15話 依頼
「ごめんくださーい」
この街に来て2週間。
俺は妹への修行と依頼をこなす日々をおくっていた。
妹の修行に関しては、ナナ師匠と一緒に魔術を教えたり、剣術を教えたりの日々だ。
そして依頼だ。
この2週間、この事務所には何件かの依頼が来た。
今のところは「瓦礫の撤去」とか「建築の手伝い」というような簡単なものだけだ。
だが、結構報酬をもらっている。
やっぱり、こういう何でも屋みたいなのがいると、なにかとありがたいのだろう。
そんなある日、1人の訪問者が来た。
「依頼がありきました」
服装的に、冒険者ギルドの人だな。
冒険者ギルドは、冒険者に依頼を提供する機関だ。
そんな人がわざわざここに来た。
この事務所の依頼のほとんどは手紙で来る。
直接来るのは珍しい。
「討伐依頼ですか?」
ナナ師匠が聞いた。
反応を見るに、こういったことは初めてじゃなさそうだ。
「はい、番いの黒龍を」
黒龍。
魔獣の一種である、獣龍の仲間。
その皮膚は硬く、空をヘビのように駆け回る。
凶暴で極めて危険な魔獣だ。
それの番いときた。
おそらく一般の冒険者では討伐できなかったのだろう。
「わかりました。引き受けます」
「ありがとうございます」
そう言うと、ギルドの人は去っていった。
「ナナ師匠、こういう依頼はよくあるんですか?」
「討伐依頼はよくあります。しかしこの難易度は初めてです」
「大丈夫ですかね…?」
「私も昔、黒龍と対峙したことがあります。1人なら無理ですが、レオがいれば大丈夫でしょう」
「そうですか。出発はいつに?」
「明日出発して、2日後に帰ってくる想定でいこうかと」
「わかりました。準備しておきます」
俺は明日に向けて準備を始めた。
翌日。
朝6時に俺達は出発した。
討伐には、カオルも同行した。
「なぜカオルを?」
「預けるところもないので。それに、模倣眼を使っていいなら、実戦以上の学習の場所はありません」
まあ、戦闘時は離れさせるらしいからいいが…
「カオル、危なくなったらすぐ逃げろよ」
「わかった、お兄ちゃん」
「あ、あと注意だ。模倣眼であまり強力な魔術は見るなよ」
「どうして」
「強力な魔術を見た瞬間、激痛が走る」
「それって、どれくらいの痛みなんですか?」
「…ドーラ師匠の打ち込みで受けたダメージが一斉に目にくるイメージですかね」
「え!?」
「それって痛いの」
「痛いってレベルじゃないですよ、あれは」
「ナナ師匠、ビビりすぎです」
そんな話をしながら、俺達は街から東、大陸の中央に向かって進んだ。
夜になり、俺達は野営をして休息した。
2日目。
俺達は目的地に着いた。
標的はすぐ見つかった。
「あれですか」
「えぇ、あれが討伐対象の『番いの黒龍』です」
2匹の龍は空を舞い上がり、じゃれているように見える。
なんだろう、なんか…ゲ◯戦記のオープニングでこんな感じのシーンがあった気がする。
そんな事を考えていたら、番いの片方と目が合った。
どうやら気づいたようだ。
「カオル、離れてろ」
カオルは駆け足で50メートルほど距離を取った。
『黒龍は頭がよく、人の言葉を多少ですが理解できます。ここからは念話で話しましょう』
『わかりました』
そう話していると、2匹の龍がこちらに向かってきた。
『俺は近距離で攻撃します』
『では私は援護を』
(月光斬!)
俺は2匹の間に瞬時に入り込んだ。
斬りかかると、2匹の龍は怯んだ。
『師匠!』
『はい!岩雨』
岩の攻撃が、体勢を崩した龍めがけて飛んでいった。
1匹は避けたが、もう1匹には見事命中した。
(周花)
俺はそのタイミングを見逃さなかった。
岩雨で、動きが鈍くなった龍に攻撃を集中させた。
もう1匹の龍がこちらに突っ込んでくる。
『吹雪の竜巻!』
ナナ師匠はその龍の行く手を魔術で阻む。
まさかここで、ナナ師匠の特級魔術を見れるとは思わなかった。
『…断地』
ナナ師匠が足止めをしている間に、俺は龍の首を切った。
1匹撃破だ。
『気をつけてください!ここからです』
足止めされていた龍は、仲間の死をトリガーにするように暴れ始めた。
『番いの特性です。片方が死ぬと、もう片方が力を増すんです』
そうだったのか。
ただ、1匹ならこの技の出し方を試せる。
『師匠!奴と俺を結界で閉じ込めてください』
『え?』
「カオル!眼帯つけろ!」
「え!?わかった」
『…!?』
ナナ師匠は俺のしたいことに気づいたらしい。
『わかりました。行きます!』
俺は放浪剣を使い、黒龍に近づいた。
『閉鎖結界』
そして、俺と黒龍が結界に閉じ込められた。
距離は20メートルないくらい。
…いけるな。
「さあ、やろうか」
「グルルルル……」
そう怒んなって。
今叩きのめしてやる。
「影の領域」
瞬間、結界内の全てを影が包んだ。
前後左右上下、すべて俺の魔術範囲内だ。
影から4体の分身が出てきて、黒龍に突撃する。
分身は代わり代わりに攻撃を加えていく。
そして本体(俺)は、
「炎戒の龍!」
完成した火の龍を黒龍めがけて発射する。
分身との戦いに精一杯の龍はその魔術に直撃した。
そして、二度と動くことはなかった。
『師匠、終わりました。結界を解いてください』
『はい』
俺の周りにあった結界は崩壊し、消えた。
「任務完了ですね」
「お疲れ様でした」
「2人ともすごかった!僕もああいうのできるようになりたい」
翌日、俺達はファジサイトに帰還した。
「なら、まずは修行だな」
「お兄ちゃんのやってたあの黒い魔術何?」
「あれは…俺のオリジナル魔術だよ」
「え!?オリジナル!?」
「そう、だからまだ教えられないな」
「え〜〜〜」
「カオル、そういうのは、魔術を上級以上までできるようになってからですよ」
「…わかった〜〜」
興味があるのはいいと思うが、多分この魔術をカオルに見せたら、目がぶっ飛んじゃいそうで怖い。
見せるのは、もうちょっとあとにしよう。
俺達は討伐完了をギルドに伝えに行った。
「え!?討伐完了ですか?」
「はい、なんとか」
「無理なことを押し付けってしまったと思っていたので、正直驚きです」
「一応、報酬を交換していただけませんか」
「あ、そうでした。少々お待ちください」
少し待つと、
「おまたせしました。こちらは報酬の金貨20枚です。」
金貨20枚!?
この世界には、金、銀、銅の貨幣があり、金貨2枚もあれば、冒険者の装備一式を買えたり、一週間分くらいの生活ができるような金額だ。
それが20枚。
すげー量だな。
俺達は黒龍の戦利品と報酬を交換して、この場をあとにした。
疲れた。
今日はすぐ家に帰り、休んだ。
こうして、俺は初依頼を終わらせることができた。
そして、『番いの黒龍を討伐した奴ら』ということで、俺とナナ師匠、便利屋の名前は一躍有名となった。




