10話 旅の理由 2
ーバオス視点ー
「襲撃だ!!!」
村守の声が響く。
それは突然だ。
レオがサウンドロスに向かって1ヶ月と少し。
レオのことばかりを気にした俺はバカだった。
「模倣眼のガキを殺せ!」
「村の奴らは根絶やしだ!」
そんなことさせてたまるか。
この村と家を守る。
それが、俺の宿命だ。
「ガァーーーーー!!」
俺は腹の底から叫び、敵に向かった。
「ガハッ…」
あれから数時間が経った。
村は半壊した。
数名の村守も死んだ。
あまりにも数が多すぎる。
「ー…ーー…ーーーー」
なんだ?遠くから何かが聞こえてくる。
これは…詠唱!?
それも1人じゃないな。
数人、いや十数人が同時に詠唱している。
詠唱の長さ的にも、おそらく特級以上、それも、十数人の魔力でどデカいのを撃つつもりだ。
俺にはもう片腕がない。
守りきれない…
「反射結界」
後ろから声がした。
カレラだ。
神級結界の「反射結界」を発動した。
相手の攻撃は、結界に衝突すると、反動で大爆発を起こした。
が、結界が全て跳ね返した。
「あなた、ーー…ー……ーー…ーー」
「ッ!?バカ野郎!そんなことさせるか。お前はあいつらと一緒に…」
「バオス!!!」
カレラは俺に怒号をあげた。
そして、泣いていた。
「お願い…」
俺はただ泣くことしかできなかった。
そして、失意のなか、戦いに戻った。
………。
………。
ーレオリオス視点ー
「ッハ!?」
俺は目を覚ました。
さっき、俺は何かの光に包まれた。
そして衝撃で気絶した。
何があった?
「………ッ。」
周りを見てすぐ気付いた。
一面の草が焦げている。
俺に外傷はほとんどないが、右肩の服は破れ、やけどが見える。
爆発だ。
村から爆発がとんできた。
一体何が…
………。
村の方を見ると、神々しい輝きが見えた。
「ッ!?あぁアアああアああ!?」
突然、俺の右目に激痛が走った。
落ち着け!模倣眼が反応した。
つまりあれは、
「…魔術…か?」
これから想像できるのはただ1つ。
襲撃だ。
村が襲撃され、みんなが戦っている。
それもかなり激しい。
模倣眼が傷みだしたということは、あの技はとてつもない技、神級の可能性が高い。
急がなくては。
俺は足に剣力を込めて、走り出した。
本来、2日で行こうとした道を2時間で駆け抜けた。
村に着いた。
…着いた………。
……!?
「村が…ない」
辺り一帯が焼け野原。
奥では戦っている音が聞こえる。
助けなきゃ。
ピュッ!
俺は周花を使い、その勢いのまま、襲撃者を3人斬った。
「あれは!?」
「模倣眼、発見!!」
辺りにいた奴ら全員がこちらに向かってきた。
俺は放浪剣で全員の攻撃を受け流した。
「炎戒の龍」
俺は70%レベルの「炎戒の龍」を敵に直撃させた。
全員が吹っ飛んだ。
いや、死んだ。
70%とは言え、小さいだけで威力は変わらない。
全員がこの技に直撃したのだ。
俺はバラバラな位置にいた数人の脈を取った。
全員死んでいた。
襲撃者はこれで全員らしい。
「レ…レオ…」
「…!?父さん!?」
村の奥からバオスが歩いてきた。
体はボロボロだ。
そして…左腕がない。
「お前は、なんともないか?大丈…」
「俺は大丈夫です!他のみんなは?みんな大丈夫なんですか?」
「………レオ、落ち着いて…聞け。」
バオスは弱々しく話し始めた。
「みんな、とばした。この村以外の…安全な国々に…。母さんが…とばしてくれた。…魔術で」
「みんな無事なんですね。」
「ああ…少なくとも…生きては…いる。」
なら良かった。
だが何か引っ掛かる。
〜〜母さんが…とばしてくれた〜〜
「父さん…母さんはどこへ?」
「母さんは…転送結界の発動の…人柱になって……死んだ」
………。
…死んだ?
…え?
………。
……。
…。
嘘だ…
だって、あんなすごい人が…
…その時、俺の目にはバオスが映った。
凄腕の剣士が、片腕を失い、傷だらけになり、妻の死に涙を流す姿が。
カレラは、そうするしかなかったんだ。
村を守るために…
家族を守るために…
………。
俺はこのあと、ショックで嘔吐し、静かに涙を流した。
翌日、俺は村で起きたことを村守から説明された。
襲撃にあったこと。
襲撃者は俺を狙っていたということ。
村守十数名が犠牲になったこと。
そして、カレラがみんなを逃がすために「バルトの禁術」を使ったこと。
バルトの禁術。
かつて人族世界を収めていたバルト家が所有していた技の中で、危険性が高く、禁止された魔術の総称。
バルト家はこの術が自身の一族の壊滅とともに、すべてが流出することを危惧し、自身の末裔、分家にこの術を分けて伝えた。
カレラが使用したのはそのうちの一つ、『転送結界』という神級結界魔術。
この術は、発動者の命と魔力を糧として、バルト家が100年以上かけて設置してきた人族世界、魔族世界に存在する魔法陣に転送する術だ。
魔法陣はすべて、首都国家やそこに属する村、バルト家が所有していた、各国の保護下にある土地に存在する。
そのため、危険な場所に飛ばされる心配はないらしい。
俺が見て、模倣眼に激痛を与えたのはこの「転送結界」だと判明した。
消費魔力や構造、技の規模に対応できなかった模倣眼が悲鳴を上げた結果、激痛が走ったらしい。
カレラは自らの命と引き換えにみんなを守ったのだ。
悲しい気持ちは変わらない。
しかし、他のみんなが生きているというのは、せめてもの救いだ。
なら、俺のすることは決まった。
1週間後、事態を知ったドーラ師匠が村に来た。
そこで俺は、
「ドーラ師匠、父さん、お願いがあります。」
………。
ーエイサール現村守騎士団長視点ー
あの大規模襲撃から5年たった。
エイサール村は少しずつ復興している。
かつてよりは小さいが、麦畑も元に戻ってきている。
そんな村の最奥。
海の見える草原からは毎日のように木刀と魔術の音が響いている。
見ると、そこでは3人の男が試合をしている。
年上であろう男2人が若い男1人に容赦ない攻撃を与え、若い男はそれを流剣術と魔術でかわし、魔術と剣術で攻める。
それをひたすら続けている。
年上2人のうちの1人は、元村守騎士団長にして、現村長代理のバオス・パルトだ。
片腕になって入るが、実力は健在だ。
もう1人は竜人、剣術指南者のドーラ・コンドルだ。
年齢は100を超えているが、さすが竜人、実力はバオスさんよりかなり上だ。
対するのは、バオスさんの息子、レオリオス・パルトだ。
模倣眼を持つ少年。
彼はあの事件の後、取り憑かれたように修行を始めた。
その成果は髪を見ればわかる。
魔術師は、研鑽を積み、実力者となったものは稀に、体の一部が自身の魔力の色に変色する。
彼はこの5年間で、髪の一部が白く変色していた。
白は、この世にある魔術ほとんどに、適正と耐性を持つと言われている。
一点に特化しているわけではないため、他の色よりも耐性は脆い方だが、それでも、魔力センスはずば抜けている。
彼が一体何のためにこれほど努力しているのかは、俺にはわからない。
ただ、彼の目には、決意と覚悟がうかがえた。
ーレオリオス視点ー
あれから5年。
俺はひたすら修行した。
昔よりも更に厳しく、そしてたくさん。
この5年間で、俺は「月光斬」を習得し真剣術特級となった。
魔術にはより一層力を入れた。
ドーラ師匠とバオスとの実戦形式で魔術を使い、研究し、オリジナルも作った。
俺はこの技に「影の領域」と名付けた。
この技は簡単に言えば「領◯展開」だ。
一定範囲に影魔術を展開し、範囲内にいる敵に魔術を出すと、その魔術は追尾する。
また、俺の魔力次第だが、範囲内にほぼ無限に影の分身を出せる。
これに関しては、今は4体が限界だが、俺が使う魔術、剣術はだいたい使える。
階級は自作のため不明である。
春になり、俺は13歳になった。
「では、行きます」
俺は旅に出る。
家族を探すために。
そして、仇を討つために。
俺はこの13年間、「エイサールに住んでいる」なんて情報は公開していない。
そう、ピンポイントでこの村だけ襲われるなんてことはありえないのだ。
もし最初に攻められるとしたら、俺が最後に確認された場所である「ウェストン」であるはずだ。
それが意味することは…
情報を流したやつがいる。
それも、この村のやつの可能性が高い。
…絶対に許さない。
俺の手で確実に仕留める。
「レオ…」
バオスが声をかけてきた。
「俺はもう戦える体じゃねえ。戦える立場でもねえ。だから…」
父は深く息を吸った。
「みんなをたのむ。そして、俺の分も、母さんの仇を討ってくれ。」
「はい、父さん」
「レオリオス…」
ドーラ師匠もこちらに来た。
「俺はここで待つ。全員で帰ってこい」
「はい!」
こうして、母のため、家族のため、そして俺自身のための旅が始まった。
少年編ー完ー
〜影纏の術師編〜に続く…




