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8話 兄


「おめでとうございます。女の子です」


外は雪が吹き荒れていた。

ニナが家に来て8ヶ月がたっていた。

この8ヶ月の間に大きな出来事が起きていた。

カレラの妊娠だ。

妊娠に伴って、カレラはボランティア活動を中止し、ずっと家で過ごしていた。


そして今日、出産した。

村からはカレラのボランティア仲間が駆けつけ、出産の手伝いをしていた。

そして夜、出産は何事もなく完了した。

「「はぁ〜〜…」」

カレラとバオスは安堵した。

そりゃそうだ。

2人にとっては念願の3人目だ。

「名前はどうしようかしら?」

「レオの名前は3人で決めたんだっけな」

「じゃあレオに決めてもらえば?」

「え!?」

俺はカーラの突然の言葉に動揺した。

…いや、いきなり言われても浮かぶ訳無いだろ!

と思っていると天からのお告げが…あ、いや、念話がとんできた。

『3人で考えますか?』

俺はその言葉に逃げるように、後ろにいたニナとナナ師匠のもとに行った。

「2人とも、なにか案ありませんか?」

「安直なのはカレラさんとバオスさんの名前から取ることですが…」

「ラーラ…とかは?」

「………。」

「………。」

「………。」

「カオル…はどうかな…」

それは俺の前世、日本人でよくいた名前だ。

男の子にも女の子にもつけられていたような記憶がある。

「いいんじゃないでしょうか」

「い、いいと思う!」


こうして、俺の妹の名前は『カオル・パルト』となった。

そして、俺は兄となった。






カオルが生まれて4ヶ月がたった。

季節は春になり、俺は高難易度の魔術の練習のためにナナ師匠、ニナ、そしてカレラとカオルと一緒に村の外れにある草原に来ている。

「カオルは魔術を見るのが好きみたい」

ということで、最近になって、よくカレラがカオルと一緒に見に来る。

カオルはというと、持参したゆりかごの中で楽しそうにこちらを見ている。

(かわいい…)

(かわいいですね~…)

(かわいいな〜…)

今では、俺達の練習の癒しだ。



そんなある日。

とんでもないことが起きた。

今日は俺とナナ師匠の2人で試合をしていた。

今はニナとカレラ、2人の治癒魔術使いがいるということで、結構全力に近い試合をしている。

水斬アクアスラッシュ!」

「岩石壁!」

光襲の矢(シャインアロー)!」

影の雨(シャドーレイン)!」

俺とナナ師匠は中級、上級魔術を中心に攻撃を続ける。

ナナ師匠の攻撃がほんの少し緩んだ。

(ここだ!)

「炎戒の龍!」

「…っと!ここでですか!」

ナナ師匠も大技の準備を始めた。

が、遅い。

いけ…


ヒュン!


…ん?

なんか飛んできた。

それも横から。

これは…『水球』?

そこでふと、昔ドーラ師匠が言っていたことを思い出した。


「この魔術は、完成したらとてつもない攻撃だが、未完成状態で水に触れると…」


あ…


ボーーーーーーーーン!


『水球』は『炎戒の龍』一直線に飛び、衝突した。

その瞬間、龍は膨張するかのように膨れ上がり、爆発した。

ナナ師匠は50メートルほど飛ばされ、俺は100メートル先の岩までぶっ飛ばされた。

「「レオーーーーーーー!!!」」

カレラとニナは急いで俺に駆け寄り、治癒魔術をかけてくれた。

ナナ師匠は無事のようだ。

俺も無事回復した。

「…今、誰が『水球』を?」

「わ、私じゃないよ」

「私でもないわよ」

ニナとカレラは違うらしい。

ナナ師匠はできるはずないし…

一体誰が…


ペシャン!


俺の顔にまた『水球』が飛んできた。

え?

この場にいた全員が飛んできた方向を見た。

そこには特に何もいない。

一本の木があり、その下には小さなゆりかごだけ。

………。

まさか…

俺はゆりかごに近づき中を覗いた。

中にはずぶ濡れになりながら満面の笑みを浮かべるカオルがそこにいた。

そして気付いた。

カオルの左目が光っていることに。

俺の右目と…おそろいだ。

あぁ…マジか…

カオルは生後4ヶ月で『模倣眼』を手に入れた。






さあ始まりました、パルト家緊急家族会議。

本日の議題はズバリ『カオルについて』です。

出席者は俺、バオス、カレラ、ニナ、ナナ師匠で、ゲストはカオルです。

まず初めに話し始めたのはバオスだった。

「まさか、カオルまで模倣眼を持っているとは…」

「大丈夫でしょあなた。レオだって模倣眼を持っているんだから。」

「いやカレラさん、これはまずいです。」

「何がまずいの?」

「1人ならまだしも、2人もいるとなると、事情を知らず、模倣眼をよく思わない連中が襲撃してくるかもしれませんよ」

「そんな大袈裟な…」

「いや、可能性は十分にある。」

「なら…」

そうだな…

「「「「隠すしかない」」」」

「な」

「わね」

「ですね」

「のでは?」

ただ、カオルはまだ魔力制御すらできない。

模倣眼を隠せないとなると…

「眼帯か…」

「「「「ガンタイ?」」」」

え!?嘘!?

この世界、眼帯ないの!?

「いや!?何でもないです!目を物理的に隠すしかないですねってことです!」

俺は手芸道具を借りて、簡易的な眼帯を作った。

形は歪だが、許してくれ。

というわけで、カオルの模倣眼については隠すことになった。






一悶着あったが、その後は何事もなくすんだ。

季節は移り、再び冬を迎えた。

カオルはあっという間に1歳になった。

そんな中、家に一通の手紙が届いた。

「レオー、お前あてだ。」

俺に手紙?

誰だ?

差出人には龍神語で『ドーラ・コンドル』と書いてあった。

「ドーラ師匠!?」

「え!?ドーラから!?」

ナナ師匠がとんできた。

そりゃ、元パーティーメンバー。

気にならないはずがない。

俺はすぐ、手紙を開いた。

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