平凡な高校生の異世界人生録〜  作者: 仮想猫
影纏の術師編 〜ファジサイト〜
19/50

16話 建国祭

季節は夏。

ファジサイトに来て2ヶ月が経過した。

今日はやけに騒がしい。

「ナナ師匠、今日って何かあるんですか?」

「あぁ、言ってませんでしたね。明日から1週間、この国の建国祭があるんですよ」

この国には年2回の祭りがある。

1つはこの国出身で、かつて魔族世界を牛耳り、他世界との交流を拒絶し、世界の没落を目論んでいたとされる『魔神ヌー』を打倒した、魔族三英傑の1人、『マーズ』の生誕を祝う「英傑の宴」である。

そしてもう1つが、この国の建国を祝う「ファジサイト建国祭」だ。

この祭りでは、屋台や歌唱といったものや、魔術、剣術、体術の試合をしたりなど、数々のイベントが行われる。

イメージとしては、夏祭りを国規模で行っている感じだ。

この祭りには、国の内外、更には人族や竜人なんかも各地から足を運ぶ。

今日はその準備らしい。

「僕達は、明日から休みでしたっけ?」

「はい、建国祭の中では依頼はきませんからね」

「お兄ちゃん、明日は一緒に建国祭回ろ!」

「あぁ、そうだな」






その夜

俺は楽譜をかいていた。

意味は特にない。

ただ、いつか昔のような音楽ができたらという小さな夢が少しあったため、覚えている曲の楽譜を暇なときに書いているのである。

コンコンッ

そうしていると、外から窓を叩く音がした。

なぜだ?

ここは2階だぞ?

「……鳥?」

窓を叩いていた、いや、つついていたのは茶色い鳥だった。

鳶みたいだな。

そう思いながら眺めていると、鳥の足に何かが巻きついていた。

俺がそれを取ると、鳥はどこかへ飛んでいった。

「…これは…手紙?」

……なるほど。

この世界の連絡は鳥を使った手紙が主流なのか。

俺はその手紙を開けた。

差出人は…ドーラ師匠だ。


〜レオリオスへ〜

旅の調子はどうだ?

日にちや状況を考えると、今はファジサイトにいる頃だろうか。

まあ、前置きはさておき、報告がある。

本来はバオスが書くべきなんだろうが、彼は片腕なため書けない。

なので代わりに俺が書く。

村にカーラが帰ってきた。

山国マントシティにいたところを、元『ノーボックス』のメンバーのロードとサラディーンズが見つけてくれた。

マントシティにいた村人は全員帰ってきた。

特にケガなどはなかったようだ。

村も8割ほど復興した。

こちらはいたって順調だ。

そちらの情報も追々伝えてほしい。

伝達鳥はファジサイトの商店にも売っているはずだ。

その鳥に、俺の匂いのついたものを嗅がせればどうにかなるはずだ。

報告を待つ。

〜ドーラ・コンドル〜


マジか!

カーラが帰還したのか!

無事でよかった。

そして、これで旅も楽になる。


マントシティ。

魔族世界の西に位置する国。

山の中に大規模集落のような形で存在し、「山国」と呼ばれている。

資源が豊富な一方、山に住む強力な魔獣が絶えず襲ってくるため、この大陸では危険な国として有名だ。

しかし、強力な魔獣は高価な素材にもなるため、ハンターや冒険者の人気スポットでもある。

本来であれば、魔族世界をファジサイトからジークバルトを通過し、マントシティまで行くつもりだったが、大幅な短縮だ。

そうなれば、この旅ではファジサイトからジークバルトに向かい、そこから南下し、大陸王都ドラマルトに向かうこととしよう。

そして、伝達鳥か…

祭りが終わったら買いに行こう。


『レオ、ちょっといいですか』


おっとここで念話だ。

『大丈夫ですよ?』

『では、そちらに向かいます』


コンコンッ


ノックだ……って早っ!?

もしかして、待機してたのか?

「どうぞ。」

「あ、すみません、こんな夜分に」

「いえ全然。それに、俺もそちらに行こうとしてたので」

「え?それはなぜ?」

俺はドーラ師匠の手紙について話した。

「そうですか。カーラさんは無事だったんですね。良かった…」

ナナ師匠は安堵していた。

「あ、それで後ほどドーラ師匠に手紙を書こうと思っているのですが…ナナ師匠って伝達鳥とか飼ってませんか」

「え?いますよ。しかし匂いを嗅がせないと…」

「あ、それは大丈夫です」

俺は持っていたカバンから綺麗に形取られた石を出した。

「それは?」

「ドーラ師匠が渡してくれたお守りです。旅の前に『竜人のお守りだ』って言って作ってくれたんです」

実はバオスからもそういった類のものを渡されていた。

どうして渡してきたか謎だったが、こういうことらしい。

「わかりました。じゃあ明日にでも手紙を送りましょう」

「はい」


……なんか忘れてるような。


「あ、そういえばナナ師匠の用件は?」

「えっと、レオに祭りの試合のお誘いが来たのですが、出ますか?」

試合か。

確か、魔術、剣術、体術なんでもありの生き残り戦と、トーナメントの2つをやるって話だよな。

気にはなるが、どうしようか。

「優勝者には景品もあるみたいですよ」

「出ます」

俺の建国祭試合への参加が決定した。

そしてこの後は、2人でドーラ師匠に手紙を書いた。






「お祭りだ〜〜〜〜!!!」

「あ、コラ、あんまりはしゃぎすぎるなよ」

「大丈夫ですよ。彼女毎年あんな感じなので」

「なら、いいんですが…」

翌日。

建国祭が始まった。

カオルはすごく興奮していた。

そして…俺も少し興奮していた。

久しぶりの祭り…というのもあるが別だ。

俺の今日の楽しみは、夜にある音楽イベントだ。

いや〜この世界で初めて見る生音楽ライブだ。

楽しみだ。

「お兄ちゃん!あれ買って!」

おう…どれどれ?

……て、け、剣!?

「まだ早い!」

「え〜〜〜…」

「それは中級習得してからな」

「は〜〜い…」

祭りでなんて物騒なもん売ってるんだ。

あ、けどこの祭りは他国からも客が来るんだっけ。

武器屋の人も他国の客に宣伝したいはずだ。

まあじゃあ、しょうがないか。

「…?ナナ師匠?」

歩こうとしたら、ナナ師匠が固まっていた。

ある一点を見つめて、ボーっとしている。

見ている先にあるのは…串焼き?

「ナナ師匠、もしかして、あれ食べたいんですか?」

「うぇ!?あ、はい!じゃなくて、すみません。お祭りの空気に当てられてつい…」

「…ブッ、ハハハ〜」

「わ、笑わないでくださいよ!!」

ナナ師匠は赤面した。

「ハハハ、ハァ、すみません」

「も〜…」

俺は走って串焼きを3本買いに行き、3人で分けて食べた。






この国の食事は焼き物に塩をふったものがほとんどだ。

バリエーションは少ない。

しかし、それでも飽きない独特な味があった。

この味は日本では味わえなかった。

もう少し濃くなってしまえば不味くなってしまうような、絶妙なラインの味だ。

そんな屋台飯を食べながら、街を見ていると、夜になった。

いよいよ音楽イベントのスタートだ。

「まず最初のグループはコチラです」

そんなアナウンスが流れた後、歌唱が始まった。

前世の世界とはまた違う音楽だが、これはこれでいいな。

そう思っていると、

「どうしよう…このままだとまずいよ」

「もうすぐ出番だが…どうする?」

「辞退するしかないんじゃ…」

会場の隅から何やら会話が聞こえてきた。

どうしたんだろうか?

「あの…どうされたんですか?」

「え?あぁ…その…メンバーが1人熱で運ばれちゃって…」

なるほど…バンドメンバーが1人いなくなってしまったのか。

…大変だ。

どうにかしてあげたいが…

「ちなみに、何の曲を」

「えっと、『忘却の歌』という歌をやろうかと」

なんだっけそれ…

………。

………。

……あ…その曲って確か、カーラが誕生日にくれた集音石の曲の1つ。

ん?なら…

「あの…よかったら代わりに演奏しましょうか?その人のパート」

「え!?お前…できるのか?」

女性のボーカルらしき人と話していると、他の男性メンバーが聞いてきた。

「はい。一応」

「いいんですか?こんな名前も有名じゃない私たちを」

「こういう時は助け合いですよ」

「…!!ありがとうございます!」

女性は涙を流して礼をした。

周りの男性2人も俺に礼をした。

さて、何の楽器なのか。

「では、これをやってください」

ん?

…!?こ…これは…

「バックラインをお願いします」

名前は違う。

けど間違いない。

これはベースだ。

俺が前世でギター以上にやっていた馴染みの楽器だ。

やべぇ、めっちゃ上がってきた。

「では、続いてのグループお願いします」

「行くよ!」

「「おう!!」

うん。

このバンドメンバーの団結力は二重丸だな。

気迫を感じる。

「え!?レオ!?」

「お兄ちゃん!?」

あ、カオルとナナ師匠に説明する暇がなかった。

「え〜今日はバックラインが急遽来れなくなったので、助っ人をお願いしました。いつもと違うメンバーですが、頑張ります」

周りからは小声で、「大丈夫なのか?」とか、「終わったな」なんて言葉が聞こえてくる。

『レオ、大丈夫なんですか?』

念話でナナ師匠に心配された。

『まあ見ててください』

カンッカンッカンッカンッ

ドラム(便宜上、楽器の名前は現実世界の名前で表現します)の合図とともに曲が始まる。

〜〜〜〜♪

〜〜〜〜♪

〜〜〜〜♪

よし、ここまでは順調だ。

そして来る。

この曲の見せ場でもあるベースソロが…

俺はチョッパーでソロを弾き始めた。

観客は驚いた表情をして、ボーカルも驚きこちらを見ている。

そりゃそうか…

この世界の音楽を聞いて、調べてなんとなくわかっていた。

この世界にはチョッパーは存在しない。

チョッパーだけじゃない。

前世にあったほとんどの技がなかったのだ。

なら、それでインパクトを増してやる。

そして、これらを普及させる。

…というのは言い訳で、実際ただやりたかっただけである。

〜〜〜〜♪……

曲が終わった。


「「「「「「「「「「おーーーー」」」」」」」」」」


会場からは歓声が上がった。

なんとかなったみたいだな。

俺が退場した後、

「本当に助かりました!ありがとうございます!」

「礼はいいです。建国祭、楽しんでください」

バンドメンバーに挨拶して別れた。

「お兄ちゃん!」

俺は2人のもとに戻った。

「さっき、すごくかっこよかった!」

「まさかバックラインができるとは思いませんでした」

まあ…それほどでも。

このあとは音楽イベントを最後まで見て、家に帰った。

明日からは試合もある。

今日はゆっくり休もう。

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